動画はアニマルセラピーの代わりになるか?
セラピードッグに代表される動物介在療法が人々の心身の健康に良い影響を与えることは過去の複数の研究によって証明されています。
しかし、犬が入ることが許されない場所もあれば、アレルギーなどで犬に触ることができない人もいます。そのような場合、実際の犬の代わりに犬のビデオを観ることで同じような効果が期待できるのでしょうか。
カナダのライアソン大学の心理学の研究者チームが、犬の動画を観ることとストレス軽減の関連について実験を行い、その結果を発表しました。
ストレス解消や気分転換に動物の動画を観るという方も多いと思います。そのような自分の感覚の他に身体的な反応はストレスが軽減されたことを示したのでしょうか。
ストレスフルな作業の後に動画を観る実験
調査のための実験には女性78人男性25人の計103人が参加しました。参加者はストレスの多い作業を与えられました。作業完了後、参加者は5種類の動画のうちのどれかを視聴するようランダムに割り当てられました。
5種類の動画とはおもちゃで遊ぶアクティブな犬、静かに横になっている犬、森の中で速いペースで落ちる滝の風景、森の中でゆっくり流れる小川の風景、何も映っていない黒い画面でした。
つまり、「動」と「静」2種類の犬動画と、同じく「動」と「静」2種類の自然風景の動画、そして何も映っていない黒い画面は比較対照として用意されました。
これらの動画を観た後に、参加者は主観的な自分自身の感覚でストレス、不安感、その他ネガティブな効果、幸福感、リラックス度、その他ポジティブな効果が減少または増加したかどうかという質問票に回答しました。
さらに生理学的な変化を比較するため、作業の前後と動画を観た後の心拍数と血圧が測定されました。
動画による心への効果と身体への影響
参加者が回答した主観的な感覚では、犬の動画を観た人たちは自然の風景動画を観た人たちよりも、不安感が軽減しポジティブな効果が高くなったという結果が出ました。
また、黒い画面を観た人たちとの比較では犬動画を観た人たちは不安感が軽減し、幸福感とポジティブな効果が高くなったという結果でした。
ストレス軽減やリラックス度については動画の種類による有意な違いは見られませんでした。また、アクティブな犬の動画を観た人たちと静かに横たわる犬の動画を観た人たちの間に主観的な感覚の違いはありませんでした。
一方、生理学的反応を示す心拍数や血圧については、犬、自然風景、黒い画面を観た人たちの間に有意な違いは見られませんでした。
これらのことから、犬の動画を鑑賞することは本人の感覚において不安感の軽減や幸福感とポジティブな効果を高めるのに役立ち、その効果は自然風景の動画よりも高いと結論づけられました。
まとめ
ストレスフルな作業の後に、犬動画、自然風景動画、黒い画面を観てストレス軽減に役立ったかどうかを調査する実験で、犬の動画を観た人は不安感が軽減して幸福感やポジティブ効果が高くなったという結果をご紹介しました。
犬の動画を観ることはやはりストレス解消や気分転換に最適だと言えるようです。しかし、実際に犬に触れた時に心拍数や血圧が落ち着くような効果までは無いようです。
今後さらに研究が進んで、犬や猫など動物の動画と音楽の組み合わせなどで、その場に動物がいなくても効果的なセラピーができるようになることが期待されます。
《参考URL》
https://doi.org/10.1080/08927936.2021.1999606