私は動物病院で動物看護師として働いており、家では猫を飼っています。
猫ももちろんですが、犬も異物誤飲の事故が多く、飲み込んでしまった異物の大きさや摂取量などによっては命を落とす場合があります。
人間と一緒に暮らす以上、日常生活の至るところに危険なものがたくさんあるため、注意が必要があります。
しかしそんな中でも誤飲事故の原因の背景には、飼い主さんの注意不足が目立つように感じます。
今回は、飼い主さんの不注意さで何度も異物誤飲したヨークシャーテリアについて書きたいと思います。
置きっぱなしのチョコレートを誤飲
ある日私が働いている動物病院に、ヨークシャーテリアが来院してきました。
「テーブルの上に置いていたチョコレートを食べちゃった」
飼い主さんは焦る感じがなく、おっとりとした様子でした。
チョコレートは犬にとっては危険な食べ物であるため、私は緊急性が高いと判断し、すぐに獣医師を呼び、診察をはじめてもらいました。
診察の間、チョコレートを食べた時間やチョコレートの種類、摂取量などを飼い主さんに尋ねました。
「確か1、2時間くらい前だったと思うんですけど、ちょっと近くのコンビニ行ってる間にテーブルの上に置きっぱなしにしていたチョコレートを食べちゃったの」
幸い飼い主さんがチョコレートのパッケージを持参していたため、種類、成分量などを把握することができました。
しかし、なぜ外出時にチョコレートを片付けずにテーブルの上に置いたままにしたのか、理解できませんでした。
性格などにもよりますが、賢い犬の場合、柵を設けたり、危険物は高い所に置いたとしても、柵を倒したり、飛び越えたりして届いてしまう場合があります。
今回このヨークシャーテリアは、チョコレートを誤飲してから少し時間が経過していましたが、催吐処置をおこないました。
幸いにも、食べたのが中毒成分のテオブロミンの含有量が少ない種類のチョコレートで、摂取量も少なかったため、中毒を起こすことはなく一安心しました。
しかし異物を誤飲する多くの犬は常習性が高く、再び誤飲事故を引き起こしやすいため、飼い主さんにきちんと説明をしました。
その後も繰り返される誤飲事故
しかし、このチョコレートの誤飲事故からわずか2〜3ヶ月たった頃、その飼い主さんから再び1本の電話が…。
「もしかすると、プラスチック容器を噛み砕いて飲み込んでしまったかもしれない」
飼い主さんのお話では、気づいた時にはプラスチック容器に噛み砕かれた跡があったとのことで、実際に飲み込んだどうかは分からない、とのことでした。
本当に誤飲したのかどうかが不明なうえに、もし飲み込んでしまっていた場合どれくらいの大きさのプラスチックを誤飲したのかも分からない状態です。
その旨を獣医師に伝え、食欲や元気はあるとのことだったため、今後嘔吐などの症状がないかどうか様子をみるようにお伝えしました。
その数日後、再び飼い主さんから電話があり、やはり犬の便の中にプラスチックの破片が混じっていたとのことでした。
今回は便と一緒に出てきてくれましたが、場合によっては消化管に詰まる恐れがあるため、今後誤飲事故を起こさないように改めて飼い主さんに注意、説明をしました。
なぜか反省の色がない飼い主
今回のプラスチック誤飲を経験し、飼い主さんは愛犬のために生活環境の見直しや改善をしてくれていることかと思っていました。
しかしその矢先、そのヨークシャーテリアは再び、チョコレートやみじん切りした玉ねぎを誤飲してしまいました。
あれだけ説明したのにも関わらず、なぜ立て続けに誤飲事故を起こしてしまったのか…。
この飼い主さんのあまりの飼育管理の不十分さに、腹立たしさよりも悲しい気持ちになりました。
この件に関しても幸い誤飲したものは少量だったため、大事には至りませんでした。
けれども、もし大量に摂取してしまった場合、それが致死量を超えてしまえば愛犬が命を落とす危険性がじゅうぶんにあります。
私たち人間にとってはわずかな量だとしても、体が小さい犬、ましてやヨークシャーテリアなどの小型犬にとってはかなりの量に匹敵するのです。
ついうっかり…で済む問題ではないのは明らかですよね。
まとめ
今回は、チョコレートやプラスチック容器などを誤飲したヨークシャーテリアについて書きました。
誤飲事故は毎年発生しており、誤飲するものも様々です。
今回のようにチョコレートやネギなど、犬にとって中毒を引き起こしてしまう危険なものは、私たちが思っている以上に身近なところに存在します。
また多くの犬が室内で飼育されるようになったことで、家庭内での誤飲事故が増えています。
そのため、犬が届く場所に危険なものを置かないなど、今一度飼育環境の見直しや改善する必要があります。
事が起きてからでは遅く、最悪の場合は異物が消化管に詰まって腸閉塞を起こしたり、中毒成分により命を落とす危険性があります。
また、一度誤飲してしまった犬は、再び誤飲事故を起こしやすい傾向があるため、特に注意する必要があります。
愛犬が長い時間を過ごす身の回りに危険なものがないかどうか、改めて確認して環境を整えていただけたらと思います。