私が動物病院に勤めていた時、問診や受付、入院室などあらゆる場面で飼い主さんと接する機会も多く「動物看護士という仕事は接客業だな」と、つくづく実感していました。
今回お伝えするエピソードは、愛犬のしつけの面で普段から考え方が合わないご夫婦のお話しです。
病院で大喧嘩
いつもプードルのKちゃんという愛犬を連れて診察に来られるご夫婦がいました。奥様が愛犬をとても可愛がっており、犬を飼うのも大変慣れていらっしゃる様子で、Kちゃんはとても幸せそうでした。
一方、ご主人のほうは犬を飼うのが初めてだったため、いつも少し不安そうな顔をしてました。何かわからないことがあると奥様がご主人に説明を補足する、という場面を何度か見ていました。
ちょっとした一言で言い合いに
犬が1歳になる頃には、体も成犬の大きさになってきます。そしてそろそろ体重管理が必要というお話をしている際に、奥様が「主人がおやつを与えすぎて困る」と言い始めました。
病院スタッフの前で指摘されたのが癇に障ったのか、いつも大人しいご主人が興奮気味になります。
ちょっとした言い争いなら診察室や受付でしはじめる飼い主さんもいますが、ご夫婦は睨み合っていたかと思うと急に病院中に聞こえるような大声で喧嘩しはじめたのです。
震えるKちゃん
怒りがおさまらないご主人は、ものすごい剣幕で奥様を責め立て、挙句の果てには止めに入った獣医師にも文句を言い続ける始末です。
奥様も一歩も引く様子はなく喧嘩はエスカレートし、診察台のKちゃんは怖くて震えあがっています。獣医師はそんな飼い主さんをどうにかなだめようと必死でした。
喧嘩の原因は
犬を飼うのが初めてのご主人とはいえ、ご本人なりにKちゃんを可愛がっていた様子でしたが、犬を飼うことに慣れている奥様は事あるごとに旦那様にダメ出しをし続け、Kちゃんを間にして家でももめることが増えていたそうです。
特に、しつけや食事のことなどご主人がネットで調べてくる提案に対し、奥様は「あなたは何もわかっていない」といつも上から目線。今回は、とうとう我慢の限界を超えてしまったようです
家族仲良く過ごしてほしい
病院スタッフには家庭内のことはわかりません。ただ、初心者でもベテランでも、「Kちゃん」を飼うのはお二人とも初めてなはず。
そのため知ったふりや思い込みを外して、きちんとお二人で話し合うようにお願いしました。
愛犬が潤滑油となって夫婦の関係性が良くなることもありますが、このご夫婦のようにトラブルの種になってしまうことも可能性としては大いに考えられます。
できれば家族である以上、協力しながら愛犬と楽しく生活を送ってほしいものです。
トラブルになりがちなこと
ここで犬を飼っていて家族間で「問題」になりがちなことをまとめてみます。
- 一方がおやつを与えすぎる
- 世話をする役割分担
- 寝る場所の問題
- しつけに関する意見の相違
おもに上記の内容でもめるのをよく耳にしました。家族の中できちんとルールを決めないと誰かが甘やかしすぎて、しつけたことが台無しになったりすることもあります。
また、「一緒に寝たい人とケージで寝かせたい人、散歩をするという約束事が守られていない、いつも夫婦の一方しかお世話していない」など、たくさんの不満が出てくることもあります。
幸せな犬との生活に欠かせないこと
家族で何か問題があったときにしっかり話し合いを行うのは、犬のことに限らず必ず必要なことだと思います。
相手の意見を尊重しあうことが大切です。犬のことだからといって主に世話をする人の意見だけが通るわけではなく、家族全員のことを考えてしっかりルールを決めましょう。
そして「犬は生き物で所有物ではない」ということも改めて頭に入れてほしいと思います。犬にとって何が幸せなのかを一番に考えてください。
飼い主さんがもめていれば、それは犬にも伝わります。暖かい気持ちで犬に触れ合うためにも、家族でトラブルになっていては元も子もない話です。
飼う前も後も、犬の成長とともに話し合いをもてるように環境をつくっていきましょう。
まとめ
今回は病院での大喧嘩した夫婦の仲裁に入った体験をもとに、犬がいるご家庭でトラブルになる可能性があること、また犬を飼う際のご家庭でのルール決めについてお伝えしました。
病院で大喧嘩していなくても、家でも大喧嘩はやめてあげてくださいね。人間の子供と同じで、大きな声が怖いと感じるのは当たり前です。トラウマになってしまっては可哀そうです。
もしご家族間で意見が合わない時は、獣医師に正しい知識を求めて相談するのもよい方法だと思います。