飼い主に見放され重度の会陰ヘルニアになった犬

飼い主に見放され重度の会陰ヘルニアになった犬

人間同様、犬にもヘルニアの病気は存在し、種類もいくつかあります。なかでも肛門周囲に起こる「会陰ヘルニア」は、重度になってしまうと排泄が困難になり、最悪命を落とす危険があるため外科手術の必要があります。また中高齢で未去勢のオス犬がかかりやすいため、若い頃に去勢手術を受けることで発症率を下げることができます。しかし、ずさんな飼育により重度の会陰ヘルニアになってしまったポメラニアンとその飼い主さんについてお話ししたいと思います。

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私は現在、動物看護師として動物病院で働いています。

私たち人間と同様に犬も歳をとると様々な病気にかかりますが、犬の病気の中でもメジャーな病気のひとつとしてヘルニアがあげられます。

犬種などにもよりますが、ヘルニアの中でも肛門周囲の「会陰ヘルニア」は、中高齢の未去勢の犬に発症しやすいといわれています。

重症化すると排泄困難になったり、犬の命に関わるため、外科手術が必要になります。

今回は、愛犬が重度のヘルニアにも関わらず、愛犬の命よりもお金の方を心配し、結果手術を受けさせなかった飼い主について書きたいと思います。

重度の会陰ヘルニアのポメラニアン

ポメラニアン

ある日、私が働いている動物病院に初診のポメラニアンが来院してきました。

「お尻周りが腫れている。一応元気だし、食欲もある。」

男性の飼い主さんはさらっと症状について言いましたが、実際に診察してみると予想外の状況でした。

お尻周辺が腫れているというよりかは、大きく異様に膨らんでいたのです。

獣医師がポメラニアンの体全身をくまなく診た結果、会陰ヘルニアを発症していることが分かりました。

いくつか種類があるヘルニアの中でも、会陰ヘルニアは、肛門周囲の会陰部に体内の臓器が飛び出てしまった状態のことを指します。

中高齢去勢していない犬に多く発症しやすい、ともいわれています。

今回の初診のポメラニアンも、年齢が中高齢であり、去勢手術をしていないとのことでした。

触診から、恐らく異様に膨らんでいるのは「飛び出した直腸」だと思われました。

このままだとさらに飛び出してしまい、排泄困難に陥って、最悪命を落とす危険性があります。

状態にもよりますが、会陰ヘルニアの根本的な治療法は外科手術しかありません。

そのため、獣医師は男性の飼い主さんに、外科手術をおこなう必要性があることを現在の状況を含めて説明しました。

「えっ、手術ですか…でもお金かかるし、高いですよね…」

男性の飼い主さんは愛犬の状態よりもお金のことしか頭にないようで、手術自体に対して意欲的ではありませんでした。

軽度のヘルニアであれば、内科的療法や多少様子をみる時間もあります。

しかし、ここまで広範囲に及んで飛び出している状態を放置することは大変危険です。

ペット保険に加入していなければ全額負担となるため、どうしても手術にかかる費用は決して安くはありません。

「…やっぱり、もう少し考えてみます…」

費用の支払いを分割払いにするなど、こちらからも色々な方法を提案してみましたが、結局その場では手術の同意を得ることはできませんでした。

経済的な問題はどうにもできませんが、残念ながらこの男性の飼い主さんから愛犬の命の大切さを感じることがなく、悲しい気持ちになりました。

ただ男性の飼い主さんが手術に対して決断してくれることを、ひたすら願うことしかできませんでした。

放置され続けた挙句、代理の方が連れて来院

ポメラニアン

前回の診察から半年後ぐらいに、再びあのポメラニアンが来院してきました。

しかし、連れてきた人は飼い主の男性ではなく、代理の方でした。

「確か前回診てもらった時に手術が必要と言われたと聞きまして、ここ最近お尻周りがさらに腫れて…

その様子から、あの男性の飼い主さんは、ポメラニアンを他の動物病院に連れていったわけでもなく、あれからずっと放置していただけだったことがうかがい知れました。

愛犬のことを気にもしないどころか、お世話すらもしていない飼い主に言葉を失い、私はとても悲しい気持ちになりました。

実際ポメラニアンを診てみると、放置されたヘルニアが更に広範囲に及んでしまい、ボッコリと大きく膨らんでいました。

どの臓器がどこまで飛び出しているのかも不明瞭な状態でした。

このままだと膀胱も出てしまうと、排尿ができなくなります。

命の危険があることを代理の方に説明し、早急に手術をする必要性があることを伝えました。

「そうなんですね、飼い主に伝えておきます」

代理の方は理解してくれたようでしたが、結局は飼い主さんのご了承がなければ手術をすることができません。

この機会を通して、なんとか手術の同意をしてくれることを期待するしかありませんでした。

希望の光が届くことはなく未だに来院や連絡すらもない

ガッカリする看護師を励ます女医

男性の飼い主さんの心に響いてくれるかと期待していましたが、あれからというものの、いまだに来院だけでなく、連絡すら一度もありません。

他の動物病院で治療をしてくれていたらいいですが、それもなく放置され続けていたらと思うと胸が苦しくなります。

正直考えたくもないですが、重度の会陰ヘルニアで急変する危険性が極めて高い状態だったため、(生きているのかどうか…)と思ってしまいます。

もし生きていたとしても、排泄が困難になる等日常生活に支障が起きているはずなので、ポメラニアンは常に苦痛を感じているはずです。

さらにこのポメラニアンは、会陰ヘルニアだけではなく、去勢手術も受けておらず、ワクチン接種などの予防関連も受けてもいません。

ずさんな飼育と愛犬に対する愛情の薄さ、そして命の重さを感じていない飼い主に対しての怒りの気持ちと、苦しんでいるであろうポメラニアンを救うことができない悔しさが溢れてきました。

なぜ愛犬に対してここまで冷たくして愛情を注がないのか、助かる命を助けずに放棄するのか、私には全く理解できません。

まとめ

つらそうなポメラニアン

今回は、会陰ヘルニアのポメラニアンのお話をさせていただきました。

会陰ヘルニアは、去勢していない中高齢のオス犬になりやすい傾向があります。

初期段階であれば排便しにくくなる様子がみられ、重度になると今回のように肛門周囲が大きく膨れあがり、最悪の場合は膀胱も飛び出して排泄困難になり、命を落とす危険があります。

状態にもよりますが、年齢が若いうちに去勢手術することで防ぐことができるといわれれおり、生殖器関連の病気も予防することができます。

しかし予防関連も含め、治療も飼い主さん次第になってしまいます。

また飼い主は最期まで責任もって適切に飼育する義務があり、今回のように放置したり、ずさんな飼育は許されることではありません。

犬は、自分で飼い主を決めたり、運命すらも選ぶことができません。

犬を飼っている方、これから飼おうとしている方には、その責任の重大さや命の重さを改めて感じていただきたいと切に願って止みません。

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