マズルの短い犬の健康問題
パグ、イングリッシュブルドッグ、フレンチブルドッグは多くの国で人気の高い犬種です。その独特の鼻ペチャ顔の愛嬌が「可愛い」と呼ばれています。
しかし、他の犬種に比べて極端に短いマズルは呼吸障害など健康上の問題を多く引き起こしています。これらの犬種は、呼吸が苦しい、体温調節ができないなどの慢性的な症状に苦しんでおり、高い割合で自然な分娩ができません。
ヨーロッパのいくつかの国では、このような状態を改善するための対策に着手していますが、中でも最も進んでいると思われるのがオランダです。マズルの短い犬の繁殖は2014年以来禁止されています。しかし法律に「禁止する」と書かれていても実際の取り締まりは行われていませんでした。それが2019年に法律の内容は同じながら、具体的な取り締まり基準が加わりました。
マズルの長さで繁殖の可否を規制
新しく加わった取り締まり基準は、犬のマズルの長さによって繁殖に使っても良いかどうかが決められるというものです。具体的には、犬の頭を横から見た時に頭蓋骨の奥行きの長さと比べてマズルの長さがどのくらいの割合かによって次の3つに分類されます。
- 頭蓋骨の奥行きの3分の1に満たない
- 頭蓋骨の奥行きの3分の1〜2分の1未満
- 頭蓋骨の奥行きの2分の1以上
3分の1未満の犬の繁殖は直ちに禁止されます。
3分の1〜2分の1未満の犬の繁殖は他の基準も満たしていれば可能です。
2分の1以上の犬は繁殖に使うことができます。
マズルの長さが頭部の3分の1未満の犬種はパグ、ブルドッグ、ボストンテリア、チン、シーズーなど全20犬種が該当します。短頭種だけでなく、可愛らしく見えるためにマズルを短くしたチワワやポメラニアンも含まれています。
規制と改善に対する取り組み
このような繁殖の規制に対して、オランダのパグの犬種クラブは直ちに現行のパグの繁殖を停止すると発表しています。クラブに所属しているブリーダーの中には怒ったり失望したりする人もいるそうですが、それでも人間が可愛いと感じる見た目のために健康を害され苦しんでいる犬がいるという状態は改善されなくてはいけないことは理解を得ています。
繁殖が禁止された犬種クラブは遺伝子学の専門家と協力し合って、政府が設定した要件を満たすことができる繁殖プログラムを作っているそうです。
まとめ
オランダではマズルの短すぎる犬の繁殖を規制する法律があり、より健康な犬を産み出すための新しい繁殖プログラムにも着手しているという話題をご紹介しました。
この繁殖プログラムが完成して、本来のようなマズルの長いパグやブルドッグが誕生して行けばオランダ以外の国にも影響が及んで行く可能性があります。
また、日本でも動物愛護法の数値規制が注目されていますが、このオランダの例は具体的な数値を定めることの大切さをよく示しています。
呼吸障害や熱中症の高リスクに苦しむ犬が1匹でも少なくなるよう願ってやみません。
《参考URL》
https://www.rtlnieuws.nl/editienl/artikel/4725996/nieuw-beleid-rasvereniging-stopt-met-fokken-mopshond?
https://www.fecava.org/news-and-events/news/dutch-prohibition-of-the-breeding-of-dogs-with-too-short-muzzles/