PTSDの症状を軽減させる介助犬、より良い効果の要素とは?【研究結果】

PTSDの症状を軽減させる介助犬、より良い効果の要素とは?【研究結果】

PTSDを持つ人をサポートする介助犬がいます。この介助犬たちが人々の精神的な症状を軽減させることは、どのような要因と関連しているのかを調査した結果が発表されました。

お気に入り登録

PTSDを持つ人を介助する犬についての研究

車椅子の男性と介助犬

介助犬と言えば盲導犬や聴導犬、その他身体的なハンディキャップのある方の日常生活のサポートをする犬たちが一般的によく知られています。日本ではまだあまり知られていませんが、アメリカには『精神科介助犬』という介助犬のカテゴリーがあり、主に心的外傷後ストレス障害(PTSD)を負った人が対象になっています。

PTSDとは命の危険に直面した後に、その体験の記憶が自分の意志とは関係なくフラッシュバックする、悪夢を見る、不安や緊張状態が続くなどの症状を指し、日常生活に支障を来たす場合も少なくありません。

アメリカでPTSD介助犬と暮らしている人の大多数は退役軍人だと言われています。戦場での体験が心理的なトラウマとなって社会復帰を難しくしています。

介助犬は心理的トラウマが原因で暗闇が怖い人のために照明のスイッチを入れたり、ドアを開けて最初に部屋に入ることができない人のために、先に部屋に入って見回りをしてから誘導するといったサポートをします。

また、薬を飲む時間を知らせる、悪夢にうなされている時に起こす、不安やパニックが起きそうな時に鼻先や肉球を押し付ける、キューでハグをする、毛布や枕を持ってくる、など介助犬の仕事は多岐に渡ります。

アメリカのパーデュー大学獣医学の研究チームは、PTSDを持つ人と介助犬についての研究を数多く実施しています。これまでの研究で、介助犬の存在がPTSDの症状を軽減させることもわかっていますが、犬の存在と症状の軽減のメカニズムは明らかになっていませんでした。

そしてこの度、同研究チームがPTSD介助犬の効果のメカニズムを理解するため犬と人両方の特性や行動についての調査を行い、その結果が発表されました。

ペアを組んだ犬と人の行動や性格を調査

軍のユニフォームを着た男性とジャーマンシェパード

研究チームはPTSD介助犬が症状を軽減させる要素を特定するために、犬の気質や行動の特性、介助を受ける人の精神状態や行動特性などについて調査を実施しました。

研究に参加したのはPTSD介助犬養成団体から提供された介助犬82頭と、これらの犬たちとペアを組んだ現役軍人または退役軍人82名でした。

犬たちは体重50ポンド以上(約23kg)体高24インチ(約61cm)以上が条件で、パートナーと引き合わされる前に専門のトレーナーによって訓練を受けています。82名の人たちは全員が医療専門家によってPTSD、外傷性脳損傷、軍事トラウマの診断が確認されています。

ペアを組む前に犬は医療記録と行動観察によって特性と気質が査定されました。人の方は精神状態や性格特性を査定するための質問票に回答しました。それぞれの結果はデータとして犬と人がペアを組んだ後の状態と比較されます。

犬と人のペアは自宅に戻り共に生活を始めます。3ヶ月後にフォローアップとして、犬の追加観察、人間は再度質問票に回答をしました。フォローアップの質問票には犬とのつながりの強さを測定する質問群が追加されていました。

また、犬の首輪にパートナーのスマートフォンと連動したブルートゥースのセンサーを取り付け、3ヶ月の間の犬と人の物理的な距離が測定記録されました。

犬の特性はPTSDの症状軽減と関連があっただろうか?

介助犬のベスト

介助犬を迎えた3ヶ月後のフォローアップでPTSDを持つ人の精神状態と、犬と人の気質や特性、犬と人の絆の強さなどが分析されました。

犬の特性の項目のほとんどは、パートナーの精神的な健康状態の良し悪しとの関連が見られませんでした。しかし、犬の興奮性が低いことはPTSDの症状の軽減と関連していました。興奮性の低い犬のパートナーは症状がより緩和されていたということです。

また、興奮性の低い犬はパートナーとのつながりがより強いことも確認されました。そのため、犬と人のつながりが強いペアではPTSDの症状がより緩和されていました。

症状の軽減に関連するその他の要素は、支配的な訓練方法の使用が少ない、犬とのパートナーシップにかかる負担が少ない(世話が簡単)などがありました。

また犬へのキューで「Make a friend(友達を作ろう)」と言って他の人に挨拶するよう指示するというものがあるのですが、これを多用する人は精神的な落ち込みが強くなっていることがわかりました。

犬から人への合図では、後ろから誰かが近づいてきた時に犬が知らせるというものがあります。この合図を受け取る頻度の高い人は不安度は強いが、PTSDの重症度は低いということもわかりました。

これらの調査結果を発展させるためにはさらに研究が必要ですが、介助犬を必要とする度合いが高いのはどのような人か、精神科介助犬の適性と最適な訓練方法に関する理解を深める可能性が期待されます。

まとめ

介助犬のハーネスをつけた犬

PTSDを負った人の日常生活を助けるための介助犬と介助を受ける人の気質や特性を分析し、PTSDの症状を軽減させるために有効な要素を探るための調査の結果をご紹介しました。

精神科介助犬という日本では馴染みの薄い分野ですが、支配的な訓練方法を使わず犬とのつながりが強いペアでは精神的な健康状態がより良いものになっていたというのは、一般の犬と飼い主の関係とも共通点がありそうですね。

《参考URL》
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0269186
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_ptsd.html

はてな
Pocket
この記事を読んだあなたにおすすめ
合わせて読みたい

あなたが知っている情報をぜひ教えてください!

※他の飼い主さんの参考になるよう、この記事のテーマに沿った書き込みをお願いいたします。

年齢を選択
性別を選択
写真を付ける
書き込みに関する注意点
この書き込み機能は「他の犬の飼い主さんの為にもなる情報や体験談等をみんなで共有し、犬と人の生活をより豊かにしていく」ために作られた機能です。従って、下記の内容にあたる悪質と捉えられる文章を投稿した際は、投稿の削除や該当する箇所の削除、又はブロック処理をさせていただきます。予めご了承の上、節度ある書き込みをお願い致します。

・過度と捉えられる批判的な書き込み
・誹謗中傷にあたる過度な書き込み
・ライター個人を誹謗中傷するような書き込み
・荒らし行為
・宣伝行為
・その他悪質と捉えられる全ての行為

※android版アプリは画像の投稿に対応しておりません。