私は動物看護師として働いており、家では猫を飼っています。
犬に不妊手術をすることで、望まない妊娠を防いだり、生殖器関連の病気を予防することができます。
しかしその一方で、ホルモンの関係により太りやすくなってしまう場合も。
実際、不妊手術を受けた犬の多くに、体重の増加がみられます。
そのため、犬を過度に太らせないように、不妊手術の後は飼い主がきちんと食事管理をする必要があります。
今回は、何度も食事指導を受けているのにも関わらずついつい甘えさせてしまう飼い主と、そのせいで過度な肥満になってしまったミックス犬について書きたいと思います。
不妊手術を受けたミックス犬
私が働いている動物病院にシーズーのミックス犬が通院していました。
フレンドリーで人懐っこい性格の犬ですが、唯一の悩みが過度な肥満であることです。
オスということもあり、元々の体格は大きく、不妊手術前の体重が8kgありました。
個体差などもありますが、年齢がおよそ1才頃の体重や体型がその犬にとって適正な体重、体型になります。
犬は不妊手術をすると、ホルモンの影響で代謝が落ちたり、食欲が増すため太りやすい傾向があります。
人間同様過度に太ってしまうと、関節に大きな負担がかかったり、心臓病や糖尿病などの内臓の病気になりやすくなってしまいます。
そのため、不妊手術時には、犬を太らせないように食事に気をつけるよう、獣医師とともに飼い主さんに説明しました。
「そうなんですね~、分かりました〜」
飼い主さんはそう言っていましたが、本当に理解してくれたかどうか、正直不安な気持ちがありました。
実際その後のその犬の食生活は飼い主さん次第になってしまうため、ただ祈るしかできなかったのですが…。
徐々に増え続けていく体重…危機感さえ感じない飼い主
シーズーのミックス犬は不妊手術後、ワクチン接種などの予防関連で何度か来院してきました。
しかし見るだけでも前回より太っているのは明らかで、実際に犬の体重を測ったところ、やはりかなり増えていました。
「一応気をつけてはいるんだけど食欲旺盛でね、よく食べるのよ〜」
飼い主さんは一切悪びれる様子がみられませんでした。
ですが、このままどんどん太ってしまうと病気になってしまったり、健康を損ねてしまいます。
そのため、減量のために食事内容の見直しを必ずするように、飼い主さんに再度説明しました。
「はーい、気をつけます〜」
しかし飼い主さんの態度は変わりなく、平然とした様子でした。
さらに衝撃だったのが、診察が終わり、待合室で愛犬に向けた言葉でした。
「今日は頑張ったから、ご褒美でオヤツあげなきゃね!」
その言葉を聞き、ショックで頭の中が真っ白になりました。
数分前に診察室で説明したときは、その内容を分かったかのように言っていたのにも関わらず、我々の目前でこの発言です。
結局この飼い主さんは、病院の説明を理解していないどころか、理解する気がないようにしか思えませんでした。
いろいろと説明した病院側の人間としては、飼い主さんに嘘をつかれたような気持ちにもなりました。
この状態では、このミックス犬は今後どんどん体重が増えていくのではないか、肥満が原因で病気になってしまうのでは、と不安な気持ちになりました。
ただ私は、飼い主さんが愛犬の健康のためにも気づいてほしいと願うことしかできませんでした。
体重増加が止まらず過度な肥満に
しかし、このシーズーのミックス犬は、その後も減量どころか、その体重は増える一方でした。
元々8kgだった体重が約15kgに増えてしまい、「過度な肥満」になってしまったのです。
もはや愛情というのは名ばかりの虐待を受けているかのような太り方です。
「いやぁ〜、もうすっごく重たくてね〜」
倍以上くらい体重が増えてしまったことに対して、さすがの飼い主さんも気づいているようでした。
しかしその態度は以前と変わりがなく、飼い主さんからは少しも焦りや危機感を感じられませんでした。
このミックス犬がこの先も太り続けてしまうと、当然死亡する危険性が高くなり、最悪の場合突然死することもあります。
「分かってはいるんだけど、餌欲しがっちゃってね〜」
毎回減量を目的とした食事指導を説明していますが、飼い主さんの心に響いているかどうかは分かりません。
とにもかくにも、次に来院される時には、ミックス犬の体重が少しでも減っていることを願うばかりです。
まとめ
今回は、飼い主さんの自己管理の甘えや不注意さによって、過度な肥満になってしまった犬について書かせていただきました。
私たち人間と同様に犬も肥満になると病気になりやすくなり、健康を損ねてしまいます。
特に不妊手術を受けた場合はホルモンの影響で太りやすくなるため、食事に気をつける必要があります。
可愛い愛犬に注ぐ愛情でも健康を損ねてしまうことは良くありません。
早食い防止用のお皿に変えたり、知育玩具やフードボールを用いて満足感をあたえるなど、様々な工夫することができるかと思います。
日々愛情と思って愛犬にしていることが、はたして本当に愛犬にとって健康的で幸せなことなのか、一方通行なものではないか、今一度見つめ直していただけたらと思います。