1.糖尿病
血糖値が上昇することで様々な症状があらわれる糖尿病は、人間だけでなく犬にも起こることがあります。本来は膵臓で分泌されるインスリンというホルモンが正常に機能せず、血糖値をコントロールすることができなくなってしまっている状態だと考えられています。
犬の糖尿病は中高齢になると発症しやすく、7歳を過ぎたシニア犬に多く見られます。様々な犬種で見られる病気ですが、メスの方がオスに比べて発症率が高いということがわかっており、特に未避妊のメス犬はリスクが高いとされています。
糖尿病の症状として多飲多尿がありますが、それと同様に食欲の増加も見られるようになります。しかし、水を飲む量やご飯の量は減っていない、または増えているにもかかわらずどんどん痩せていってしまう場合は糖尿病の恐れがあるので、おかしいと思ったらすぐに動物病院を受診してください。
2.クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
クッシング症候群とは、腎臓の近くにある副腎と呼ばれる臓器から分泌される、コルチゾールというホルモンが過剰に分泌されることで起こる病気です。
原因は脳下垂体または、副腎そのものの腫瘍だとされています。かかりやすい犬種というものはありませんが、7歳以上のシニア犬が発症しやすいということがわかっています。
クッシング症候群の症状には、糖尿病と同様に水をよく飲んで尿量も増えるというものがあります。ホルモン異常の影響で食欲も増進されたり、腹部が膨れてきたりする様子も見られます。
また、クッシング症候群は抜け毛や皮膚の黒ずみといった見た目の変化も起こることが多いため、その段階で気がつく飼い主さんもいるでしょう。さらに症状が進むと体がふらつくようになったり、動きたがらなくなったりすることもあります。
3.口腔内疾患
シニア犬があまりご飯を食べたがらなくなったり、食べるのに時間がかかるようになったりした場合、口腔内にトラブルが起きている可能性があります。
犬は虫歯になることは少ないものの歯周病にかかることが多く、3歳以上の約8割が罹患していると言われています。
歯周病になると歯肉が炎症を起こしたり、口臭がするようになったりといった症状が見られますが、悪化すると歯肉が減って歯が抜けてしまったり、歯肉内に膿がたまったりすることもあります。そうなってしまうと、食べ物を噛むときに違和感や痛みを感じるようになってしまうでしょう。
そのため、健康状態に異常がないように見られる犬が、食事を嫌がるようになったときは、口腔内にトラブルが起きていないか確認してみてください。
4.慢性腎不全
慢性腎不全もシニア犬に起こりやすい病気のひとつで、食欲の低下や嘔吐などの症状が見られることがあります。
時間をかけて少しずつ腎臓の機能が低下していって腎不全に陥りますが、初期の段階では無症状のため、なかなか気がつくことができない場合が多いようです。ある程度進行すると、飲み水の量や尿量が増えるといった症状が見られるようになり、その後食欲不振や元気の消失、体重の減少などが起こります。
一度悪くなった腎機能を回復させることはできないため、腎不全に陥っていることがわかったら症状を遅らせるための治療を行います。腎臓の機能を少しでも守るために、定期的に血液検査を受けるようにしたり、おかしいと感じることがあればすぐに病院で相談したりすることをおすすめします。
5.認知症
シニア犬に異常な食欲が見られるようになった場合、認知症を発症している可能性も考えられます。
近年では犬の寿命が伸びてきていて、15歳を超える犬もめずらしくはありません。高齢になると人間と同様に認知機能が低下してしまい、記憶障害や徘徊行動を起こすようになってしまうこともあります。
その影響でご飯を食べたこと自体を忘れてしまって、何度もご飯をせがんだり食べ物をもらおうとしたりといった行動を見せるようになることがあるのです。このような行動があまりにも増えるようなら、食事の量を小分けにして回数を増やすなどの対応を取るといいでしょう。
まとめ
動物の健康状態を知るために、食欲は大切なバロメーターとなります。
今回はシニア犬の食欲の変化に影響を与える病気をピックアップしましたが、このほかにも腫瘍や心疾患、消化器系疾患など様々な病気の症状として「食欲不振」が見られることもあります。
シニア犬の健康を守るために、定期的に健康診断を受け、食事の量や食べ方などに変化を感じたらすぐに動物病院を受診することをおすすめします。