ジェネレーション・パップから新しい調査報告
イギリス最大の犬保護団体ドッグズトラストとブリストル大学が、共同で運営している「ジェネレーション・パップ」というプロジェクトがあります。
これはイギリスまたはアイルランド在住の生後16週齢以下の子犬の飼い主を募集し、定期的なアンケート調査で犬の行動や健康について生涯にわたるリサーチを行い、犬を総合的に研究するというものです。
英国発、犬の一生分のデータベースを作る『ジェネレーション・パップ』
https://wanchan.jp/column/detail/11785
このプロジェクトから「先住猫に子犬を紹介した時の方法や行動」について新しい調査報告が届けられました。
調査の目的は、子犬が猫に対して「望ましい行動」を見せるための因子は何であるかを知ることでした。先住猫への望ましい行動は猫と犬両方の福祉にとって重要だからです。
先住猫と子犬の行動、飼い主の対応をアンケート調査
アンケート調査はジェネレーション・パップに登録している飼い主を対象にして実施されました。登録されている子犬は5,742頭で、そのうち猫と同居している1,248頭の子犬の飼い主の回答が分析されました。
飼い主への質問は、子犬が猫に対して見せた望ましい行動、望ましくない行動、先住猫に対して子犬をどのように紹介したか、猫が子犬に対して見せた行動、飼い主の対応などが含まれました。
子犬から猫への望ましい行動とは「猫に興味を示さない」「穏やかな方法で交流する」と定義されました。望ましくない行動とは上記の望ましい行動以外の行動です。
先住猫への紹介の方法は、飼い主主導で行ったのか、猫主導で行ったのかについて複数の質問が設定されていました。
猫も子犬も快適に暮らすために
子犬が先住猫に紹介された時に見せた行動で最も一般的だったのは「遊ぶ 58.9%」「過剰に興奮する 56.6%」「追いかける 48.6%」でした。しかしこれらの行動に対して、多くの猫はストレス行動を示していました。
「望ましい行動」のみを示した子犬はわずか7.3%でした。1つ以上の「望ましくない行動」を示した子犬は92.7%でした。(望ましい行動と望ましくない行動の両方を示した犬も含まれる)
約3分の1の子犬は、何度かは猫と穏やかな態度で交流していました。猫に対して攻撃的な行動を見せた子犬は1.7%、猫を怖がった子犬は3.1%でした。
猫に対して子犬を紹介する方法は「時期、場所、時間などを飼い主が決め必要に応じて介入する」ものと、「飼い主と子犬の関係に猫が介入する、飼い主が猫に子犬といつどのように接するかを選択させる」ものに分けられました。
前者の飼い主主導の紹介方法を取った人は、犬と猫の友好的な関係を目的とする人が多く、後者の猫主導の方法を取った人は、犬と猫は仲良くなれないものと考えている人が多いこともわかりました。
子犬が望ましい行動を多く見せた家庭の他のファクターは以下のようなものでした。
- 先住猫への紹介は飼い主主導で行なった
- 子犬が12週齢以前に猫に紹介した
- 猫への紹介は段階的に少しずつ行なった
- 先住犬がいる
12週齢以前や先住犬については条件的に不可能な場合が多いですが、先住猫に子犬を紹介する場合は、飼い主主導で段階的に行なった場合に犬が望ましい行動を見せることが多いという結果でした。
飼い主が適切に介入するためには猫のボディランゲージの理解が必要で、この点についての教育の必要性も指摘されました。
まとめ
イギリスの動物保護団体と大学が運営するプロジェクト『ジェネレーション・パップ』が行なった「先住猫への子犬の紹介」についてのアンケート調査の結果をご紹介しました。
同居動物同士の対立は動物はもちろん人間の福祉も低下し、飼育放棄につながることもあります。このような調査を行うことで、一般の飼い主が何を理解していて、何に対する理解が不足しているかを把握することは動物福祉の向上に非常に重要です。
《参考URL》
https://doi.org/10.3390/ani12182389