ヒトと動物のつながりを研究する機関の新しいプロジェクト
盲導犬や聴導犬をはじめとして、車椅子の方を助ける介助犬、低血糖やてんかんの発作を予知して知らせる犬など、犬はさまざまな形で人間の生活を助けてくれています。
介助が必要ではない場合にも、犬と暮らして運動や社交の機会が増えることで心身の健康をサポートしてくれるといった調査結果も多く発表されています。
そのような犬と人間のつながりを科学的に研究しているHuman Animal Bond Research Institute(略称HABRI、ヒューマン・アニマル・ボンド研究所)というアメリカの非営利団体があります。
このHABRIが自閉症スペクトラム症(ASD)と診断された児童とその家族のための介助犬訓練プログラムと、ASD介助犬の影響を評価する研究プロジェクトへの資金提供を発表しました。
自閉症スペクトラム症の児童を助ける介助犬研究
自閉症スペクトラム症と介助犬の研究を行うのはミズーリ大学獣医学部のヒト動物相互作用研究センターの研究チームです。
ASDと診断された子どもが犬と暮らすことで社会的スキルが向上したりストレスが軽減したという報告は数多く聞かれます。しかし、訓練を受けた介助犬がどのくらいのメリットをもたらすかという研究はまだ十分とは言えない状況です。
介助犬が実際にもたらすメリットをデータ化することで、ASDの児童や家族が決断をくだすために役立ったり、システムの運営上必要な細部が明らかになることが期待されます。
介助犬の導入によって期待されること
同研究チームはすでに予備研究を行っており、家庭でペットして飼われている犬とASD児童の相性が良いと家族が感じていることの重要性が明らかになっています。
介助犬としての訓練を受けた犬は、気質の穏やかさも適性に織り込まれており児童のサポーターとして受け入れられやすいと考えられます。
介助犬とのマッチングに際しては児童本人とその家族がトレーニングプログラムに参加するため、ペットの犬よりも高い効果が期待されます。
HABRIからの資金提供を受けて始まる本研究では、ASD児童の親を対象に横断調査(ある一時点での調査)を行いデータを収集する予定とのことです。
これらのデータを使って、介助犬が来るのを待機中の人、介助犬とのマッチングに向けてトレーニング中の人、すでに介助犬と暮らしている人の比較を行い効果を測定します。
また、各児童について待機中〜トレーニング中〜介助犬マッチング後1年の追跡調査を行う縦断研究も実施するとのことです。
まとめ
アメリカで自閉症スペクトラム症の児童のための介助犬研究がスタートするという話題をご紹介しました。
介助犬のマッチングが効果的に行われることで、症状の軽減、不安の軽減、家族の負担の軽減が期待できると考えられます。
また収集されたデータは、介助犬を検討している家族の意思決定のためにも、介助犬育成団体などのプログラムなどにも恩恵をもたらすものとなります。
《参考URL》
https://www.veterinarypracticenews.com/service-dogs-impact-on-children-with-asd-to-be-explored-2/
https://habri.org