ケージは「おしおき部屋」ではありません
本来は犬にとって落ち着く寝床であり、自分だけの守られたスペースであるべきケージ。でも、まるで犬の「おしおき部屋」のように、犬を閉じ込めるための部屋として使用している飼主さんはいらっしゃいませんか?
こうしたしつけ方法をされている方は思った以上に多いのですが、先に申し上げますと、実は犬にはなんの効果もありません。そればかりか、ケージ=(イコール)閉じ込められる場所だと犬が覚えてしまい、益々ケージに入りたがらなくなるという悪循環に転じてしまうことがありますので要注意です。
では、正しくケージを教えた場合の役割、効果を見てまいりましょう。
ケージの持つ役割、その1
ひとつめの役割は「寝床」。あなたは犬の寝床をどんな環境にしているでしょうか。人のソファー?人と同じ布団? 犬は人の子供のようなしぐさをすることが多いですから、私たち愛犬家はついつい犬を人の子と同じように扱いがちになります。
その気持ちは異種である人と犬との関係性が深まったひとつの証とも言えますが、やはり犬の持って生まれた本能的に求める習性というものがあります。犬が落ち着く寝床とは、清潔であること。また、ちょっぴり薄暗く、周りが囲われているスペースだと言われています。
これは、犬たちがまだオオカミだった太古の時代に染みついた防御本能に由来しています。彼らは、別の群れによる背後からの襲撃を避けるため、洞窟を寝床としていました。こうしたことから現在の犬たちにおいても、寝るときは本能的に落ち着けるケージを使用することは犬の情緒の安定にもつながり、深い眠りをもたらす役割があると言えますね。
ケージの持つ役割、その2
2つめの役割は「自室」。いつもは広いお部屋の中を縦横無尽に行き来している犬でも、自室としてのケージ内で過ごすことが求められるシチュエーションもあるでしょう。例えば、犬が苦手だという来客があるときなどがそれにあたります。
また、小さなお子さんがいらっしゃるご家庭では、お子さんから犬への好き好きアプローチが激しすぎるために、犬の方が小休止したい気持ちになる場合があります。そんなとき、誰にもじゃまされずないスペースとしてケージがあれば、犬はそこで休憩が取れますね。
自室としてケージ利用を犬に教えるときに絶対にしてはいけないのは、犬が嫌がっているにも関わらず無理やり閉じ込めること。では、どのようにすれば、上手く覚えてくれるのでしょうか。それについては下のまとめ項目に記載していますので、どうぞご覧になってみてくださいね。
ケージの持つ役割、その3
3つめの役割は「危険から身を守る」。はて?なんのことかな?と、思われた方もきっといらっしゃいますね。分かりづらいかもしれませんが、実はこれがすごく大事。
例えば犬は飼主さんと一緒に車で移動することがありますね。考えたくはないですが、万が一、思わぬ交通事故に巻き込まれてしまったと仮定します。車両の事故ですから、大なり小なりの衝撃を受けざるを得ません。その際、人はシートベルトやチャイルドシートがダメージから一定程度守ってくれますが、犬はどうなるでしょうか。
よく聞くのは、衝撃で開いたドアから身を出し、パニック状態のまま逃走してしまうケースです。そうなれば、探し出すのが困難などころか、犬は再び事故やケガに見舞われることも考えられます。そうした予期せぬ事態に備え、車での移動時はケージを利用するのを心がけたほうが良いですね。
また、台風や地震などの災害に見舞われた場合のことも、わたしたち日本人は常に意識をしなければなりません。犬にケージが安心できるスペースだと教えておくことで、避難場所での不安を少しでも取り除いであげたいですね。
まとめ
最後に「ケージの持つ役割、その2」でお話しした、上手なケージトレーニングについてお伝えします。成功へのキーワードはこちら。「うれしい、楽しい、大好き」です。
まるで人気歌手の歌のようですが、これは紛れもなく、犬のケージトレーニング成功への呪文のようなお約束。このトレーニングの肝は、ケージにネガティブなイメージを植え付けないことにあります。ですから、ケージの中はいつでも清潔にし、寝心地の良いベッドやマットを置きます。
薄暗い空間を作るために、ケージの半分程度を上から布で覆うのがおすすめです。食べるのに時間のかかるおやつや、夢中になれる知育おもちゃをあらかじめ用意し、「ハウス」という明るい掛け声とともにケージに誘導します。
最初は短い時間から始め、徐々に長い時間にチャレンジしていきましょう。尚、幼い時期に始めるのが最も良い方法ですが、成犬、シニア期でも教えることは十分可能です。犬との生活にケージを上手に取り入れ、より快適な毎日をお過ごしくださいね。