ソーシャルメディアに投稿された２つの画像
短頭種の犬の健康問題はヨーロッパの獣医師会などを始め、多くの団体や自治体が改善と啓蒙に取り組んでいます。
フレンチブルドッグやパグに代表されるこれらの犬種は、可愛らしさのみを追求した繁殖の末に、極端に短いマズルや平らな顔のせいで正常な呼吸が妨げられたり運動能力が著しく低下したりしています。
中でもフレンチブルドッグは世界的に人気が高い分、影響を受ける犬の数も多くなっています。そのような状況に心を痛め、フレンチブルドッグの再構築に挑戦したオランダのブリーダーが話題になっています。
話題の発端は、掲示板型ソーシャルメディアのRedditに2頭のフレンチブルドッグの横顔の画像が投稿されたことでした。1枚はマズルがほとんど無くてほぼ平らな横顔、もう1枚は短めだけれどはっきりとマズルのある横顔でした。
平らな顔のフレンチブルの名はアーニー。アメリカンケネルクラブのドッグショーで賞を獲ったこともある犬です。マズルの長い犬はフリント、オランダのブリーダーの犬舎出身の犬です。
Redditのスレッドには、マズルがほとんど無いアーニーがドッグショーのスタンダードになっていることに対する憤りや悲しみ、大半の人がマズルの長いフリントの方が健康的に見えるというコメントを書き込んでいました。
フレンチブルの再構築に挑戦したブリーダー
このマズルの長いフレンチブルドッグのブリーダーは、オランダでHawbucks French Bulldogsという犬舎を運営しているシャンタル・ヴァン・クルイニングさんという女性です。
シャンタルさんは獣医師助手として働くかたわら、フレンチブルドッグのブリーディングに興味を持ち調べてみたところ、見た目の可愛らしさの追求のために犬たちの健康が顧みられていないことにショックを受けたそうです。
シャンタルさんはまず遺伝学を勉強し、この犬種に発生する障害を研究しました。
「ドッグショーではなく、犬の健康のためのブリーディング」という理念のもと、人々が犬の見た目よりも健康に気を配るよう意識を変えていくことを目指しています。
シャンタルさん自身、ブリーディングを始める前からフレンチブルドッグと暮らしており、この犬種の情熱と愛情を持っています。それだけに、フレンチブルたちがすぐにゼーゼーと息切れすることなく走ったり遊んだりできるようになって欲しいと望んでいます。
健康的なフレンチブルドッグの特徴
呼吸をする時にフガフガと音がする、眠っている時にはイビキをかく、これらを「フレンチブルドッグでは普通」と考えている飼い主が多いことは、ブリーダーたちが犬種の健康に関する情報をきちんと伝えていないせいだと、シャンタルさんは不満を感じていました。
そのため、彼女の犬舎の犬たちの身体検査の結果は遺伝子検査も含めてすべてウェブサイトに公開されています。またそれぞれの検査や病気についての説明にもスペースが割かれています。
このような特徴を持つ犬を繁殖させることで、シャンタルさんは健康的なマズルを持つフレンチブルのブリーディングに成功しました。
オランダには政府が定めた「マズルの長さが頭蓋骨の奥行きの3分の1に満たない犬は繁殖に使ってはならない」という規制があります。
「オランダ政府が定めたマズルの短すぎる犬の繁殖の規制」
https://wanchan.jp/column/detail/22796
シャンタルさんの犬舎の成功のベースには、このような規制があったことも大きいと思われます。犬種の健康を守るためには、法的な規制とブリーダーの努力の両方が必要である好例と言えるでしょう。
まとめ
適度な長さのマズルを持つ健康的なフレンチブルドッグを生み出しているオランダのブリーダーの話題をご紹介しました。
シャンタルさんの犬舎のウェブサイトや、Redditに投稿された画像などは下にリンクを貼ったURLから見ていただけます。犬として自然で健康的なフレンチブルドッグがどのような姿形なのかをご覧になってみてください。
フレンチブルドッグだけでなく、人間が喜ぶ見た目のために動物の健康を犠牲にした繁殖がなくなるためには一般の人々の意識も大切です。
《参考URL》
http://www.hawbucks.nl/franse-bulldog/en/
https://defused.com/breeder-reengineering-french-bulldogs/
