保護団体と獣医師会が短頭種の犬のために立ち上がった!
パグやフレンチブルドッグに代表されるマズルの短い短頭種の犬は、その愛嬌のある顔立ちや仕草から世界中で人気があります。しかし、その顔立ちや仕草を作り出す身体的な特徴が彼らの健康を害していることは、さまざまな国の研究者や医療従事者によってデータや証拠とともに報告されています。
現在の極端になり過ぎた姿での繁殖は犬の健康や福祉を害するとして、繁殖を法律で制限している国もあります。オランダもそのような国のひとつで、マズルの長さが頭蓋骨の奥行きの3分の1に満たない犬の繁殖は法律で禁止されています。
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そしてこの度、オランダの4つの動物保護団体と獣医師会コンパニオンアニマル部門が共同で、短頭種の犬に関する消費者向けの大規模なキャンペーンをスタートさせました。
「短頭種の犬を買わないで」と呼びかけ
前述のように、オランダではマズルの短すぎる犬の繁殖は禁止されているのですが売買することはできます。犬はヨーロッパの他の国から輸入されて来ることが多いようです。
このキャンペーンは消費者に対して「短頭種の犬を買わないで」と呼びかけるもので、チラシやポスターの配布、SNSへの投稿などが実施されます。
消費者へのメッセージとして、短頭種の犬たちがその姿のためにどのような健康上の問題を抱えているのかが説明され、それによって飼い主が負担するコストが挙げられています。
飼い主のコストは経済的なことはもちろん、愛犬が苦しむことによる感情的な負担も含まれます。
短頭種の犬の健康の問題として挙げられたのは以下のようなものです。
- パンティングがうまくできず熱がこもりやすいため熱中症のリスクが高い
- 睡眠時無呼吸症候群になりやすい
- 目の病気、怪我が起こりやすい
- 鼻の穴が極端に狭いのため呼吸困難や炎症が起きやすい
- 先天性の脊椎の異常が多く、背中や首のヘルニアが起きやすい
- 顔や体のシワの間に皮膚炎を起こしやすい
健康上の問題は高い医療費につながり、経済的な負担が大き過ぎるとして動物保護団体に連れて来られる短頭種の犬たちの増加は多くの国で問題視されています。
今、短頭種の犬と暮らしている人はどうすればいい?
では今すでに短頭種の犬と暮らしている人に対してはどのようなメッセージが送られているのでしょうか?
強く勧められているのは獣医師にしっかりと診てもらうことです。過去のいくつかの研究では、短頭種の犬の飼い主が愛犬の健康上の問題に気づいていない例の多さが示されています。
寝ている時のイビキを犬種特有のかわいらしいものと考えていたり、歩き方や体型が短頭種以外の犬と違うのも犬種によるものと思い込んでいる場合もあります。
睡眠中のイビキは、鼻の穴の小ささや気道の狭さによって正常な呼吸ができないせいです。寝る時に息苦しいため、おもちゃを咥えて気道を確保する犬もいます。目の傷や皮膚のシワの間の炎症に気づいていない例も少なくありません。
極端に狭い鼻の穴は手術で改善することができますし、シワが多過ぎる場合は余分な皮膚をとりのぞいて炎症を起こしにくくすることもできます。脊椎や関節の検査、肥満の予防もかかりつけの獣医師との相談や連携が大切です。
まとめ
オランダの動物保護団体と獣医師会が共同で「短頭種の犬を買わないで」キャンペーンをスタートさせたという話題をご紹介しました。
ヨーロッパでは短頭種の犬に対する問題意識が高まり、調査結果や啓蒙活動がたびたび話題になっています。短頭種の愛犬と暮らしている方にとっては決して楽しい話題ではないと思いますが、日本で繁殖されている短頭種の犬たちも同じ問題を抱えています。
私たちが「かわいい」と感じる要素が、実は犬たちを苦しめているのだという現実を多くの人が知っていくことが変化や改善の第一歩になります。