皆さんは、ご自身の飼っている犬猫が入院して治療をしたことがありますか?
体調が悪い上に、家以外のところに預けられることはペットにとって大変ストレスになります。ただし、輸液やこまめな検査が必要であった場合は、病院側も入院治療を行ったほうが良いという判断の上で入院をお勧めします。
そして、ある程度症状が安定するなどの状態になれば、当然ご自宅で様子を見ていただくのがペットにとって良い環境になります。
今回は、私が動物病院勤務時代に、大変身勝手だと感じた飼い主さんのお話をします。
このお話を読んでいただいた飼い主さんが、少しでもペットへの責任についてをしっかり考えてただけるきっかけとなれば良いと思っています。
「玉ねぎを食べた」で来院して入院
その飼い主さんが連れてきた犬はミニチュアダックスフンドのMちゃん。愛らしいお顔の女の子で、飼い主さんもとてもかわいがっている様子でした。
体調が悪い感じはなさそうですが、飼い主さんのお話では「留守中に玉ねぎをかじったみたい」というのです。その量なんと玉ねぎ丸々1個!
食べたという量は、小さな体のMちゃんにとって大変危険な量でした。
Mちゃんの入院
玉ねぎを大量に食べたとのことで、病院側は「食べた量が多いので、急に中毒症状が出れば命の危険がある」ことをお伝えし、様子に変化があれば、すぐに連れてきていただくようにお話ししました。
すると、飼い主さんから「入院させてほしい、不安だし何かあって対応が遅くなったらと思うと心配なので預かってほしい」との相談を受けたので、結局Mちゃんには入院してもらうことになりました。
確かに、玉ねぎ中毒の場合は、その日にすぐに症状が出ずに後日中毒症状が出ます。不安な気持ちも十分に理解して、お預かりし様子を見ることにしました。
無事に退院できる状態に
数日様子を見るうえで、玉ねぎ中毒の症状がどのような状況かを血液検査して診断したり、便の様子などを昼夜問わず看護師は観察します。
結果、Mちゃんはお腹を壊し下痢が2日続きました。その様子については、飼い主さんも電話で病院側から説明を受け確認してくださっていました。
そして下痢の症状も落ち着き、それ以上に貧血などの様子も見られないので、退院可能であることを飼い主さんに伝えました。すると「すぐには迎えに行けない」という答えが返ってきたのです。
お迎えに来れない驚愕の理由
飼い主さんは、玉ねぎをMちゃんが食べてしまった翌日から出かけていたということなのですが、一体何をしていたのか?
実は「愛犬が入院して治療している間に旅行に行っていた」そうです。
病院側は「心配なので預かってほしい」という飼い主さんからの希望で入院をしてもらったのですが、結果下痢の症状もあったことから、入院の判断自体は間違っていませんでした。
しかし、症状もよくなって本当に良かったと安心している一方で、まさか飼い主さんが入院中に旅行に行っていたとは…。正直、驚いて獣医師も看護師も言葉が出ませんでした。
預かってほしかった本当の理由は「旅行」だったわけです。しかも、退院のお迎えにいけない、といって退院可能日からさらに3日間も預かってほしいという希望でした。
「病院はペットホテルではない!」
獣医師は「病院はペットホテルではないです!」と強い口調で飼い主さんにお話ししました。
しかし、旅行先で電話を受けている飼い主さんは、料金は払うので預かってもらうことは悪いことではないと思っている様子でした。
飼い主さんは結局、旅行を楽しんだあとMちゃんをお迎えに来て、Mちゃんは久しぶりの再会に尻尾をブンブン振り回し、喜んで飼い主さんに飛びつきました。その様子を、スタッフはとても複雑な気持ちで見ていることしかできませんでした。
あまりにも身勝手な理由でなかなかお迎えに来ない飼い主さんの主張を、スタッフ一同とても悲しい気持ちで受け入れるのみ…。
そもそも、その病院はペットホテルをしていないですし、日々治療のために戦っている獣医師がいます!
そして病気がよくなって帰ってくるのを待っている飼い主さんがいて、頑張っている犬猫がいる場所です。
飼い主さんと一緒に安心して暮らせるようになり、笑顔で過ごしてくれることが何よりのやりがいなのです。
まとめ
いつもペットは人間の生活に寄り添って、癒しを与えてくれます。飼っているうえでとても大変なことも多いとは思います。
しかし、「飼い主さんがいなければ生きていけない生き物」であると再度念頭におき、身勝手な理由で都合よく扱ってはいけないと考えてほしいのです。
この体験談を通してお伝えしたいのは「飼い主さんの責任とは何か?」ということです!
いろいろな事情があることも理解はできます。でも責任感をもって、できるだけ「家族の一員であるペットと一緒に幸せになっていってほしい」と心から願ってます。