犬のしつけで叱ると褒めるが大切?それは罠です
「しつけは叱ると褒めるのバランスが重要!褒めるだけもダメ!叱るだけもダメ!バランスが取れて初めて犬に良いことと悪いことが明確に伝えるとができます!」
実際に訓練士やドッグトレーナーに相談したことがある人や、どうやってしつけをしたらいいかを調べたことがある人は、このセリフを見聞きしたことがあるのではないでしょうか。
そして、それを聞いたあなたはこんなことを考えませんでしたか?
- そういえば叱るばかりで褒めることがほとんどなかったな…
- 褒めるところがないから叱ってばかり…
- 叱ると褒めるが大事って聞いたことがあるけど実際は叱ることの方が多いな…
- 叱るのが可哀想でつい甘やかしてしまっていた…
- 叱ると褒めるの両方しているのになんで伝わらないんだろう…
こうした想いを巡らせて「もしかしてうちの子はお馬鹿さんなの…?」と悲しくなったところに、「犬が悪いんじゃないんです!正しく伝える方法を飼い主さんが知らないだけ!それを使いこなすことができれば犬はみるみるうちにお利口さんに成長していきます!」というエールの言葉。
「そうか!今まで間違った方法だったからダメなんだ!よし、正しく叱るって褒める方法を学ぶぞ!!」
体罰の世界へようこそ。
え?と思いましたよね。体罰の世界?いやいいや、体罰なんてするつもり一切ないし体罰なんてすべきことじゃない!って思いましたよね。
そうなんです。これが「叱ると褒めるのバランスが大切だよ」の罠なんです。
犬には叱るも怒るも同じことであり体罰である
叱ると褒めるのバランスって一見すごく重要でもっともなことのようですよね。でもそれって、叱られる側が「これは自分のことを思って厳しくしてくれているんだ」という理解があることが前提です。
しかし、犬という生き物は単純に良い結果と悪い結果から学習し選択・判断をする動物ですから、「厳しさの内側にある愛情を悟れ!」というのは無理です。
人間ですら強い言葉や痛みを与えられると辛気持ちになりますよね?なんで自分だけこんな仕打ちをされなければいけないのか不満に思いますよね。
その裏に愛情があるからだ!というのはそれまでの経験から自分自身の受け止め方として考えることはできますが、単純に苦痛を与えられたら嫌ですよね。
つまり、良い結果と悪い結果から学習していく犬にとって叱ると怒るは同じ苦痛でしかありません。
体へ刺激を与えてNOを伝える、大きな音でびっくりさせてNOを伝える。
これはどちらも体罰です。肉体的体罰・精神的体罰でしかない以上、人間がどんなに愛情があってこそやっているんだ!と言ったところで犬にとっては苦痛以外の何者でもありません。
犬への体罰は動物福祉に反している行為
「でも、訓練士さんやトレーナーさんは軽い刺激だから犬は痛くない。命を守るためには必要なことだって言ってた!」
こんな風に思うと思いますが、一度よく考えてみてください。
まず犬は痛みに強いとかこれくらい痛くないとかって言いますが、犬にも痛みはありますし別に強いわけではありません。
痛みに強いと思われているのは、犬は痛みを隠して弱っているということを悟られないようにするという本能があるからです。
そして、刺激の強弱に関係なく与えられる刺激は、犬にとって不快であり恐怖であり苦痛であることに変わりありません。
例えば、あなたは毛虫が大の苦手だとします。毛虫に対して好意的な人の方が少ないでしょう。
そしてしつけだと称し、あなたが不正解とされる行動をとると、大嫌いな毛虫を1匹体に付着させられます。
嫌じゃないですか?不快ですよね?毛虫がうねうねあなたの体を這い回るなんて恐怖だし苦痛ですよね?それとも1匹ならそんなことはありませんか?
もし1匹ならまだ大丈夫!ということであれば相手はもっとあなたに理解をさせるために、あなたが気持ちわるい!不快だ!嫌だ!と思えるだけの毛虫をくっつけて来ます。
嬉しいですか?数の多さ(嫌悪刺激の強弱)の問題ではありませんよね。
そしてこれは立派な精神的体罰です。
相手が「あなたのためにやっているんだ!」と言っていたとしても受け入れ難いですよね。
それを言葉巧みに都合の良い解釈で体罰をしつけとして変換し、不正解とされる行動をとったときに体罰を使いその行動をさせないように育てていきます。
もちろん、たくさん褒めてご褒美に美味しいものをくれるので悪い人ではないであろうことは理解できます。
ですが、しつけだからという理由で肉体的・精神的苦痛を与えるというのは福祉に反する行為であり、とても犬に優しいしつけとは言えません。
犬のしつけ(トレーニング)とは、動物福祉を重んじ人道的・倫理的でなければならない。
だから、叱るではなく望まし行動が出現するように環境を整え嬉しい・楽しい・美味しいと言ったポジティブな経験で行動を強化していく。
楽しみながら望ましい行動を強化して定着させていくだけだから、そもそも叱る必要なんてないし犬の失敗は人間側の失敗の結果でしかない。
たったこれだけのことなんですね。だから失敗を犬のせいにして叱るという体罰を行ない、犬に苦痛を与えるというのは理不尽ですし身体的・精神的健康への被害も起こります。
しつけならば身体的・精神的体罰が許容されるという考えは動物福祉に大きく反していますし、あまりにも犬のことを馬鹿にした行為です。
あなたの犬をお利口と言われる犬に育てたいのであれば、叱る褒めるのバランスではなくどうすれば強化したい行動を出現させて伸ばすことができるのか?
そこを考えて犬も人も楽しみながらトレーニングができる方法を考えましょう。
まとめ
犬のしつけに叱ると褒めるのバランスが大切だ!というセリフは、体罰を使用するしつけ方法の典型セリフです。
- 命を守るためには多少の体罰をしてもいい。
- 弱い刺激なら体罰に入らない。
- 愛のある体罰(叱る)は犬に必ず伝わる。
- 大きな音を使ったものは体罰には入らない。
こうしたことを言われたらすぐにその訓練士やトレーナーからは身を引いてください。
犬のしつけにおいて叱る必要は一切ありませんし体罰なんて言語道断です。
時にしつけという理由で行われる体罰によって生活に支障をきたすようなダメージを与えたり、最悪死亡してしまうケースも少なくありません。
あなたは犬を苦しめるために家族として迎えたのでしょうか?
違いますよね。笑顔で楽しい日々を共に過ごし癒し癒され良い関係を築くために迎えたはずですよね。
であれば、叱る必要があるトレーニング方法ではなく叱る必要のないトレーニング方法を推奨しているドッグトレーナーを頼って、ぜひ笑顔で日々のトレーニングを行なってください。