一方通行では伝わらない思い
人間同士でも、片方の思いが強すぎて相手にうまく伝わらない場合に、ストーカーとかセクハラといったような形でトラブルが生じます。加害者側も、悪意で行っているわけではなく、相手に対する愛情表現が間違っていたために生じることも多いようです。
このように自分の思いだけで行動してしまうと、相手を不快にしたり恐怖に陥れたりするという不幸な結果になってしまいます。これは人間同士の話だけではなく、飼い主さんと愛犬の関係でも普通に起こり得る話です。相手が人であっても犬であっても、自分の愛情をきちんと相手に伝えるためには、相手の気持を汲み取りながら行動することが大切です。
そこで今回は、愛犬に上手く伝わらない飼い主さんの間違った愛情表現や、飼い主さんの愛情を愛犬に上手に伝えるためのコツについてご紹介します。
犬には伝わらない間違った愛情表現
1.意味もなく見つめ続ける
飼い主さんと愛犬にとって、コミュニケーションの基本は「アイコンタクト」だといっても良いでしょう。飼い主さんと愛犬がアイコンタクトをすることで、愛犬の注意は飼い主さんに集中します。愛犬に、これから出される指示を聞く態勢に入らせるための合図が、アイコンタクトなのです。
そのため、ただ意味もなく愛犬の顔をじーっと見つめ続けることは、愛犬に混乱をもたらします。また犬同士のコミュニケーションでは、相手をじっと見つめることは敵意を表しますので、愛犬は益々不安な気持ちになることでしょう。
人間同士の場合、相手のことが愛おしくてお互いにじーっと見つめ合うということがありますが、愛犬に対して行うと間違った愛情表現になってしまいますので気をつけましょう。
2.ハグやキス
ハグやキスも、人間同士の場合はお互いが愛おしくて行う行為の1つです。愛犬に対して「あぁ、なんて可愛いんだ!」と思った瞬間、思わず抱きしめたりキスしたりしたくなってしまうものです。しかしハグやキスも、愛犬を不快にさせる可能性が高い行為です。犬は自分の体を拘束されることを好みません。
また、犬にも守りたいパーソナルスペースがあります。そのため、体を押さえつけられるハグや、パーソナルスペースに踏み込まれるキスを不快に感じる犬もいるのです。
3.タイミングの悪いスキンシップ
捕食動物であった犬は、いざという時のために体力を温存すべく、私達人間よりも長い時間を睡眠に費やします。そのため、愛犬の寝顔を目にする機会が多く、「あぁ、可愛い寝顔!」などとキュン♡としてしまい、眠っている愛犬を撫でてしまう飼い主さんもおられるでしょう。
また、飼い主さんが作った食事を美味しそうに食べてくれる愛犬が愛おしくなり、食事中の愛犬を撫でてしまったこともあるかもしれません。
しかしこのようなタイミングで撫でられることを、犬は好みません。犬は些細な物音や気配でも眠りから覚めてしまいます。大切な食事の最中に邪魔をされるのは、人間でも気持ちの良いことではありませんよね。
4.愛犬の性格に合わない遊びの強要
飼い主さんの中には、時々愛犬の性格を考えずに苦手なことを強要してしまう方がいらっしゃいます。お散歩やドッグランなどで他のワンちゃんとの交流を強要したり、自動車に乗るのが苦手なワンちゃんと一緒に頻繁にドライブに出かけたりなどです。
飼い主さんには、愛犬と楽しく過ごすためとか、愛犬に社会性を身につけさせるためといった目的があるのでしょうが、愛犬の性格や向き不向きを見極めることも必要です。
5.人間扱い
愛犬は家族の一員です。しかし人間ではありません。
例えば、「家族なのだから」と食べるものも人間と一緒にしてしまう方がいらっしゃいます。人間と犬とでは体の作りが異なり、必要となる栄養バランスや必要な摂取カロリーも異なります。
特に健康に影響を与えることに関しては、愛犬を人間扱いしてはいけません。健康を害して愛犬を不幸にしてしまいかねません。
飼い主さんの愛情を正しく伝えるためのコツ
嫌がることをしない
ご自身の行為に対する愛犬の反応をよく観察し、愛犬のパーソナルスペースや許容範囲を見極めて、飼い主さんの愛情表現を愛犬が嫌がらない範囲におさめるようにしましょう。
わかりやすく伝える
人間同士と犬とのコミュニケーションは異なることを理解しましょう。そして何かを伝える時はアイコンタクトを取り、決まった掛け声をかけます。
褒める時、叱る時にはその感情を声のトーンに置き換えて、より愛犬にわかりやすく伝えることを心がけましょう。
スキンシップのタイミング
飼い主さんにやさしく撫でられたりマッサージをされることは、愛犬にとっても喜びです。ただし、スキンシップを行うタイミングを見計らいましょう。
愛犬が眠っている時、眠そうな時、食事中などは避けてください。
気持ちを汲み取る
飼い主さんの愛情表現が一方通行になってしまうと、それは愛犬にとってストーカーやハラスメントと同じ行為に映ります。
犬のカーミングシグナルやボディランゲージを学び、愛犬の気持ちを汲み取るツールを手に入れましょう。
まとめ
コミュニケーションとは、相手があるためにとても難しいです。人間同士でも悩みのタネなのですから、異なる動物種である愛犬とのコミュニケーションが簡単なわけはありません。
しかし誰が相手であろうとも、コミュニケーションの基本は相手との情報交換による相互理解です。そのためには、相手の気持を汲み取ることが大切だと考えます。
相手の気持を汲み取るための方法を学び実践することで、愛犬との絆をより深いものにしていきたいものです。