犬が動物病院を怖がる要因を探るためのアンケート調査
皆さんの愛犬は動物病院が好きでしょうか?たまに獣医さんが大好きという犬が話題になりますが、病院は苦手という犬が多数派ですね。
ただ単に「苦手」「好きじゃない」というだけでなく、動物病院に行くことに犬が強い恐怖を感じるような場合には犬の福祉を損なう恐れがありますし、恐怖の感情がエスカレートすることで獣医師やスタッフに対して攻撃的になったりしてはたいへん危険です。
このように動物病院での犬のネガティブな感情は放置してはいけないものなのですが、病院での恐怖や攻撃行動に関する研究というのは今までほとんどなかったのだそうです。
この度カナダのグウェルフ大学の獣医学の研究チームが、現在犬を飼っている人を対象にして動物病院での犬の行動についてのアンケート調査を行い、何が犬の恐怖や攻撃的行動のリスク要因となっているのかを調査しました。
いろいろな要素が絡み合って生まれる病院での恐怖と攻撃的行動
飼い主へのアンケート調査の回答の分析結果は、犬が動物病院を怖がったり、獣医師やスタッフに対して攻撃的になる背景には実にさまざまな要素があり、それらがお互いに関連し合っていることを示していました。
飼い主によって「病院を怖がる」と評価された犬では以下のような要素が目立っていました。
- 1歳以下で不妊化手術を受けた
- 成犬になってから初めて病院での爪切りを経験した
- 知らない人への恐怖が強い
- 幼い時期の社会化ができていない
- 身体を触って検査されることにストレスを示す
- 病院で嫌悪的な経験をした後、恐怖が強くなった
- 飼い主自身が動物病院で緊張を示す
他の研究で犬の攻撃的な行動に最も強く関連しているのは、犬が怖いと思う感情であると指摘されているように、このリサーチで攻撃的だと評価された犬の多くは同時に「病院を怖がる」と評価されていました。
攻撃的であると評価された犬は、上記で「病院を怖がる」犬に目立っていた要素をほぼ同じように持っていました。そこに以下のような要素が加わった場合、単に怖がっているだけでなく攻撃的であると評価されました。
- 診察時間を切り上げる必要があった
- 診察の際にマズルカバーが必要
- 獣医師やスタッフへの咬傷事故
恐怖と攻撃的行動の要因の多くは共通していたのですが、攻撃的であると評価された犬では単に怖がる犬には無かった非常に重要なリスク要因がありました。
それは飼い主が望ましくない行動に対して罰を与えるトレーニング方法を使っていると報告していたことです。これは罰を与えるトレーニングが犬の攻撃的行動を助長している可能性を示しています。
動物病院での恐怖を和らげるためにできること
このように犬が動物病院を怖いと感じる、またそこから攻撃的行動を見せる要因は、犬の性格、過去の病院での経験、社会化の達成度、トレーニング方法、飼い主の感情などが絡み合っています。
リスク要因が分かり、それを取り除けば問題が解決するというほど単純ではないのですが、少なくとも悪化を予防するために飼い主ができることもあります。普段から以下のようなことを取り入れてみるのはどうでしょうか。
- 身体を触ることに対してハズバンダリートレーニングを使って慣れて行く
ハズバンダリートレーニングとは
https://wanchan.jp/column/detail/23807
- トレーニングに罰を使わない
- 飼い主自身が病院に行く前に良いイメージを思い浮かべてイメージトレーニング
- 治療以外の目的で病院に立ち寄って、スタッフから犬にトリーツを与えてもらう
近年は獣医師もハズバンダリートレーニングを取り入れたり、トリーツを上手に使って診察してくださる先生も増えています。口コミを頼ったり、健康診断で訪れた時の印象などから愛犬にぴったりの獣医さんを選ぶことも大切なポイントです。
まとめ
動物病院で怖いと感じたり攻撃的行動を見せたりする犬のリスク要因は何であるのかをリサーチした結果をご紹介しました。
研究者は今回の調査結果から、犬が動物病院に対して持つ恐怖や攻撃的行動を防ぐことを目的とした研究のための仮説を立てて役立てたいとしています。
ペットを飼っている以上、動物病院は決して避けては通れません。愛犬のために手を尽くしてくださる獣医師やスタッフの方のため、そして何より愛犬が快適に治療や診察を受けられるために、一般の飼い主も犬が怖がるリスク要因を知っておく必要がありますね。
《参考URL》
https://doi.org/10.1016/j.applanim.2021.105374