物の名前を覚える才能を持つ犬の性格特性とは?【研究結果】

物の名前を覚える才能を持つ犬の性格特性とは?【研究結果】

たくさんのおもちゃの名前を覚えている犬が度々話題になりますが、この才能を持っている犬に共通している特徴がわかったと発表されました。どんなことだったのでしょうか?

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物の名前を覚えることができる犬は何が違うのだろう?

おもちゃを咥えたボーダーコリーの子犬

「赤いボール」「熊のテディ」などおもちゃに名前をつけて、その名前を指示しただけで当てはまるものを持ってくることができる犬たちがいます。これはこの犬たちがおもちゃの名前を覚えており、他のものと区別して認識していることを示しています。

物の名前を覚えて認識することは全ての犬ができるわけではなく、特定の犬が持つ特別な才能であると考えられています。

ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学の動物行動学の研究チームが物の名前を覚える犬たちについて継続して研究しており、以前の研究も紹介したことがあります。

https://wanchan.jp/column/detail/27979

このたび同研究チームが物の名前を覚えることができる犬たちの性格特性を調査した結果、才能を持つ犬に共通する性格特性が明らかになりました。

ギフテッド犬と一般の犬の飼い主へのアンケート調査

フリスビーを咥えたボーダーコリー

調査は物の名前を覚えられる犬(以下ギフテッド犬とします)と一般的な犬の飼い主に対して、愛犬の性格についての質問票への回答を分析して行われました。

以前の研究でギフテッド犬のほとんどがボーダーコリーであったことから、今回の調査の対象はすべてボーダーコリーとしました。

ギフテッド犬のボーダーコリー21頭、ハンガリーの一般的なボーダーコリー43頭、オーストリアの一般的なボーダーコリー101頭で、3つのグループ全てで平均年齢は約5歳、性別や不妊化の状態もほぼ同じ条件になるよう選抜されました。

過去に多くの研究で採用され信頼性と妥当性が確認されている『犬の性格特性質問票』を使用して、それぞれの飼い主にオンラインで回答してもらいました。飼い主は研究の目的は知らされておらず、あなたの愛犬の性格について教えてくださいとだけ依頼されました。

質問票は各質問に対してどの程度当てはまるかを「全く当てはまらない」から「非常によく当てはまる」までの5段階で回答する方式です。質問群は次の5つの因子に基づいて設定されています。

  • 恐怖心(対人間、対動物、音や環境などへの恐怖)
  • 人への攻撃性
  • 他の動物への攻撃性(狩猟欲)
  • 活動性(興奮しやすい、遊び好き、他者に積極的に関わる)
  • 訓練への反応性

ギフテッド犬に共通していたある特徴

前足を上げたボーダーコリー

質問票への回答から集計された3つのグループのボーダーコリーの性格特性を比較した結果、恐怖心、人への攻撃性、動物への攻撃性、訓練への反応性については有意な差は見られませんでした。

しかし、活動性の因子の中の「遊び好き」という特性は有意な差を示していました。ギフテッド犬たちは他の2つのグループの犬に比べてこのスコアが目立って高かったのです。

ボーダーコリーのような作業犬は遊び好きな個体を選択して育種されてきた歴史があり、ボーダーコリーは活発で遊び好きな犬種として知られています。しかしギフテッド犬たちは「遊び好き」の項目において一般的なボーダーコリーよりもさらに高いスコアを示していました。

ギフテッド犬の飼い主が愛犬の才能に気づいておもちゃを使った学習を熱心に行った結果として、遊び好きな面がさらに強化されたという可能性もありますが、この性格特性が物の名前を学習する能力を何らかの形で支えている可能性もあります。

過去の別の研究では、人間も問題解決能力と遊び心や遊び好きな特性が関連していることが示されているそうです。

「遊び好き」というのは性格特性で、学習する能力は認知の問題であり、それぞれに違う領域なのですが、犬のある種の性格特性が問題解決能力に影響を与える可能性はあります。

まとめ

遊びに誘うボーダーコリー

おもちゃの名前を覚える才能のある犬と一般的な犬の性格特性を比較したところ、ギフテッド犬は「遊び好き」の性格特性が非常に強いことがわかったという研究結果をご紹介しました。

注意しなくてはいけないのは、遊び好きな犬の全てが物の名前を覚える才能を持っているというわけではありませんし、遊び好きという性格特性と他の一般的な問題解決能力との関連はまだ不明だということです。

物の名前を覚える能力のある犬についての研究は、犬の認知をより深く理解するために今後も続けられます。これは決して「頭のいい犬と悪い犬」の研究ではなく、ある1つの特徴的な行動をする才能についての研究です。

他の性格特性と認知能力との関連が明らかになるきっかけになるかもしれませんので、今後の報告もまた楽しみです。

《参考URL》
https://link.springer.com/article/10.1007/s10071-022-01657-x

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