今、警察犬が不足しています。
増加する認知症高齢者の行方不明数
警察犬と言うと、逃走する犯罪者に飛び付いて撃退したり、その優れた嗅覚を活かして犯罪解決や行方不明者の捜索の手掛かりを見つける為に協力するなど、警察官のパートナーとしてなくてはならない大切な存在とされていますよね?
そして近年では、認知症などによる高齢者が行方不明になってしまう数が増加した事と平行して、警察犬の出動件数が2014年の時点で全国で9329件と、2005年から34%も増えているんです。
減りつつある警察犬
しかしその一方で、警察犬の数は2014年の時点で1351頭と過去10年で最も少なくなってきているので、行方不明者の捜索に追い付いていけないという困った事態に陥っています。
では、一体なぜこのような事になってしまったのでしょうか?
理由は手間と指導者不足だった!
飼い主及び訓練業者でつくられた「日本警察犬協会」の方の話にによりますと、警察犬に育成する指導手さんの数が減少してしまっている為に嘱託犬が減っているのだそうです。
(嘱託犬については後ほど説明します)
なぜなら、ワンコを警察犬に育てていくのには1年半~2年の期間がかかりますし、その間に訓練業者に支払う費用や餌代は月5万円から7万円、更に訓練を終えて警察犬に認定された後も、トレーニング代やご飯代などで月2万円といったコストが発生するのも原因のひとつだとされているからなんです。
うちのわんこも警察犬になれる!?
では次に、自分の愛犬を警察犬にしてみたいと考えている方が気になってくる疑問を解説してみたいと思います。
警察犬になる為にはどうするの?
直轄犬と委託犬の違いは?
警察犬は2種類に分かれています。
各都道府県の警察が所有し、犬の管理や飼育に徹底した訓練まで行なって3交代勤務で働く警察犬を「直轄犬」と言います。
それに対して一般の人が育成や訓練をしたのち、警察からの出動要請に応じて働く警察犬を「嘱託犬」と言います。
因みに現在活躍している警察犬が約1500頭いる中で、嘱託犬が約9割を占めると言われているんです。
嘱託犬までの道のりは?
自分の愛犬を嘱託犬にする為に一番スタンダードな方法が、各地にある警察犬の訓練学校に入学させる事です。
そこで初等の訓練からスタートさせていき、そして徐々に中等訓練、そして高等訓練へと進んでいきます。
因みに初等及び中等訓練までは警察犬として特別な事をするわけではなく、この段階でシッカリとした基礎を教えこんでもらい、そこをクリアしてから改めて警察犬になる為の高等訓練へと進んでいくんです。
そして全ての訓練が終了した後に、優秀とされたワンコだけが年に1回行われる各都道府県警察主催の審査会に出場できます。
審査会場では、実際に起こりえる事件を想定した科目を出題され、出場したワンコ達は訓練の成果を競っていくことになります。
そして受験した中でも特に優秀な成績を収める事のできたワンコが選ばれて、ようやく嘱託警察犬として認められるんです。
ただし嘱託警察犬の任期は1年間のみで、更新する為には任期満了後に再び審査会に出場しなくてはいけないんです!
どんな訓練をするの?どれくらいの訓練期間があるの?
訓練の主な流れを①から⑤の順番で分かりやすく説明していきます。
- その子に適正があるのかを見極めるテスト期間をもうけます
- 合格したら基本の躾や指導者やパートナーに対する服従訓練をします
- 特定の人間の歩いた足跡を丹念に追い求めるようになれる為の足跡追及訓練をしていきます
- 選別台に置かれた特定の臭いを嗅ぎ分ける為の臭気選別訓練を学びます
- 抵抗する為に吠えたり相手の腕を噛みつかせたりする犯人警戒訓練を行います。(この光景は警察犬を紹介する番組等でよく見ますね!)
①から⑤までの訓練をクリアしてから上級検定合格になれます。
そして期間ですが、審査会に出場できるレベルまで達するには最低でも1年から2年間を必要とします。
なれる犬種や適性年齢の制限は?
現在の日本では直轄の警察犬として指定されているのは、
- ジャーマンシェパード
- ラブラドールレトリバー
- ゴールデンリトリーバー
- エアデールテリア
- ボクサー
- コリー
- ドーベルマン
の7犬種とされていますが、嘱託犬の場合だとトイ・プードルやミニチュアダックスといった小型犬でも採用されている例があります。
そして警察犬として働ける適正年齢は体力面の関係から、2歳から10歳までが理想と言われてます。
因みに我が家の愛犬は後少しで10歳になるので、訓練期間を含めると残念ながら難しいですね。
嘱託犬の出動はいつくるの?
基本的に嘱託犬は事件が発生と共に要請がかかるので、いつ出動するのか分かりません。
なので飼い主さんはいつ要請が来ても対応できるように、ワンコの体調の管理やトレーニングをしておく必要があります。
嘱託犬の報酬はどれくらい?
捜査協力の際の報酬は、都道府県により異なりますが1時間の出動時間で約3000円から5000円程度になります。
冒頭にも少しお話ししましたが、嘱託犬の数が減少しているのは育成や維持する費用に対して報酬が少ないのも関係しているんです。
まとめ
認知症を患った高齢者の数が増加した為に、嘱託犬と呼ばれている警察犬の出動要請が多くなってきていますが、それとは相反して育成にかかる期間と費用に伴わない報酬しか手に入らないといった原因から嘱託犬の数は減少しつつあります。
この事情を知って、改めて日本は高齢化が進んできたのだのだなぁと思い知らされました。
だからこそ大事な担い手となる嘱託犬を増やすためにも各都道府県は、報酬額の見直しや維持費の補助をしていくべきなのではないでしょうか?