犬が噛むのは当たり前の行為
人と一緒に暮らし始める以前、犬は狩りをすることで食物を得ていました。今でも、狩猟本能は犬の中にしっかりと引き継がれています。そのため、素早く動くものを見ると、犬は思わず捕まえようとします。
犬の場合、相手を捕まえるための行動が噛みつくことです。つまり、犬にとって「噛む」という行動は本能であり、完全にやめさせることはできない行動なのです。
しかし、犬は最初から全てのものに対して本気で噛みつくわけではありません。子犬同士がお互いに噛みつきながらじゃれ合っているうちに、噛みつく際の力加減を覚えていき、「甘噛み」と「本気噛み」を使い分けられるようになっていきます。
甘噛みの場合は攻撃する意図がなく力加減を調整するために、相手にケガをさせることはありません。しかし本気噛みの場合は、力加減をせずに本気で噛みつくため、とても危険です。ただ、甘噛みをして遊んでいるうちにエスカレートしてしまい、力加減がわからなくなってしまう場合もあります。
まずは犬が甘噛みをする時の心理を把握して、トレーニング等に役立てましょう。
犬が甘噛みをしてくる時の心理
1.捕まえたい!
犬は素早く動くものを見ると自然に狩猟本能が目覚めて、動くものを捕まえようとして噛みつきます。しかし、これは本能からくる行動なので、やめさせることはできません。
そこで、愛犬と一緒に遊ぶ時には、必ず間におもちゃを介するようにします。飼い主さんの手や足を噛みついても、良い対象だと思わせないようにしましょう。
2.遊びたい!
子犬の遊びは、狩りのトレーニングでもあります。そのため、子犬はじゃれ合いの中で、甘噛みをし合います。遊びながら噛みつく時の力加減を学び、甘噛みと本気噛みを使い分けられるようになっていくのです。
そのため、飼い主さんと一緒に遊びたい時にも、その気持を甘噛みで表すことがあります。さらに、甘噛みされた時に飼い主さんが騒ぎ過ぎると、愛犬は飼い主さんも一緒に喜んでいると勘違いしてしまうことがあります。
愛犬を構ってあげられずに長時間退屈にさせてしまったり、愛犬にストレスが溜まっている場合も、遊びたい、気を紛らわしたいという気持ちから、家具などを噛んでしまうことが増えます。
3.むず痒い!
犬は、だいたい生後7ヵ月齢までに、乳歯から永久歯に生え替わります。この時期は歯がむず痒くなり、いろいろなものに噛みつきたがります。
このような場合は、噛みついても良い犬用の丈夫なおもちゃを与えて噛む欲求を満たさせながら、「おもちゃなら噛みついても良い」ということを教えていきましょう。
人と一緒に暮らしていくためのルールを教える
甘噛みに対して何もせずそのままにしておくと、やがて「噛み癖」として定着してしまいます。前述の通り、甘噛みのつもりでも、力が入りすぎてしまうという場合もあるため、噛み癖はご近所とのトラブルに発展してしまう可能性があります。そのため、できるだけ早いうちに甘噛みをやめさせる必要があります。
とはいえ噛みつくのは本能ですから、犬に一切噛みつかせないようにするというのは、非現実的です。そこで、噛んでも良いものと悪いものの区別を教えるということになります。
噛んで良いものとは、噛むように作られている犬用のおもちゃです。噛んではいけないものとは、人の手や家具などです。噛んでも良いおもちゃは、飼い主さんも一緒に遊ぶことで、楽しさを教えるようにし、手や家具を甘噛みした場合は、飼い主さんが愛犬を無視して別室に移動したり飼い犬をケージに入れたりすることで、甘噛みをすると遊んでもらえなくなることを教えていくというのが、基本的なトレーニング方法です。
効果的に愛犬にトレーニングを行うためにも、上記のような「甘噛みをしてくる時の愛犬の心理」を知っておくことが大切でしょう。
まとめ
ご近所の方皆が、犬好きだとは限りません。中には、犬が怖いという方もいらっしゃいます。そういう方の場合、たとえ甘噛みであっても非常に強い恐怖感を覚え、思わぬトラブルに発展してしまう場合があります。
そうなると、愛犬に悪気はなくても悪者となってしまい、愛犬自身が快適に暮らせなくなってしまうこともあるでしょう。しっかりと愛犬をトレーニングし、人の手や足には甘噛みであっても噛みついてはいけないことを教えることは、愛犬にとっても大切なことになります。
愛犬にしっかりとトレーニングできるのは、飼い主さんだけです。愛犬のためにも、日常生活の中で、しっかりと噛んでも良いものと悪いものの区別を教えてあげるようにしましょう。