動物病院には様々な飼い主さんが犬を連れて来院します。私が動物病院で勤務していた間、まれにしつけが行き過ぎているな、と思う飼い主さんを見かけることがありました。
今回はその飼い主さんとのエピソードをお伝えしていきます。この記事を読んで、犬との接し方を少し考え直す機会になればと思います。
しつけに厳しい飼い主Mさん
Zさんは、ラブラドールを飼っている飼い主さんで「犬を飼うときに絶対しつけはしっかりしたい!」と思っていたそうです。
診察のときに獣医師に自分のしつけについての考えを熱く語ることも多かったようです。
「最近犬を飼っている飼い主たちは、しつけが中途半端すぎる」といった内容の話が多く、自分のしつけ法に自信があるようでした。
Zさんの犬はかなりのヤンチャ犬
Zさんは自分のしつけ論を語るのが好きな割には、飼っているラブラドールはなかなかいうことをきかない犬でした。
院内で、たびたび犬を怒鳴り散らすZさんの声が響き渡ってスタッフも困ってました。
「怒鳴ることで犬が委縮する」ことと「しつけができていること」は全くの別物です。
怒鳴られているときはただ怖がっているだけであって、何がダメでしつけられているかが犬にはまったくわかっていないのです。
そのため、飼い主さんが目を離すと院内におしっこしてしまったり、とにかくウロウロしてしまいます。
しつけ論で獣医と言い合いに
院内であまりに犬を怒鳴るので、しつけができていない犬に対してよりも、飼い主さんが本当に犬をかわいがっているのか、他の飼い主さんからも心配や不安の声が上がっていました。
診察室で飼い主さんと話す獣医師の声にも熱がこもります。
じっくりと話を聞くと、どうもZさんはどうしても犬のしつけがうまくいかない様子で、今までも獣医師に注意されては怒って転院しては動物病院を転々としているようでした。
愛情を持ったしつけとは
Zさんの言い分では「しつけは、まず悪いことをしたその場で罰を与えてわからせることを第一にしている」とのこと。確かにタイミングはとても大事だと思います。
しかし、犬への伝え方が罰を与えることになっていますので、犬がびっくりしてしまい、しつけというよりはただの暴言や暴力になってしまっていました。
委縮した犬は、覚えることよりも怖がるだけでうまくいきません。体の大きなラブラドールのためかZさんは余計に力でねじ伏せようとしたので、しつけを行う上で大切な信頼関係を持つことができないままでいました。
しつけの基本は信頼関係です。愛情が伝われば、おのずと犬はいうことをきいてくれるようになります。大切なことをしっかりと念頭においてしつけすることが大切です。
まとめ
暴言や暴力で犬のしつけをしようとしていたZさん…。
動物病院を転々とするのも嫌になったのか、獣医師と相性があったのか、その後根気よくしつけについてを診察室で獣医師からアドバイスを受け、心を入れ替えて接するようになったようです。
その結果、Zさんのラブラドールはしつけの行き届いたお利口さんになりました。なにより変化があったのはZさんの顔です。いつも怒った顔をしていたZさんは、犬に接するときの顔がとても優しくなりました。
和やかな犬との生活。しつけも楽しんでいくのが理想ですが、思うようにならなくていらだつときもあるかもしれません。そんなときは、一人で悩まず獣医師やしつけ教室にアドバイスを求めてくださいね。
今回の記事で、少しでもしつけについて見直してくださるきっかけになればと願っています。