犬の耳が感じる周波数
犬は人間よりはるかに耳が良いとされています。これは人間と犬の可聴域(聞くことができる音の周波数の範囲)が異なるからです。
人間の可聴域は20Hz~20000Hzといわれており、加齢とともに高い周波数から聞こえにくくなっていきます。
よく「若者に聞こえる音」として有名なモスキート音ですが、これは18000Hzほどの高音で、20代を過ぎると徐々に聞こえなくなっていくそうです。60代頃になるとその半分の9000~10000Hz程度までしか聞き取れなくなっていきます。
これに対し犬の可聴域はおよそ60Hz~50000Hzといわれています。人と比べて、低音はそれほど差がないものの、随分と高い周波数の音を拾えるんですね。
この可聴域の差を利用して、犬にしか聞こえない音で指示を出す道具が「犬笛」です。
犬笛の周波数は約30000Hzとのことで、人には聞こえないのですが犬の耳にはちゃんとキャッチできる音であるため周りに気づかれないように指示を出すことができるのです。
犬が怯えてしまう音
犬は人間には聞こえない様々な音を聞き分けることができ、その音と経験を組み合わせて学習していきます。
おやつの袋を開ける音がしておやつをもらえると、「カサカサ」という袋の音に大喜びするようになりますし、リードの金具の音がするとお散歩に行くということを覚えれば「チャリン」という音に反応して玄関に突進するようになったりします。
このように大好きな音を覚える犬ですが、もちろん「怖い音」も覚えます。
犬にとって嫌いな音は「恐怖を催す音」でしょう。その恐怖には先天的に感じるものと、経験からくる後天的なものの2種類があります。
先天的に怖い音
- 雷、花火
- 金属が打ち合う音
- 大型トラックや電車が通過するときの音
これはかなり多くの犬に見受けられるもので、特に全身を震わせるような大きな炸裂音や極端に高い金属音などです。
自然界でこの音を近くで聞いたら身の危険を感じるような音なので、人間でも苦手だという方も多いのではないでしょうか。
これらの音を聞いた時の犬は恐怖感からパニックを起こすこともあります。
後天的に怖い音
- ドライヤー
- 掃除機
- インターホン
- 宅配のトラックやバイクの音
- モーター音
これらは経験によって「嫌い」「怖い」と認識されやすい音です。
これらの音が聞こえたときやその直後に怖いことや嫌なことを経験すると、犬は音と出来事を結び付けて学習します。
例えばドライヤーですが、苦手なシャンプーをされたあとに凄い風と共にモーター音を浴びせられたら犬だってたまったものではありません。嫌がって逃げれば叱られますし、その嫌な経験とドライヤーの音を結び付けて「怖い音」と覚えてしまうのです。
また宅配のトラックやバイク、インターホンの音などは、自分の縄張りに無遠慮に入ってくる「侵入者」の音として認識します。
その際に怖くて吠えると、例え用事を済ませた宅配のバイクが去ったとしても犬にとっては「追い払った」という経験をすることになり、「怖いから追い払うために吠える」という行動を強化してしまうことになります。
改善方法
犬にとって先天的に怖い音というのはもうどうしようもありません。その恐怖心を増してパニックを起こしてしまうことがないように、なるべく聞かせないようにするのが一番です。
花火があるときは聞こえないように距離をとったり、テレビなどの音で工夫してあげたりするのも一案でしょう。
工事現場や大型のトラックなどが通らない道を歩くよう、事前に散歩ルートをよく確認してあげることも大切です。
苦手な音は遠くから、少しずつ慣れさせてあげると苦手意識が少しおちつくこともあります。しかし無理をさせずに、ゆっくり根気よくすることが重要です。
また、雷など突然の音に襲われた場合は、その時に可能な限り犬のパニックを和らげてあげましょう。
飼い主が近くで安心できるように穏やかに過ごしてみたり、逃げ込める安全なスペース(クレートやハウスなど)を用意してあげるのも良いでしょう。
後天的に怖い音の場合、音と嫌な経験を組み合わせて学習しないようにすることが大切です。
嫌な出来事があったときに「音がしたら嫌な出来事があった」で終わらせないように、音から開放されたときにおやつをあげてみましょう。
我慢したらちょっぴり良い出来事があったという経験を積むことで、少しずつ音を怖がらなくなる練習ができます。
まとめ
多くの犬の場合、先天的に怖がる音が決まっています。また個体差や経験差も苦手な音、怖い音に関係しています。
さらに、人より耳が良い犬は、人間が感知できない音にも敏感に反応しますので、人にとって何ともない環境でも犬にとっては苦手な音が聞こえているかもということを忘れないでいてあげることも大切です。
音に対する反応のトレーニングは根気が必要です。怖い音がしてもここは安心できるという場所を作ってあげたり、音が怖いものではないということを少しずつ教えてあげてくださいね。