私は現在、動物病院で動物看護師として働いています。年々犬の平均寿命が伸びており、高齢犬の来院が増えてきています。ワンちゃんも私たち人間と同様に歳をとれば認知症になったり、足腰が弱くなっていきます。
その中でも強く印象に残っている「介護が必要な高齢犬」を見放した飼い主さんについて今回お話ししたいと思います。
介護が必要な高齢の大型犬
以前、推定10才近い高齢の大型犬が動物病院に通院していました。
およそ大型犬では6〜7才ぐらいからシニア期といわれています。このワンちゃんは推定の年齢ですがとても長生きしていたと思います。
診察中に飼い主さんは夜中の徘徊や夜鳴きで困っていると言いました。
高齢になればなるほど人間と同じように足腰が弱くなったり、朝と夜の区別がつかず昼夜逆転となり、徘徊や夜鳴きといった認知症の症状がみられるようになる。
年齢や行動の変化から認知症と疑い、円形状のサークルや床ずれ防止のマット、場合によっては薬の投薬もあるなど日常生活に工夫するように獣医師とともにお話しをしました。
と、一方的に預かってほしいと言われましたが、家族間でうまくサポートできないのかと思いました。
話し合いをしましたが飼い主さんの態度は変わりなかったため、期間を1週間とし、そのままワンちゃんをお預かりする事になりました。
家族間で意見が分裂「引き取れない」
約束の1週間後、お預かりしていたワンちゃんは家族の元へ帰るかとスタッフ全員が思っていました。しかし…
約束と違うことも含め再度獣医師とともに話をしましたが、全く聞き入れず無理との一点張り!
預かっている間、高齢のワンちゃんは悲しそうな声で何度も鳴き「家族を探している、寂しい」と、私にはそう聞こえ辛い気持ちになりました。
私が勤務している動物病院は小さな病院でスタッフ数も少ないため、サポートをしたくても限界がありました。
今回は特別に預りを延長するが、飼い主さんに改めて今後高齢のワンちゃんをどうするのか、しっかり家族と話し合うように強く伝えました。
お家に帰れる事できず、行先は…
高齢のワンちゃんを預かってから2週間近く経過しました。大型犬ということもあり認知症の進行がだんだんと進んでいきました。
夜鳴きや徘徊する頻度が増えたり、自力で立ち上がることも不可能となり、食事や飲水もスタッフ2〜3人がかりで支えなくてはいけませんでした。
さすがに預かっている期間が長いため何度か飼い主さんにも面会に来ていただき、認知症の進行や足腰の筋力の低下などにより介護が必要な状況だと話しました。
しかし「そうなの。ふーん」
依然として飼い主さんの態度は変わりないどころか、まるで他人事のように聞こえ、とても悲しい気持ちになりました。あなたの愛犬なのに、今この寂しい辛さを理解しようとも思わないのかと感じました。
挙句の果てには、
なぜこの長い時間の間にも関わらず家族で向き合って話していないのか理解できませんでした。
ちゃんと家族でしっかり話し合うように再度伝えましたが、後日再び面会に来た時に言われた衝撃さは未だに鮮明に覚えています。
高齢のワンちゃんは一度も大好きなお家に帰れることはできず、そのまま老犬ホーム行きになってしまいました。ただただ泣きたくなるような気持ちと、お家に帰って家族と過ごす時間もないのかと思いました。
犬の高齢化
飼い主さんの不理屈な理由などで高齢のワンちゃんを1ヶ月以上も預かったうえ、結局老犬ホームに行くことになってしまったわけですが、その後飼い主さんから様子や状態の経過も含め全く連絡はありません。
あれから何年か経ちますが、その後はどう過ごしていたのだろうと考えるときがあります。
将来のことを考えて現在犬を飼っている人、これから犬を飼うか検討している人に守ってほしいことを以下にまとめてみました。- 病気になった時に治療費を払えるのか、適切な治療を受けれるのか
- 最期までしっかりお世話をし看取る覚悟はあるか
- 家族全員が同意を得ているのか
- 苦痛やストレスなく安全に生活できる飼育環境が整っているか
- 介護が必要な時、家族間でサポートできるのか
- 単身や高齢者の方は何かあった際に犬をどうするのか考えて決めること
まとめ
犬を飼う理由は人それぞれですが将来病気になってしまったり、介護が必要になったりと先のことも考えて最期までしっかりみれるか考えなくてはいけません。
もちろん場合によっては、今回のように老犬ホームを活用する方法もあります。しかし短期間なのか、それとも一生涯なのかによっても話が変わってきます。
大事な家族の一員だからこそ、今後病気になったとき、介護が必要なときにどのようにしてあげるか、今回のお話を通して将来としっかり向き合ってほしいとそう願っています。