体の構造や習性が異なる動物種が一緒に暮らすということ
私たち人間は、五感のうちの約8割を視覚から得ています。
しかし、犬にとって視覚が五感の中に占める割合は2割程度でしかなく、嗅覚が4割、聴覚が3割程度だと言われています。
このように同じ空間で暮らしていても、愛犬と飼い主さんでは感じている世界に大きな開きがあるようです。
飼い主さんが愛犬の立場に立ってストレスフリーな生活環境を作ることが、お互いに快適に暮らしていくための秘訣だと言えるでしょう。
そこで今回は、犬にとって辛いと感じる生活環境にはどのようなものがあるのかについて、ご紹介します。
犬がストレスを感じる要因を知る
犬がストレスを感じる要因
犬は、食べる、休む、寝ることに支障が生じたり、周囲の人や動物たちとの関係がうまくいかないと感じることで、ストレスを感じます。その中には、自分自身の体調に不安を感じることも含まれています。
この「食べる、休む、寝る」ことは、犬にとって「生きる」ことを意味しています。
実際にはこれらに何の問題がなくても、「上手くいかないのではないか」という不安を感じることでストレスになるという点に注意が必要です。
つまり、繊細で怖がりな性格、警戒心が強い犬、甘えん坊な犬は不安を感じやすいと意識した方が良いでしょう。
また、飼い主さんと犬が1対1で生活している場合や高齢犬も、飼い主さんに対する依存心が増すために不安を感じやすいと考えられます。
犬のストレスのサイン
愛犬は言葉で辛いとか不安だということを伝えてはくれません。しかし、普段の行動をよく観察していれば、愛犬の行動や仕草などから知ることができます。
犬がストレスを受けて気が弱くなっている場合は、下記のような様子がみられます。
- すぐに怒る
- イライラしていることが多い
- 常に悲しそう、または寂しそう
- 常にビクビクしている
- 引きこもって姿を見せない
- 遊ばなくなる
- 落ち着かない
- 食欲がない、または食べすぎる
- 排泄しない、下痢、便秘、嘔吐などの消化器系の不調
- 寝ない、または寝過ぎる
- 常に自分自身の体を舐め続ける
もしも愛犬に上記のような様子が見られたら、これからご紹介するような生活環境になっていないかについて、見直してみてください。
犬が辛いと感じる生活環境
1.独りで落ち着ける場所がない
いくら犬が集団行動をする動物だからといっても、独りきりで落ち着きたいと思うこともあります。そのような時に、愛犬が独りで落ち着ける場所を確保してあげることが大切です。
ハウスやベッド、クレート等を設置してあげましょう。なるべく人の出入りが少なく、テレビやラジオ、また外の音などが聞こえにくい静かな場所が良いです。
犬の聴覚はとても優れているため、遠くの音や小さな音にも敏感で、落ち着けないからです。
2.家族と繋がれる場所がない
犬が独りきりで落ち着ける場所があるだけでは、充分な生活環境だとは言えません。家族と繋がれる空間も必要です。家族や他の同居動物たちと一緒に過ごせる共通の空間を用意しましょう。
飼い主さんが長く過ごす部屋が好ましいです。その部屋には、愛犬にいたずらをされると困るような物は置かないようにすることが、お互いが快適に過ごせる秘訣です。
3.日差しやエアコンの風が直接当たる
愛犬の寝床や留守番をする際のクレートなどの設置場所には、特に気を配りましょう。騒がしくない場所で、直射日光やエアコンの風が直接当たるような場所も避けてください。
また、生活環境の衛生管理はしっかりと行いましょう。アレルギーの犬にとって、ハウスダストや花粉がアレルゲンになることも多いです。
4.頻繁に環境が変わる
生活環境が頻繁に変わること自体も犬にとってのストレスです。犬は保守的で、物事に臨機応変に対応するのが苦手なのです。
引っ越しやお部屋の模様替えを頻繁に行うようなご家庭の場合、環境の変化に追いつけずに辛い思いをすることがあります。
今までできていたことができなくなった、トイレの失敗が増えたなどの場合は、環境の変化によるストレスが原因かもしれません。
むやみに叱らずに、正しい行動ができるようにやさしく誘導しましょう。また、なるべく犬のニオイがする物を残しておきましょう。
5.留守番時の誤った対応
飼い主さんには飼い主さんの生活があるので、昼間愛犬に長時間の留守番をさせてしまうのも仕方のないことです。しかし、犬は飼い主さんが必ず帰って来てくれると信じているから留守番ができるのです。
「もう帰って来ないかも…」という不安を抱いてしまうと、それが元で精神面が不安定になり問題行動に繋がります。
過去に捨てられた経験がある犬や、留守番中に震災に遭った経験を持つ犬の場合は、しっかりとしたフォローが必要です。
また、飼い主さんが帰宅した直後に愛犬が非常に興奮する場合は、一旦落ち着くまで声を掛けないでください。
飼い主さんも一緒になって「ただいま。ご苦労さま!」などと声を掛けて抱きしめると、益々愛犬の精神状態を不安定にしてしまうことがあります。
まとめ
愛犬にとっても飼い主さんにとってもストレスフリーな生活環境を作るのは、飼い主さんの役目です。そのためにも、普段から愛犬の様子を観察することを習慣づけましょう。愛犬の普段の様子を知らなければ、愛犬の変化にも気付けないからです。
愛犬のことを一番良く分かっているのは飼い主さんです。愛犬のちょっとした変化にもすぐに気付けるような観察眼を養いましょう。