生肉食の犬は薬剤耐性菌を排泄する可能性が高いという研究結果

生肉食の犬は薬剤耐性菌を排泄する可能性が高いという研究結果

犬が生肉を食べることと抗生物質耐性菌を排泄することを含むリスク要因についての研究結果が発表されました。難しい問題ですが知っておきたいことです。

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犬の生肉食と抗生物質耐性菌

ドッグフードと生肉を前にした子犬

犬の食事に生の肉を与えることはBARFダイエットなどをはじめとして根強い人気があります。しかし一方では、犬の生肉食と抗生物質耐性菌(抗生物質が効かない菌)の蔓延には関連があるという調査結果も複数発表されています。

こちらはその一例で2021年に発表されたものです。
https://wanchan.jp/column/detail/28003

そしてこの度はイギリスのブリストル大学の細胞分子医学の研究者チームが、生肉を食べている犬は糞便中に抗生物質耐性菌を排泄する可能性が高いという研究結果を発表しました。

違う生活環境の犬たちを対象にして菌の検出を調査

犬のフンを拾う女性

この研究に参加したのは、都市部居住の犬297頭と都市から約30km離れた農村部に居住する犬303頭の合計600頭でした。各地域の散歩コースで参加者を募集し、食事や生活環境などに関する質問票と便サンプルの提出が依頼されました。

提出された便サンプル中の第3世代セファロスポリン耐性大腸菌が比較調査の対象となりました。第3世代セファロスポリンとは抗生物質(抗菌薬)の名称で、セファロスポリン系の薬剤は対象とする細菌の種類によって5つの種類(世代)に分けられています。第3世代のセファロスポリンは大腸菌や肺炎桿菌などの細菌感染に用いられます。

提出された便サンプル中の第3世代セファロスポリン耐性大腸菌(以下3GC-R大腸菌と表記)の有無が分析され、犬のライフスタイルや食事などと3GC-R大腸菌の検出との関連性が調査されました。

犬が3GC-R大腸菌を排泄するリスク要因とは?

フードボウルに入った生肉

3GC-R大腸菌は、都市部の犬31頭(10.1%)、農村部の犬20頭(6.6%)の便サンプルから検出されました。

食事として生肉を与えられていた犬は都市部31頭、農村部26頭で、分析の結果では農村部の犬では生食と3GC-R大腸菌の排泄には有意な関連がありましたが、都市部の犬では有意と言える関連は見られませんでした。

また犬が与えられている生肉は、「犬用フードとして販売されている生肉」と「人間の食事用に販売されている生肉」に分けての統計も取ったところ、都市部においては犬用フードとして販売されている生肉を食べている犬からは3GC-R大腸菌は検出されませんでした。

農村部の犬の生活環境には牛も暮らしており、散歩中に牛のいるエリアを通るかどうかが質問項目に含まれていましたが、牛との共存と3GC-R大腸菌の排泄には関連が見られませんでした。(牛由来の大腸菌の排泄は見られた)

「河川で遊んだり泳いだりする」という行動は都市部の犬においてのみ、3GC-R大腸菌排泄と弱い関連が見られました。

農村部の犬では生肉食との強い関連があったのに都市部の犬では見られなかった理由として考えられるのは、都市環境は人犬ともに人口密度が高く農村部よりも抗生物質耐性菌の汚染度が高く、リスク要因がより多く複雑である可能性が挙げられています。

しかし、過去の他の研究と今回の調査結果を併せて見ると、犬の生肉食が抗生物質耐性菌の蔓延のリスク要因のひとつである可能性は高く、この研究の分析結果は抗生物質耐性菌の脅威を小さくするための解決策を示していると言えます。

まとめ

大きな塊肉とダックスフンド

犬の生活と抗生物質耐性菌の関連を分析した調査結果から、生肉食は抗生物質耐性菌が排泄されるリスク要因のひとつである可能性が示されたことをご紹介しました。

細菌感染症の治療の決め手とも言える抗生物質、その薬剤が効かないというのは医療上の大きな脅威です。研究者はこのようなリスクを小さくするためにはできる限りのことを行うべきで、犬に生肉を与えないことが役に立つ可能性を示していると述べています。

誤解のないようにしたい点は、犬に生肉を与えることが必ずしも飼い主や犬が即病気になることを意味しているわけではありません。(病気になる可能性もまたあります)いかし抗生物質耐性菌の流通に犬の生肉食が一役買っていることを示す証拠は増えつつあります。

犬に生肉を与えている飼い主さんは信念を持っている場合が多いのですが、研究者はどうしても生肉食を選択する場合の注意点も挙げています。

  • 生肉食は最も安全な食事の選択ではないことを知る
  • 生肉を扱う際には手洗いや調理器具の洗浄など細心の注意を払う
  • 犬のフンの後始末を完全に行う

犬の食事の選択が、公衆衛生の面でも大きな影響があることは知っておきたいですね。

《参考URL》
https://doi.org/10.1093/jac/dkac208

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