治療も望まれず愛されなかった『超肥満のダックスフンド』

治療も望まれず愛されなかった『超肥満のダックスフンド』

毎日たくさんのワンちゃんが動物病院に来院してきますが、肥満の症状が目立っています。実際に日本国内で飼育されている犬の半数以上が肥満とも言われています。肥満は私たち人間と同様に、様々な病気のリスクを高めてしまい、健康に大きく影響を及ぼします。今回は、減量の必要性を理解してくれないどころか、愛犬への愛情を感じられなかったダックスフンドとその飼い主さんについて書きたいと思います。

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私は現在、動物看護師として動物病院で働いています。

飼育されている多くの犬は小型犬で、かつ室内飼育ということもあり、肥満の割合が目立っています。

肥満になると病気のリスクを伴ったり、心臓や関節などにも大きな負担を与えてしまい、健康を損ねてしまう原因に繋がります。

肥満の原因のほとんどに、オヤツの与えすぎ過剰な食事量によるカロリーオーバーがあげられます。

今回は過度な肥満のせいで、早くに命を落としてしまったダックスフンドについて書きたいと思います。

過度な肥満のダックスフンド

肥満のダックスフンド

私が働いている動物病院ではトリミングサロンを併設しています。

動物病院併設のトリミングサロンのため、年齢が高齢だったり、持病で一般のトリミングサロンで断られてしまったような犬も受け入れています。

その中でも以前、定期的にトリミングに来ていたダックスフンドがいました。

この犬はかなりの肥満で、体重は10kg以上もありました。

「あーあ、重い重い!」

飼い主さんはそのダックスフンドを連れてくるたびにこのように言っていました。

私たち人間と同様に、犬も肥満になると関節に大きな負担がかかるだけではなく、循環器や呼吸器、糖尿病の発症リスクを高めてしまうなど様々な危険性を伴います。

また、犬種的にダックスフンドは胴長短足の体格から椎間板ヘルニアになりやすく、肥満も大きな原因の1つとしてあげられます。

トリミングの際に獣医師による一般診察をおこなうのですが、毎回飼い主さんに肥満に関する病気のリスクを説明し、必ず減量させるように伝えていました。

「はいはい、分かってはいますよ」

さすがの肥満体型に飼い主さんも自覚はあるようでしたが、減量に関しては諦めているような様子がみられ、病院側としては不安な気持ちでいっぱいでした。

減量の必要性を理解してくれなかった飼い主

ダックスフンドの肥満を飼い主に説明する獣医師

その後減量が進んでいることを期待していましたが、ダックスフンドの体重はいつになっても以前と変わりません。

普段どれくらいの量をあげているのか、犬の食事内容について獣医師とともに飼い主さんに聞いてみました。

「ドライフードだけど、それだけだと食べてくれないから茹でた鶏肉をトッピングしてるわ!量はちょっと分からないわね」

好きなようにあげている、という飼い主さんの発言に言葉を失いました。

また、家族の誰かがこっそり与えているかもしれないとも言われ、少し呆れてしまいました。

ダックスフンドの平均体重はおよそ5kg程に対し、10kg以上はかなり体重オーバー。

ぽっちゃり体型ならまだしも、ここまで肥満体型なのにも関わらず、減量に対して積極的な様子が全くみられず悲しい気持ちになりました。

このままでは突然死する可能性もあるため、再度獣医師とともに肥満に対する危険性と減量させるように説明をしました。

しかし私たちは説明や指導することしかできず、結局実際に実行するかどうかは飼い主さん次第になります。

その犬の将来のことを考えるとなんとか減量してほしいとただ願うことしかできませんでした。

リンパ腫の疑い…治療自体も拒否

病気のダックスフンド

その後も飼い主さんに減量の必要性について何度も説明はしましたが、食事内容の改善どころか全くダイエットをさせることはありませんでした。

しかしある日、そのダックスフンドの足の指が腫れているとのことで来院してきました。

明らかにボッコリと大きく腫れており、やや膿んでもいました。またいつもの元気さもなく、食欲もないとのことでした。

検査の結果、リンパ腫の可能性と診断。獣医師は良性か悪性か確定する病理検査と、手術の必要性があることを飼い主さんに説明しました。

「そうなんですねー。でもお金かかるし、病理検査も手術も結構ですわ」

手術どころか、治療自体も希望しないと発言した飼い主さんに唖然としてしまい、目の前で苦しんでいるダックスフンドの気持ちを思うと胸が更に苦しくなりました。

なぜ膿んで大きくなる前に早くに来院できなかったのか、治療に対しても受けさせないのか、全く理解できませんでした。

まとめ

ダックスフンド

その診察後、ダックスフンドは2度と来院することはありませんでした。

今から数年前の出来事ですが、いまだにふと思い出します。

愛犬に対してたっぷりの愛情を注いでくれることはとても嬉しいことです。

けれども、肥満は病気のリスクを高めてしまったり、関節に大きな負担をかけてしまうなど、健康に害を及ぼしてしまいます。

また肥満は人間と同様に麻酔リスクを高めてしまうため、体に大きなダメージをあたえてしまいます。

特に不妊手術後はホルモンの関係で太りやすくなるため、飼い主さんに説明しています。

体格や犬種などにもよりますが、成長期が終わる1才時の体重がその子の理想体重といわれており、生活スタイルなどによって代謝量や必要エネルギー量が変わってきます。

本記事をきっかけに、愛犬の食事やライフスタイル、そして健康について、今一度見つめ直していただければと思います。

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