歯周病とアルツハイマー型認知症
認知機能不全、一般的には認知症と呼ばれることが多いものです。人間では、加齢と共に認知能力が低下して行くアルツハイマー型認知症が多く見られます。
歯周病はアルツハイマー型認知症の発症に関連しています。歯周病によって慢性的に炎症を起こしている口内の状態は、細胞毒素や細菌による脳の損傷、脳内の神経機能を妨害する物質βアミロイドの蓄積につながると過去のいくつかの研究が示しています。
つまりとても簡単に言うと、歯周病があるとアルツハイマー型認知症のリスクが高くなるということです。
高齢の犬にもアルツハイマーとよく似た経過を辿る「犬の認知機能不全症候群」があります。この度アメリカのコーネル大学獣医学部とChi大学の研究者およびニューヨークの獣医師によって、犬の歯周病も人間と同じように認知機能不全に関連しているというリサーチ結果が発表されました。
犬の歯周病と認知機能についての調査
犬にとって歯周病も認知機能不全も一般的な疾患です。しかしこの2つの関連については今まで確認されていませんでした。
研究チームは、認知機能不全の診断を受けた9歳以上の犬11頭、同じ年齢で認知機能が低下していない10頭を対象に調査を行いました。
まず犬の口内のデジタル写真を撮影し視覚的歯周病スコアが算出されました。犬の飼い主には認知機能に関する質問票が配布され、歯周病スコアと質問の回答が比較されました。
比較の結果は明白でした。認知機能不全と診断された犬の歯周病のレベルは、診断されていない犬に比べてかなり悪いものでした。これは人間の歯周病とアルツハイマーの関連の研究と一致しています。
この調査では歯周病と認知機能障害の相関関係は示されましたが、歯周病が認知症の原因そのものなのか、様々な要因の1つなのかなど具体的な因果関係までは判断できません。今後さらに研究が進められることが期待されます。
犬の歯磨きと医療メンテナンスの重要性
犬の口内の健康状態が悪くなると、口の中だけの問題ではなく腎臓や心臓など全身状態にも悪い影響があることはよく知られています。この研究では脳の健康にも関連があることが示され、犬の歯を磨くことの重要性が改めてわかります。
認知機能が低下すると昼夜逆転による夜鳴きや飼い主のことが分からなくなるなど人間にとって辛いことも色々とありますが、何よりも犬自身が不安や恐怖を感じて混乱したりと生活の質が大きく低下してしまうので、認知症の予防は大きなテーマの1つです。
ゲームや運動で心身の刺激を欠かさない、食事の質に気を配ることなどは認知機能を健康に保つために有効とされていますが、日常の歯磨きと定期的な歯の医療メンテナンスをプラスすることも重要だと思われます。
まとめ
人間でいくつかの研究結果が示しているのと同様に、犬の場合も歯周病と認知機能不全に関連があることを示したリサーチ内容をご紹介しました。
犬の脳の老化、それに伴う認知機能の低下のプロセスは人間と共通する点が多いため、犬の認知症研究はしばしば人間のモデルとされています。今回は人間のための研究が先で犬にも共通点があるということが分かったわけですが、また1つ人間と犬の認知機能の研究がリンクしたと言えます。
愛犬の心と体の健康のために、今日も歯磨きを頑張ろうと思います。
《参考URL》
https://www.ejmanager.com/mnstemps/100/100-1611759109.pdf?t=1622357845