ドッグ・エイジング・プロジェクトの新研究がスタート
アメリカのワシントン大学医学部と、テキサスA&M大学獣医学部が2018年に立ち上げた「ドッグ・エイジング・プロジェクト」という、犬のアンチエイジング研究のプロジェクトがあります。
https://wanchan.jp/column/detail/18108
犬の老化を研究するこのプロジェクトは、あらゆるサイズや犬種、年齢の一般の家庭犬3万頭以上が参加しているコミュニティ科学研究であることや、世界中の研究者がプロジェクトによって収集されたデータへのアクセス可能な点が大きな特徴です。
この度、ワシントン大学とテキサスA&M大学の研究チームにプリンストン大学の統合ゲノミクス研究所の研究者が加わり、科学ジャーナルのNature誌に新しい論文が発表されました。
長寿の犬と平均寿命の犬は何が違うのだろう?
犬は人間と生活環境を共有し、人間とほぼ同じ老化のプロセスを辿ります。
しかし、ライフサイクルは人間に比べてずっと短いため、犬の老化に関する遺伝的因子、環境的因子、ライフスタイルを特定することで、人間の老化をより深く知る機会を提供すると考えられます。
この新しい論文で言及されている中でも注目を集めているのは、人間で言えば100歳を超える犬の研究です。
プロジェクトに参加登録している犬の中から300頭の最年長の犬のDNAを配列決定して、非常に長命の犬のDNAと同犬種で平均年齢まで生きている犬と比較することが発表されています。
犬の中には時折20歳を超える長寿犬がいますが、どのような遺伝的差異が並外れた長寿に関連しているのかを特定することが期待されます。
犬の老化の進行状態を把握する指標を見つける
ご存じのように犬は同じ種の生き物でありながら、老化のスピードが犬種によって(主に体のサイズによって)大きな差があります。
同じ7歳であってもグレートデーンとチワワでは身体的な老化の進行度は大きく違うのに、老化を特定するバイオマーカー(老化の進行状態を把握する生理的指標)がありません。研究者は犬の老化のバイオマーカーの発見を目指しています。
犬は認知機能障害や白内障など、人間が経験するほぼ全ての老化による疾患を経験します。犬の老化を知ることは人間の老化を知ることにつながり、新しい治療法の開発などにつながることも期待されます。
ドッグ・エイジング・プロジェクトは数ヶ月以内に世界中の科学者と共有できる匿名化されたデータセットを開くことを計画しています。
老化の研究は裏返せば健康寿命の研究でもあります。研究によって犬の健康寿命が長くなり、人間の健康寿命にも貢献するとしたら、たいへん嬉しいことです。
まとめ
犬のアンチエイジング研究に携わる「ドッグ・エイジング・プロジェクト」が、今後の研究の方向や研究の成果の共有について発表したことをご紹介しました。
同プロジェクトの膨大なデータは世界中の科学者と共有されるので、もちろん日本の研究機関も含まれています。
犬が健やかに穏やかに今よりも少し長く生涯を送る研究が進んでいくとしたら、こんなに嬉しいことはないですね。プロジェクトの行く末に引き続き注目していきたいと思います。
《参考URL》
https://www.sciencedaily.com/releases/2022/02/220202111843.htm
https://www.nature.com/articles/s41586-021-04282-9