私は動物看護師として動物病院で働いています。
犬種や体質等によりますが、近年犬の皮膚のトラブルが多く、症状や範囲によってはシャンプーによる薬浴が必要になります。またその際は定期的に洗ってあげることも必要であり、飼い主さんの理解のもと実行することが何よりも必須になります。
しかし残念ながらなかなかご家族に理解していただけなかったり、協力が得られないまま改善されないケースが少なくありません。
今回は、ご家族の理解不十分や飼育不足によって皮膚トラブルを起こしてしまったヨークシャーテリアについてお話ししたいと思います。
皮膚トラブルが起きたヨークシャーテリア
ある日私が働いている動物病院にヨークシャーテリアが来院してきました。連れて来たのは飼い主さんの義理の母親で、その犬は「皮膚がベタついている」とのことでした。
「本人(飼い主)に言ってはいるものの、全然連れて行かなくて……」
ヨークシャーテリアの飼い主さんと義理の母親の家は、近所でありながらも別々に暮らしているとのことでしたが、このヨークシャーテリアがあまりにも放置され続けている状況に呆れてしまったとのことでした。
そのお話を聞き、義理の母親の優しさを感じると同時に、当の本人である飼い主さんの愛犬に対する愛情の薄さに悲しくなりました。
診察で皮膚の状態を診てみたところ、体全身の皮膚がベタついていたため、シャンプーを使った薬浴による治療が適切と思われました。
私が働いている動物病院はトリミングサロンも併設しているため、後日シャンプーに来ていただきました。
またその時はまだそこまで皮膚の状態が悪くなかったため、お家でも適度に洗ってあげる必要性があることも獣医師と共に説明し、再診に来るように伝えました。
連れて来るのは毎回義理の母親
再診の日もヨークシャーテリアを連れて来たのは飼い主さんではなく、前回同様義理の母親でした。
「言ってはいるんだけども、別々に暮らしているから普段の様子が分からないのよね…」
詳しく聞いてみたところ、実際にお家で洗っているかどうかも分からないとのことでした。実際にヨークシャーテリアの皮膚を診てみると、明らかにベタついており、しばらく洗われていないと思われました。
なぜ本人である飼い主さんや同居のご家族は愛犬に対して何もしてあげないのか、毎回動物病院に連れて来るのは義理の母親で任せっきりにしているのか、疑問を抱かずにはいられませんでした。
犬種がヨークシャーテリアということもあり、後日シャンプーによる薬浴も含めたトリミングに来てもらうこととなりました。
住んでいるご家族全員が無関心、ろくにお世話もしていなかった
しかしその後もヨークシャーテリアは定期的にトリミングに来るようになりましたが、依然として連れて来るのは飼い主さんの義理の母親であり、皮膚の状態も変わらないままでした。
「孫には『パパが忙しいから無理』って言われたし、本人に言っても行動すらもしないから、もうどうしたらいいのかしら…」
飼い主さんの義理の母親は半ば諦めている様子で、正直悲しくなりました。
また詳しくお話を聞いてみたところ、普段のトイレ掃除すらも「汚い」「嫌」との理由でお孫さんは一切手を出しておらず、当の本人である飼い主さん(両親)も結局はほとんどしていないことが分かりました。
実はそのヨークシャーテリアは、過去に2回もソファーからの落下で前肢を骨折したことがあったのです。その件も考えると、住んでいるご家族全員の愛犬に対する愛情の無さが今回のお話でよりリアルに感じられ、悲しみの気持ちよりも怒りの気持ちが込み上げてきました。
まとめ
今回のように飼い主さんやそのご家族の理解不足や飼育放棄、協力してくれないなどの無責任さが原因で、犬がさまざまなトラブルを背負わされてしまうケースが増えてきているように感じます。
年々犬の寿命が伸び長寿化してきました。それに伴い、私たち人間のライフスタイルだけではなく、家族の一員である愛犬の生活環境や将来についても、きちんと考えていく必要があります。
単に面倒臭いなどの理由でやらないことは、ある意味動物虐待に匹敵するくらい愛犬に対して辛い思いをさせています。私たちと同じ1つの命でありその重さも同じです。飼い主としての責任の重さを感じていただけたら嬉しいです。