常に身綺麗な飼い主からお手入れを放棄されたミックス犬【動物看護士体験談】

常に身綺麗な飼い主からお手入れを放棄されたミックス犬【動物看護士体験談】

犬の飼育には躾だけではなく、定期的なトリミングやシャンプーも必要です。犬種や体質によっては、自宅でもブラッシングなどのお手入れは欠かせません。しかしこれらを怠ってしまうと、愛犬の皮膚や被毛のトラブルを招いてしまいます。今回は、愛犬のお手入れは気にしない一方で常に身綺麗にしている飼い主についてお話ししたいと思います。

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私は現在、動物看護師として動物病院で働いています。

犬は、犬種によっては定期的にシャンプーやカットが必要になります。これらの皮膚や被毛などのメンテナンスを怠ってしまうと、毛玉ができて皮膚炎を起こしたり、フケやベタつきなど様々なトラブルの原因にもなりますので、こまめなお手入れが必要です。

今回は、自分自身はいつも身綺麗にしているのにも関わらず愛犬のお手入れは放棄してしまった飼い主とその愛犬についてのお話です。

常に身綺麗な飼い主と中高齢のヨーキーのミックス犬

座っている可愛いヨークシャテリア

私が働いている動物病院では、トリミングサロンが併設されています。

最近では高齢や疾病を抱えているなどの理由で一般のトリミングサロンに断られてしまう場合が多いようで、今回お話しする中高齢のヨーキーのミックス犬も、何度かトリミングに来ていました。年齢が中高齢ということもあり、事前に獣医師の診察をうえでトリミングをおこなっていました。

しかし私には、当初から一つ気になっていたことがありました。

それは、そのミックス犬の飼い主さんが、メイクやネイルなど、いつもバッチリと身なりを整えているのに対し、愛犬であるヨーキーのミックス犬は誰がみても日々のお手入れがじゅうぶんにされていないような姿であることでした。

日々のブラッシングがされていないのか、被毛がボサボサで身体の至るところに毛玉があったり、皮膚もベタついていました。ミックス犬といえど、ヨーキーはお手入れが必要不可欠なトリミング犬種であり、カットやシャンプーだけではなく、日々の定期的なブラッシングもしなければいけません。

しかしそのミックス犬の被毛や皮膚の状態から、その飼い主は愛犬に対して明らかに何もせず放置しているように思えました。

「仕事で忙しくてつい…」

その飼い主さんは仕事の忙しさを理由にしていましたが、そんなに忙しい中自分自身の身なりをバッチリ整える時間があるのなら、ぜひ愛犬のメンテナンスに対しても配慮してほしいと思いました。

時間さえ取れれば対応してくれるだろうと願いつつ、自宅でも定期的にブラッシングをおこなったり、トリミングの間隔を調節するように飼い主に説明しました。

腹部の腫瘍発見にも薄い反応

獣医に抱かれるヨーキー

しかしこちらの必死の説明は残念ながら飼い主さんの心には響かなかったようで、ヨーキーのミックス犬は毎回変わらず不潔な姿でした。

またトリミングの頻度も、徐々に間隔をあけてくるようになってきました。それまでは2ヶ月くらいの頻度で来ていましたが、3ヶ月、半年、そして1年とだんだんと伸びていったのです。

たとえ間隔が空いたとしても、別のトリミングサロンに行っているのならば話は別です。しかし実際は、久々の来院時にも大きな毛玉があったり、フケや皮膚のベタつきもみられ、明らかに何もされていないことがすぐに分かりました。

また獣医師の診察で、このミックス犬の腹部に腫瘍があることがわかりました。お迎えの際にその旨を女性の飼い主さんに説明し、年齢のこともあり早めに手術すべき旨を伝えました。

「腫瘍があったんですか?全く気づかなかったわ、とりあえず考えてみます」

女性の飼い主さんはあっさりとそう言い、動揺の様子も全くみられませんでした。

しこり自体決して小さくはなく、きちんと愛犬と日々コミュニケーションをとっていればすぐに気づく大きさなのです。それなのに全く気づかなかった飼い主さんに対し、(本当にお世話しているのか?)と疑問を抱かざるをえませんでした。

また愛犬の症状を聞かされた際のあまりにもあっさりとした軽い反応に対しても、愛犬への愛情の薄さを感じてしまい、とても悲しい気持ちになりました。

「犬の腫瘍は猫と比較して悪性度は低い」といわれてはいますが、とはいえ悪性だった場合には肺などの臓器に転移したり腫瘍自体が自壊してしまうなど、体に悪影響を及ぼします。いかに愛犬にとって深刻な状況なのか、そのときは飼い主さんの心に正しく届いているように願うことしかできませんでした。

腫瘍を抱えたまま音信不通に…

ヨークシャテリア

しかしその後、このヨーキーのミックス犬は、手術どころかトリミングすらも1度も来ていません。飼い主さんからの連絡も一切きておらず、数年が経とうとしています。

もともと年齢が中高齢であったこともありましたので、(元気に過ごしているのだろうか?)と、ふと考えてしまいます。

仮にあの主要が悪性だった場合には良性よりも進行度も早く、転移しやすいため、一気に体を蝕んでいきます。大事な栄養が奪われてしまい、だんだんと痩せて衰弱していきます。もし良性だったとしても腫瘍部分が大きく広がり、自壊するなど健康に悪影響を及ぼします。

もし他の動物病院を受診し、治療を受けていれば別の話ですが、何もしなかった場合、腹部にしこりを抱えたままです。考えたくもないですが、生きていられているのかどうかも分かりません。いまなお(あのヨーキーのミックス犬は果たして幸せだったのだろうか…?)と疑問に思わずにはいられません。

まとめ

ヨークシャテリア

今回のように犬種によっては定期的なカットやシャンプーなどのトリミングが必要不可欠であり、毛質や皮膚の状態からお家でもブラッシングをこまめにおこなったり、シャンプー(薬浴)をする必要もあります。そのため今回のようにトリミングの間隔が長かったり、お家で適切なお手入れを怠ってしまうと、愛犬に毛玉ができてしまったり、皮膚炎の原因にもなります。

また私たち人間と同じく、犬も年齢を重ねると様々な病気にかかりやすくなり、その第一位は「癌」といわれています。良性と悪性の比率はそれぞれ50%ずつですが、部位によっては悪性度が高いこともあります。手術だけではなく病理検査もおこなう必要があり、その結果によって今後の治療プランが変わってきます。

しかし愛犬の治療も日々のお手入れも、全て飼い主自身の義務であり責任です。愛犬の生活もその人生も、飼い主の匙加減で大きく影響を受けます。

ご存じの通り、飼い主は愛犬を最期まで適切に飼育する義務、そして責任があります。自分だけ身なりを整えることはできるのに、愛犬に対してのケアは気にしなかったり、ずさんな飼育をすることは虐待に匹敵するものであり、決して許されることではありません。

犬種や性別、体質などによっては、日々のメンテナンスや気をつけなければいけないことが異なります。それらを配慮した上で、愛犬に対してきちんとお手入れや体調管理をしているのか、愛情を持ち適切に飼育しているのか、今一度飼い主としてのあるべき姿に目を向けてほしいと思います。

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