犬の老化のサインは?
飼い主さんにとって愛犬は、いつまでも幼い子どものように可愛い存在でしょう。しかし犬は人間よりも早いスピードで年を重ねていくため、愛犬の年齢を人間に換算すると、実は飼い主さんよりも年上だったりします。
一般的に小型犬と中型犬は7歳頃から、大型犬は5歳頃からシニア期に入り、このあたりから少しずつ老化現象が見られるようになります。
飼い主さんは愛犬の老化現象、すなわち老化のサインに早く気づき、シニア犬になった愛犬との生活の準備をしていくことが大切です。犬の老化のサインとしてどのような現象が見られるのか、ご紹介していきます。
1.被毛や鼻の色素が薄くなる
被毛の変化は、分かりやすい老化のサインです。犬も年齢を重ねることで、人と同様に白髪が増えてきます。
また、全体的に被毛の色が薄くなってきます。こうした変化が起こるのは、被毛の色を構成しているメラニン色素が加齢によって減少したり、作られなくなったりするからです。
被毛だけでなく鼻も年齢を重ねると色素が薄くなってきて、黒かった鼻がピンク色や茶色に変化することがあります。
2.鼻がカサカサになる
濡れてツヤツヤだった鼻がカサカサしてくるのも犬の老化現象のひとつです。高齢になってくると外側鼻腺からの分泌物が減少するために、鼻が乾燥してしまうのです。
カサカサの状態が長く続くと、鼻にひび割れが起こることがありますが、そのような場合はワセリンや犬の鼻用の保湿クリームを塗って対処をします。
ただ老化ではなく、皮膚疾患などが原因で鼻が乾燥することもあるため、飼い主さんの判断でケアをするのはおすすめできません。愛犬の鼻のカサカサが気になったら、まずは獣医師に相談しましょう。
3.音への反応が鈍くなる
犬は優れた聴力を持っているため、飼い主さんが帰ってきたときの車の音や足音にいち早く反応します。飼い主さんの帰宅を察知した愛犬が先回りをして、玄関で待ち構えているという話を聞くことがあります。
しかし、耳のいい犬も加齢によって徐々に耳が遠くなり、飼い主さんが帰ってきても家に入ってくるまで気づかないということが増えてきます。そのほか飼い主さんが名前を呼んだり、足音を立てて近づいたりしてもなかなか気がつかないなど、音への反応が鈍くなります。
4.動作がゆっくりになる、よくつまずく
年齢とともに足腰の筋肉が弱くなってくるため、おすわりの姿勢から立ち上がるのに時間がかかったり歩くのがゆっくりになったり、ちょっとした段差にもつまずきやすくなります。
愛犬の動作がゆっくりになったり、よくつまずいたりするようになってきたら、老化のサインと考えましょう。
5.睡眠時間が長くなる
犬が年を取ってくると疲れやすくなったり、体力の回復に時間がかかるようになったりするため、睡眠時間が長くなってきます。
日中も寝ていることが多くなりますが、お昼寝が長いと運動不足や食欲減退につながってしまったり、昼夜が逆転した生活になってしまったりすることがあります。
シニア犬の心身の健康のためには、日中は無理のない範囲でなるべく体を動かし、夜はぐっすりたっぷり眠るという生活が理想的です。
6.粗相が増える
粗相が増えるのも老化のサインと言えます。足腰の衰えのせいでキビキビ歩けず、トイレまで間に合わなくなってしまうのです。
また加齢によって頻尿になることも粗相が増える一因となりますが、頻尿は病気の症状である場合もあります。「歳のせい」と決めつけずに、動物病院を受診して原因を究明しましょう。
7.目が白くなる
年齢を重ねた犬は、白内障で目が白く濁ったり、核硬化症で目が白っぽく見えたりします。白内障は水晶体が白く濁ることで視力が低下し、失明に至ることも。一方、核硬化症は水晶体の中にある水晶体核が加齢に伴って圧縮され硬くなることを言います。
核硬化症になると、光の加減によって目が青みを帯びた白に見えるようになりますが、視力に影響はなく治療の必要はありません。
白内障か核硬化症なのかは、飼い主さんが判断するのは難しいです。愛犬の目が白っぽくなっていることに気づいたら早めに動物病院を受診しましょう。
シニア犬との暮らしの工夫
愛犬がシニア犬になっても、あまりストレスを感じることなく快適に過ごしてもらいたいですよね。そのためには暮らしに工夫が必要になりますが、どのようにしたらいいのでしょうか。
1.ケガのリスクを減らす
シニア犬になると足腰や感覚器官の衰えが顕著になり、ケガのリスクが高まります。危険の少ない部屋づくりをして、ケガのリスクを軽減しましょう。
シニア犬は視力の低下などによって物にぶつかりやすくなります。テーブルの角や壁の角などにコーナーガードをつけてケガを予防しましょう。
高さのあるところの上り下りは関節に負担がかかり、飛び降りたときに脱臼や骨折をする危険もあります。
ソファや飼い主さんのベッドを上り下りする習慣があるのなら、ステップやスロープを設置しましょう。ステップやスロープは慣れさせておかないと使ってくれないこともあるので、早いうちに設置するのがおすすめです。
床で足を滑らせてケガをするシニア犬は少なくありません。フローリングにはコルクマットやカーペットを敷いたり、滑りにくくなるワックスを塗ったりしましょう。
シニア犬が隙間に入り込んでしまうと、出れなくなってしまうことがあります。どうにか抜け出そうとしてケガをする可能性もあるので、家具と家具の間や家具と壁の間には物を置くなどして、隙間を埋めるようにしましょう。
2.家具の位置を大きく変えない
シニア犬になったら部屋の家具の位置は大きく変えないほうがいいです。犬は部屋のレイアウトを記憶していて、視力が低下した場合はその記憶を頼りに行動しようとします。そのため視力が低下してから家具の位置を大きく変えてしまうと、混乱してしまう可能性があります。
視力が低下していなくてもシニア犬は、生活スペースの変化にストレスを感じやすいです。愛犬が若いうちに、シニア犬になったときのことを考えた部屋のレイアウトにしておくといいでしょう。
3.トイレの位置を見直す
粗相の回数が多いと犬自身が落ち込み、自信を失ってしまうことがあります。これまでできていたことができなくなるのは、犬にとってもショックなことなのです。
粗相の回数を減らすために、トイレの位置を愛犬が寝たりくつろいだりする場所の近くに置いてあげるといいでしょう。トイレで排泄できたら、しっかり褒めて自信を持たせてあげることも大切です。
4.食器台を用意する
シニア犬は足腰が弱くなったり、飲み込む力が弱くなったりするため、床に食器を置いているのなら食器台を用意してあげましょう。それによって食事が摂りやすくなります。
犬用の食器台を購入しなくても、電話帳や雑誌を積み重ねれば食器台の代わりになります。高さを細かく調整できるので、かえって好都合かもしれません。高さは愛犬の肩の高さを大体の目安にするといいでしょう。
5.いきなり触らない
シニア犬になると視覚や聴覚が衰えてくるため、相手が飼い主さんでもいきなり体に触られると驚いて、噛みついてしまうことがあります。
シニア犬に触るときは、まず声をかけたり犬の視界に入るように立ち、こちらの存在を認識させることが大切です。存在を認識させてから、ゆっくりと近づいて触るようにしましょう。
6.日中にコミュニケーションをたくさん取る
シニア犬になると睡眠時間が増えますが、お昼寝をしすぎると運動不足になったり、夜に眠れなくなったりします。病気でないのなら、愛犬がお昼寝をしていても適度に起こしてコミュニケーションを取り、夜にぐっすり眠れるようにしてあげましょう。
嗅覚や頭を使う遊びをしたり、お散歩へ連れて行ったりすれば、脳に刺激を与えることができるので、認知症の予防にもなります。
まとめ
今回は、犬の老化のサインとシニア犬との暮らしの工夫をご紹介しました。愛犬にご紹介したような老化のサインが見られるようになるのは、寂しかったり切なかったりするかもしれません。
でも愛犬の老いゆく姿を見られるのは、実は幸せなことなのではないでしょうか。それだけ長い年月を一緒に過ごせている、ということなのですから。
ぜひご紹介した暮らしの工夫を参考に、シニア犬になった愛犬との生活も楽しんでいってくださいね。