「こにゃん市」で第六回市長選挙が行われる
候補ワン・ニャン達のマニフェスト
2016年3月1日、こにゃん市において第6回市長選挙の立候補受付が始まり、犬6匹、猫9匹の候補ワン・ニャンがマニフェストを競い合っています。
1才の若き新鋭にゃんこ、ジュリアーノさんは、
「ボクは捨てられて道端で死にかかっていた時、今のお父さんが連れて帰ってくれて幸せになったんだ。ボクの手で幸せを一杯招き、幸せを招くこにゃん市をあぴーるしたいな!!」
と明るい未来への希望を語ります。
これに対し、働き盛りの5才である犬のレンさんは、
「ニャンコからワンコへ。こにゃん市をチェンジ!」
と、猫党に野心満々の挑戦状をたたきつけました。
さらに男衆に負けじと出馬した4才の美人ワンコMocaさんは、
「顔色伺うの苦手なの。少しの流血はしょうがないと思うわ。TH GOING MY WAY 時には独裁も必要ってことね♪」
と、あまりにあっけらかんと当選したあかつきの独裁政権樹立を宣言。
当選発表は4月26日! この記事が掲載される頃には、全国の愛犬・愛猫家の厳正なる判断によって、第6代こにゃん市長が決まっているはず!
結果はいかに!
▼詳しい投票の内容はこちらから
https://www.burari-konan.jp/konyan/shicho-senkyo/
第5代市長あんずの業績
このたび任期を終える第5代市長は2才の美猫あんずさん。
「こにゃん市の全ての住人が幸せに暮らせるように頑張りますニャ♪」
とのニャニフェスト(マニフェスト)で1109票を獲得しました。
今でこそ有名ニャンとなったあんずさんですが、実は若い頃は苦労多きニャン生でした。
音楽講師である平林さん宅の庭先にいたところを保護されたものの、悪性リンパ腫に罹っていたため、「生きた証を残したい」との平林さんの思いから立候補。
こにゃん市長の仕事は「こにゃん市=滋賀県湖南市をPRし盛り上げるため、市内のいろんなイベントに出席をする」こと。
飼い主の平林さんは「秘書」としてあんず市長の通訳をしたり、市のイベント出席やブログ更新などの公務を努めてこられました。
しかし、多くの猫は初めての環境や人々に取り巻かれることを好みません。
あんず市長も例にもれず、当選証書授与式では平林さんの顔にかみつき逃走、夏祭りでは暑さで体調をくずすなど、市長にとっても秘書にとっても、そうそうラクな仕事ではありませんでした。
ようやく1年の任期を終え、市長も秘書もホッと胸を撫で下ろしているのではないでしょうか?
(次のページではこにゃん市の試みと課題について解説します)
『幸せを招くこにゃん市』の試みと今後の課題
こにゃん市はどこにある?
滋賀県湖南市観光協会が作った犬と猫の架空都市である「こにゃん市」。
市内に捨て猫や野良犬を収容する県動物保護管理センターがあり、動物愛護と市の魅力を伝える観光PRを目的として2011年に発足しました。
掲げられた市民憲章(http://www.burari-konan.jp/konyan/)は、
「私たちこにゃん市民は~中略~先人が築いてきた文化や歴史に感謝して人と動物が幸せに暮らせ、豊かで創造的なまちを創るために“動物との暮らし三方よし”の社会を実現するニャ!」
毎年、市内で飼われている犬や猫が立候補し、全国から投票を受け付ける“こにゃん市長選挙”が行われてきました。
第1回は2038票が集まり、県動物保護センター出身の雄猫ぎんが456票で当選。
その後も同じくセンターから譲渡された猫や保護犬が市長に選ばれてきました。
また、センターに保護された猫の里親探しを「市議会議員選挙」としてホームページにプロフィールを公開し、当選=譲渡された“議員”たちのその後を伝えるなど、人と動物をつなげる試みを行ってきました。
ホームページ上で“市民登録”をすれば、県外在住でも市長選挙に参加するなどして応援できます。
真の「三方よし」とするためには
広告塔となる動物のストレス
さて、第6代の市長まで続いてきた「こにゃん市」ですが、これまでの実績をもとに改革の課題が浮き彫りになりつつあります。
一つは、動物目線での配慮をしながら、どう活動をアピールしていくか。人が集まる場所でパニックになったり体調不良を起すことは、あんず市長に限りません。犬も猫も慣れない環境で多くの人に注目されたり、大きな音やカメラのフラッシュなどは相当なストレスになります。
動物愛護のイベントでパニックを起こして市長が逸走、行方不明なんてシャレにもなりません。
イベントの場に無理に連れ出すことはせず、HPやポスターやパンフでの写真利用、イベントは市長の着ぐるみキャラが盛り上げるなどでもアピールは充分可能です。「動物の福祉」に基づいて、効果的な活動方法を探る必要があるでしょう。
動物愛護の教育普及に積極的活用を期待
もう一つは市民への動物愛護の啓蒙に、どう「こにゃん市」を活用するか。
2011年、12年にはセンターで保護された17匹の猫たちが「こにゃん市」の“市議会議員選挙”に出馬し、全て当選=譲渡されました。しかし2013年以降は選挙は行われていません。
その理由は譲渡できる状態の猫が減っていること。
喜ばしいことに聞こえるかもしれませんが、実は深刻な問題を抱えています。
たとえば2015年にセンター収容された猫は1200匹ほど、うち1000匹が殺処分されており、その殆どが野良猫の生んだ乳飲子です。
乳飲児は数時間おきの授乳と温度管理が必須。人手も手間もかかるためセンターでの対応は難しく、殺処分せざるを得ないとのこと。
「こにゃん市」は、まだまだ知名度が低いとはいえ、市長選では千を越える票を集めた実績もあり、フェイスブックやツイッターの力を駆使して、市内の保護団体や個人活動者とつながるなど、より多くの人に協力を呼びかけることはできるはず。
たとえば乳飲児の受け入れ体勢を準備するため、離乳まで子猫に授乳するミルクボランティアとして「乳母」の募集・登録を行うなど、より積極的に「生かす」ための方策を取り入れてもらいたい。
もちろん、乳飲児の親となる野良猫を増やさない地域猫活動や捨て犬・猫を生み出さないための教育普及は必須です。
残念ながら、これまで「こにゃん市長」が動物愛護センターを訪れたり、啓発活動を行うことはなかったとのこと。
しかし、市観光協会の奥村事務局長が「今後はセンターと連携を深め、動物愛護のイベントにも取り組みたい」と話すように、「こにゃん市長」のマスコットが小中学校を訪問して愛護教育を行ったり、センターの譲渡会をアピールするなど、アイデアしだいで“市長”の存在意義はもっともっと高まるはず。
「今後は・・・」と言う間にも、多くの命は殺処分に向かいます。「こにゃん市」の努力に期待したいところです。
まとめ
滋賀県湖南市が始めた人と犬・猫がつながる架空都市「こにゃん市」は、動物愛護と湖南市PRを目的として生まれました。
市内で暮らすペット「市長」に、愛護センターで里親を待つ「市議会議員候補」たち、そして彼らを応援する全国の人々から「こにゃん市」は成り立っています。
「たま駅長」のように、これまでも看板動物が全国の注目を浴びて知名度アップに貢献してきたことは珍しくありません。
けれど、仮想都市とはいえ市が動物愛護を看板に掲げるのなら、「殺処分は恥ずべきこと」くらいの気持ちで、本気で「こにゃん市」PRに臨んでもらわなくては!
今のところHPは市長選の案件が中心。
ペットの癒しパワーに頼って話題性を狙うだけでは、ちょっと情けない。
「こにゃん市」の発足自体がユニークな発想。
さらにさらに突き抜けた独自のアイデアで、「殺処分0のこにゃん市」として全国に名を馳せてもらいたいものです。
開設からすでに6年目。そろそろ本腰入れてはどうでしょう?