NYが店頭販売禁止の州に仲間入り
アメリカでは多くの地方自治体がペットショップの店頭で犬、猫、うさぎの販売を禁止する条例を制定しています。また市や郡単位よりも大きく、州全体で同様の禁止を制定した法律を持つ州もカリフォルニアをはじめ5州あります。
2022年6月、ニューヨーク州が新たに犬、猫、うさぎの店頭販売を禁止する州に加わることがほぼ決定しました。6月上旬に州議会において法案が可決し、後は州知事の署名を待つばかりとなったからです。
アメリカ動物虐待防止協会からの報告
アメリカには大規模な動物保護団体が複数ありますが、その中でも屈指の存在であるアメリカ動物虐待防止協会(ASPCA)の本部はニューヨーク州ニューヨーク市にあります。そのこともあってか、この度の犬猫うさぎ店頭販売禁止法案可決のニュースはニューヨークの動物好きの人々の「ようやく!」「やっと!」という声を多く伝えています。
ASPCAもこのニュースに関して直々にプレスリリースを発表しています。同協会の会長は、この法案が成立すればニューヨーク州外に多く存在する虐待的な商業繁殖施設から来る動物の販売先を断ち、悪質な業者が利益を得ることを阻止するのに役立つと述べています。
アメリカでは、広大な土地のある中西部の州に大規模な商業繁殖施設が集中しています。ニューヨークの場合、ペットショップで売られている子犬の半数近くはミズーリ州から来ています。ミズーリ州にはアメリカで最も多くの犬の商業繁殖施設があり「パピーミルのメッカ」とありがたくない名前までついています。
なぜ大規模繁殖施設や店頭販売が良くないのか
今回のニューヨーク以外にも、アメリカやヨーロッパの国で犬や猫の店頭販売が禁止されたというニュースが伝わるたびに、日本の動物好きな人々が「うらやましい」「日本でも早く」という声を上げるのを見て来ました。
しかし、なぜ大規模な商業繁殖施設や店頭販売が良くないのでしょうか?一言で言えば、どちらも動物の福祉を大きく損なう可能性がたいへん高いからです。
多くの商業繁殖施設では何十、何百という動物が1年に複数回の出産を強いられます。これでは体力が回復する間もありません。病気や怪我をした場合の医療処置も適切でない場合が多く、ほとんどの犬の生活は狭いケージの中のみです。
親犬がこのような状態なので、生まれた子犬の健康状態も良くないことが多く、幼いうちから物品のように流通させられるため、精神的に不安定になる犬も少なくありません。
責任を持って繁殖にたずさわるブリーダーは、どこのどんな人の手に渡るか自分で確かめられないペットショップに手塩にかけた子犬を卸しません。これらは猫やうさぎでも同様です。
大規模な繁殖施設の中にも、親犬が屋外で遊ぶ施設などを持ち、若いうちに繁殖を引退させる良心的な業者もあります。
しかし大規模施設では遺伝病の管理までは手が回らないこと、幼いうちに親から離れて流通させられる子犬の事情は同じであること、そもそも引き取り手のいない動物が市場に溢れている状態で大規模に動物を繁殖させることの意味などを考えると、やはりその存在は再考が必要です。
まとめ
アメリカのニューヨーク州で、犬猫うさぎの店頭販売を禁止する法案が議会を通過したというニュースをご紹介しました。
このようなニュースが伝わると「ぜひ日本でも!」という声と、「そうは言っても、日本ではペットショップ以外の選択肢がないじゃない」という声の両方が聞こえてきます。
日本でもペットショップ以外の選択肢がないわけでは無いのですが、責任あるブリーダーも気軽に訪れることができる保護施設も少ないのは確かです。地域によっては本当に選択肢がない場合もあります。
そのような現状で欧米のニュースを見聞きして「同じようにしよう」と言うのは無理な話です。しかし虐待的な繁殖施設や、明らかに問題のある販売をしているペットショップをなくしていくためには一般の人々の知識が必要です。
日本でも今すぐ同じようにはできなくても、日本のペット流通の問題は何なのか、改善するために飼い主としてできることはあるのか、海外のニュースに触れることで身近な問題を知り考えるきっかけになればと思います。
《参考URL》
https://www.prnewswire.com/news-releases/new-york-lawmakers-pass-groundbreaking-bill-to-end-the-retail-sale-of-dogs-cats-and-rabbits-in-pet-stores-301561312.html
https://www.nysenate.gov/legislation/bills/2021/S1130