私は動物病院で動物看護士として働いていました。当たり前のお話ですが、動物病院にはケガや病気でたくさんのペットがやってきます。
その中でも冬ならでは…クリスマスに起こりがちな犬のトラブルについてご紹介していきたいと思います。
チキンに潜む危険
クリスマスイブやクリスマスの日に、家族でチキンを食べる家庭は多いかと思います。
しかし、食べ終えたチキンの入ったゴミ箱をペットがいたずらすることで、クリスマス後の動物病院は異物誤飲による受診が急増するのです。
鳥を狩ることを目的とした使役犬はいますし、家庭犬であっても普段食べているドッグフードにはチキンが原材料として用いられていることも多いです。ですから、クリスマスのチキンを食べてしまうことはあまり大きな問題ではない気がするでしょう。
しかしチキンそのものの成分が問題なのではなく、実は骨の部分に大きな危険があるのです。
チキンの骨は非常に折れやすく、犬が簡単に噛み砕くことができます。そのため、飲み込む際に食道に引っかかってしまう危険性や、とがった部分が食道や胃を傷つけてしまう危険性がかなり大きいのです。
印象に残っているケースが2件あるので、ご紹介したいと思います。
クリスマス当日に開腹手術となったトイプードル
あるクリスマスの日の夕方、一匹のトイプードルと飼い主さんが来院しました。
飼い主さんが家に帰るとゴミ箱をあさった形跡があったそうで、前日にチキンを友人と食べたため不安になって来院したとのことでした。
トイプードルの方はケロッとしており、見た目には何も症状がなく元気そうに見えましたが、レントゲンを撮るとやはり胃の中に鳥の骨のようなものが確認できました。
動物病院では通常、やわらかいものや丸みをおびたものの誤飲であれば、薬を用いて吐かせたり、便として出てくるのを待つケースもあります。
しかし鋭利な骨などの場合は、吐かせたり便として出てくるのを待つと、食道や胃腸を傷つけてしまう可能性が大きくなります。
内視鏡を用いて摘出することが出来ればよかったのですが、今回の場合は骨の数が多いうえ他の食べ物も胃の中にあったため、結局開腹手術を行うことになってしまいました。
手術で無事に骨は取り除くことが出来ましたが、飼い主さんにとってもトイプードルにとってもつらいクリスマスとなったに違いありません。
食道に穴が開いたビーグル
またクリスマスシーズンの別の日にも、同じようにチキンの骨の誤飲でビーグルが来院しました。
前日に家族で食べたチキンのゴミを出そうとした際に、ビーグルがチキンの骨に嚙みついてしまったとのことでした。
始めは飼い主さんも一大事だとは思っていなかったのですが、チキンの骨を噛み砕き、その骨がかなりとがっていたため慌てて引きはがそうとしたそうです。
しかしいきなり引きはがそうとしたため、ビーグルは骨を取られまいといくつか飲み込み、そのまま食道に引っかかってしまったようでした。
来院した際、ビーグルはしきりに咳をしており、だらだらとよだれをたらして苦しそうにしていました。
急いでレントゲンを撮り、骨が引っ掛かっている場所を確認のうえ内視鏡での摘出となりました。しかし摘出はできたものの、とがった骨のせいで食道に穴が開いてしまっていたのです。
結局ビーグルはその後、胃にチューブを取り付け直接栄養を送り、しばらくは口から食事をすることができませんでした。もちろん年末年始も家族とは過ごせず、病院に入院することになってしまいました。
まとめ
異物誤飲は飼い主さんと動物にとって身近に潜む危険であり、クリスマスや年末年始はさらにその件数が急増します。
動物たちが口にしてしまいそうなものの管理を徹底してください。その上で「ちょうだい」や「出して」など、危険なものを口にしてしまったときに返してもらうことが出来るようトレーニングをしておけば、万が一のときに備えることが出来ます。
楽しい思い出が辛い思い出に変わってしまうことのないよう、気を付けてもらえればと思います。