飼い主から捨てられる犬の数は年間約3,000頭
令和3年度、保健所が飼い主から引き取った犬の頭数は、約3,000頭にも上ることが判明しました。また、野良犬として保護された頭数は20,000頭を超えるため、保健所に収容された犬は1年間で23,000頭を超えることがわかります。
野良犬の中には、非常な飼い主が保健所にすら連れて行かず、道端に置き去りにしたなどの事例もあると考えられるため、実際には未だに多くの犬が捨てられている悲しい現状が浮き彫りになりました。
犬を捨てる飼い主に多い理由は?
では、保健所やボランティア団体に犬を持ち込む飼い主は、どのような理由で愛犬を捨てる決断を下しているのでしょうか。
- しつけができず手に負えなくなった
- ペット不可の物件で飼えなくなった
- 想定以上に大きくなり飼育環境が用意できない
- 繁殖してしまいお世話ができない
- 経済的にお世話する余裕がなくなった
- 医療費が想像以上にかかる
- 十分な介護ができない
どの理由も犬を飼うことがどれほど大変か、迎え入れる際にしっかり理解していなかったことが原因だと考えられます。
また、犬を家族としての枠組みで捉えておらず、「所有物を不要になったから手放す」くらいの感覚で認識している人が、安易に犬を手放しているように感じられます。
「捨てられた犬」が辿る3つの運命
飼い主に捨てられてしまった犬は、どのような運命を辿るのでしょうか。日本国内で主に考えられる3つの未来を紹介します。
1.新しい飼い主と出会い引き取られる
保健所やボランティア団体によって保護された場合、まずは里親募集にかけられます。インターネットやSNS上などでその犬の写真や情報が掲載され、新たに犬を迎え入れたいと考えている人と条件や相性が合えば、新しい飼い主に引き取ってもらうことができるのです。
ただし、新たに里親となるには条件が厳しく設けられているところが多く、実際に里親さんと巡り会える犬はそう多くありません。
最近では、保護された犬がペットショップのショーケースで新たな里親さんと出会う機会を増やしたり、譲渡イベントなどが開催されたりと、さまざまな方法で犬たちを救う活動が増えています。
2.野良犬と化してしまう
保健所やボランティア団体に預けず路上に置き去りにしたり、繁殖してしまった子犬を段ボールに入れて捨てたりした場合、野良犬と化してしまうケースもあります。
野良犬となってしまった犬は、自力で生き延びることができなかったり、凶暴化して人や他の犬を襲うようになってしまったりと最悪の事態に陥ることもあります。
最近では、野良犬を見かけることが国内では少ないため、置き去りにする飼い主は以前より減ったと考えられます。しかし、未だに通報を受けて職員やスタッフが保護するという活動がなくなっていないので、屋外に捨てるという選択をする飼い主が存在しているのです。
3.保健所で収容期限が過ぎて殺処分対象に
飼い主に手放されてしまった多くの犬は、保健所に収容されます。保健所の収容数は決まっているため、収容数を超えてしまうと収容されている犬には期限が設けられます。これは殺処分までの「命の期限」です。
この収容期限が過ぎてしまうと殺処分対象となってしまい、悪いことをしていないにも関わらず、人間の都合で殺されてしまうのです。
一度迎えて家族となった愛犬が、寂しく苦しみながら殺処分されていくことを想像すれば、普通は捨てるという選択をしないはずなのですが…。実際、令和3年度は約2,700頭もの犬が保健所で殺処分されています。
犬を迎える前に犬を飼うことの大変さを正しく理解して
このように捨てられた犬の多くは、悲しい運命を辿ってしまいます。最近では、犬たちを救うために多くの人々が立ち上がっており、以前よりは救われている犬が増えています。しかし、それでも年間2,000頭を超える犬たちが殺処分されているのです。
一度迎え入れた犬を捨てるという選択をしないためには、犬を迎える前に犬を飼うことの大変さや現実を正しく理解することが大切です。
想像以上にかかる費用や突然かかる膨大な治療費、さらに犬のお世話をするために自分の自由な時間が大幅に削られる現実や、気軽に旅行や出張することができなくなるなど、犬を飼うことで起こり得る悪い面とも向き合う必要があります。
犬を飼うことで生まれる新たな幸せは多いでしょう。しかしそれと同じくらい、あるいはそれ以上に大変なこともたくさんあるということを理解しなければいけません。
まとめ
いかがでしたか。犬を飼うということは「可愛い」だけでは済まされません。尊い重すぎる命を生涯預かることを意味しているのです。
「お世話が大変だから」「お金がかかるから」「思っていたのと違う」という理由は、飼い主側の認識不足が原因です。迎え入れる前に改めてどれほど大変なのか、犬を飼うことのデメリットともしっかり向き合うようにしましょう。