私は、かつて動物病院で動物看護士として働いてました。
今回は、その時に体験した「なぜか病院に来ると食糞をしてしまう犬」のお話をしたいと思います。
朝になると必ずフンを食べ散らかしているビーグル
私が動物病院で動物看護士として働いていた際、病院がペットホテルとしてペットの預かりも行っていたため、健康な犬を預かることも多くありました。
そこで数か月に1回、とあるビーグルを数日間預かることがありました。
そのビーグルは飼い主さんのことが大好きで、預けられた直後は寂しそうにケージの中をうろうろとしていました、
しかししばらくすると落ち着いて、吠えることもなく過ごし、ご飯もきちんと食べ、排泄も問題なく行っていました。
しかし、ただ1点問題がありました。
なんとそのビーグルは、毎朝必ず「食糞」をしてしまっているのです。
スタッフが朝出勤すると、ケージの床だけではなく側面や、ひどいときには天井までフンが泥のように飛び散り、それ以外の残っているはずのフンはどこにも見当たらないのです。
ビーグルの口からはフンのにおいがするため、ビーグルが夜の間にフンを食べ散らかしていたことは明らかでした。
結局そのビーグルの食糞は1度だけではなく、預けられている期間毎朝、そしてその後も預けられるたびに繰り返されてしまいました。
そのため、どうにか改善できないかとスタッフの間で問題視されていました。
食糞の危険性
では犬の「食糞」にはどのような危険性があるのか、考えてみましょう。
そもそも人間ではなかなかないことなので、想像が難しいかもしれません。
また、あくまで自分自身から排泄されたものであるため、決して衛生的ではないものの、「危険」というイメージが結びつかない方もいらっしゃるかもしれません。
実際、母犬が子犬の排泄を促す一環で子犬のフンを食べてしまうことはごく自然なことですし、子犬のうちはそれを真似してフンを口にしたりすることもあります。
また、フードのにおいがまだフンに残っていた場合、興味本位で食べてみることもめずらしいことではありません。
しかし犬のフンは酸度がとても高いため、大人になってからも自分のフンを食べ続けることで胃腸炎になる可能性があります。
何よりフンを食べることが日常的になると、散歩中に他の動物のフンを食べてしまうことで、寄生虫や伝染病に感染するリスクがとても大きくなってしまうのです。
さらには、フンを食べた口で飼い主さんとコミュニケーションをとることで、飼い主さんへ寄生虫や伝染病を感染させてしまうという大きな危険性もあります。
食糞の原因と、ビーグルが改善するまで
食糞には、さまざまな原因が考えられます。
シンプルに人間の気を引こうとしている場合や、一度トイレを失敗し、怒られたことがあるからまた怒られないようにフンを隠したい、などの精神的な理由が原因の場合が代表的です。
ただその一方で、寄生虫などに感染してしまっていることで犬自身に栄養が足りていないなど、食糞をする犬の体にトラブルが発生している可能性もあるのです。
私が出会ったビーグルは病院で預かるときだけ食糞をしていたため、飼い主さんと離れたことの寂しさや、一人で慣れない場所にいることから、人間の気を引こうとしてフンを食べ散らかしていると思っていました。
獣医師と飼い主さんで相談した結果、病院へ預ける数日前からビーグルをかまう時間を少し減らし、寂しさに徐々に慣れたタイミングで病院へ預けるようにしていただきました。
そのような方法を続けることで、約1年間かけて無事に食糞をやめさせることが出来ました。
まとめ
食糞は、自分の大事な家族がフンを食べているという、とてもショッキングな行為かと思います。
しかしその行為には理由があり、また同時に大きな危険性や、犬の体にトラブルが発生している可能性もあります。
獣医師やドッグトレーナーへ相談し改善していくことで、犬だけでなく飼い主さん自身の安全も守っていただきたいと思います。