私は動物看護師として動物病院に働いています。日本では飼っているペットの第一位に犬ということもあり、毎日たくさんのワンちゃんが動物病院に来院してきます。
しかし、多くがペットショップなどで「可愛い」「一目惚れした」と衝動的な気持ちで飼ってしまい、犬種や属しているグループによる性格や特徴について知らないのが現状です。そのため飼ってから「しつけ」などの飼育上の問題がよく起きています。
その中でも「犬種の特徴」を知らずに飼ってしまい、手におえなくなったジャック・ラッセル・テリアと高齢のご夫婦について今回お話ししたいと思います。
ジャック・ラッセル・テリアと高齢のご夫婦
ある日、高齢のご夫婦が子犬のジャック・ラッセル・テリアを飼い始めたとのことで動物病院に来院してきました。私自身ジャック・ラッセル・テリアをみる機会がほとんどなく、かつ飼い主さんが高齢のご夫婦だったため、なぜこの犬種にしたのかと気になりました。
特に犬種について全く知らずにペットショップで購入したとのことでした。しかもお話しを伺うと犬を飼う自体、今回が初めてだったのです。
来院当初はまだ子犬で成長期だったため、周囲をキョロキョロしたりと興味深々で人懐っこいワンちゃんでした。自分から近づいてくるなど私たちスタッフに対してもフレンドリーに接してくれました。
ですがジャック・ラッセル・テリアは狩猟犬としての歴史をもつことから非常に活発性で運動量が多く、強い頑固な性格の特徴があります。
特にこの成長期は犬にとって社会性を学ぶ大事な時期でもあるため獣医師とともに、しっかりとしつけを行うようにご夫婦の飼い主さんにアドバイスをしました。
「しつけが可哀想でできない」とアドバイスを無視
その後、混合ワクチン接種などの予防関連や診察でそのジャック・ラッセル・テリアのワンちゃんは何回か来院していました。しかし来院するにつれて段々と嫌がるようになり、お家での様子やしつけなど飼育に関してどうしているのか聞いてみました。
予想していた通りしつけを行っておらず、好きなようにさせてあげていると言われました。正直、このワンちゃんが今後大人になった時に誰も手にだせない狂犬へとなってしまうのではないかと不安な気持ちになりました。
そしてその不安が的中するかのように、成長期が終わる生後半年頃から、ご夫婦の飼い主さんの言うことを全く聞かないどころか、噛み癖が目立つように…。
そのためワンちゃんには不妊手術を行いましたが、、それでも性格はまったく変わらず些細なことでも噛みつこうと、さらに強く抵抗するようになってしまいました。
攻撃的に噛みつく狂犬へと変貌し、手に負えない状況に
子犬の時期は人懐っこかったジャック・ラッセル・テリアのワンちゃんでしたが、大人になる頃にはご夫婦の飼い主さんだけでなく私たちスタッフに対しても噛みつくようになりました。
そこで飼い主さんは信じられない言葉を発したのです…。
まるで全て犬が悪いと言っているように聞こえ、なぜあれほど言った「しつけ」の大切さやアドバイスを無視したのかと疑問に思いました。完全に犬の方が優位な立場になっていることを飼い主さんは全く理解しようともしませんでした。
その結果飼い主さんに対して攻撃的になってしまい、診察をしたくても大怪我をする危険性からできなくなってしまったのです。
そして終いには、
と言うのです。こうしてジャック・ラッセル・テリアのワンちゃんは、手に負えない噛みつく狂犬へと変貌してしまいました。
まとめ
それ以来、あの高齢のご夫婦の飼い主さんとジャック・ラッセル・テリアのワンちゃんは一度も来院ありません。連絡も一切なく、今もちゃんと飼育しているのかどうか不安な気持ちになります。
なぜなら、中には手に負えなくなって手放してしまう人もいるからです。また、実際に飼ってみて思っていたのと違い安易に捨ててしまうケースが後をたちません。
一度でも傷ついた心は簡単に癒すこともできず、とても長い時間がかかります。傷ついた心の深さやその悲しみは計り知れません。
特に犬は、犬種や属しているグループによって性格や特徴が大きく異なってきます。飼う前に「犬という動物、そして犬種について知り飼育することができるのか」ということをしっかり考えてほしいと思います。