咬みつくとして殺処分の窮地から奇跡の大逆転を遂げた犬のお話

咬みつくとして殺処分の窮地から奇跡の大逆転を遂げた犬のお話

迷い犬として収容された高齢犬には問題が複数ありました。眼がよく見えてないという体の問題と、お口が出るという問題があり、譲渡対象から外れました。レスキューしなければ確実に殺処分になる運命でした。

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殺処分の運命からの大逆転

迷い犬

その犬は迷い犬としてセンターに収容されました。

私達はチラシを作り、犬が保護された周辺地区の聞き込みも行いましたが、飼い主さんに繋がる情報は何1つ得られませんでした。

相談

迷い犬の告示期限が切れ、センターからの相談がありました。

「人馴れはしていますが、いろいろ問題があり譲渡対象にするのは難しい」という内容でした。

それで犬に会ってみることにしました。

問題

犬は高齢でした。

センター職員さん曰く、首回りは触れないとのこと。また、目も見えていないかもしれないと言われました。

私達は犬を見極めるため、それから毎日センター管理棟に通い、犬と面会を繰り返しました。

仮名は『ナナミ』に決めました。

突然の出来事

体にも触れるし、頭にも触れる。お座りも待てもできました。何も問題はないような気がしていたその時でした!

突然、ナナミが豹変したのです!

その様子は動揺しながらも映像にとらえていました。

咬む犬

ナナミは咬む犬でした。

それは日によって違いました。気分によってムラがあるようでした。本人の体調にも影響していたのかもしれません。

飼育員さんの話でも、何度も咬もうとしてきたそうです。

人懐っこいのですが、何の前触れもなく突然咬もうとするので、危険でした。やはりセンターの判断通り、普通の里親探しができる犬ではないと思いました。

困難

譲渡対象になっていない犬のSNSでの公の発信は禁じられていました。何故なら、引継ぎ先が見つからない場合に、殺処分になるからです。

そのため私達は必死で引継ぎ先を水面下で探しました。でも、どこのボランティアさんも団体さんも「咬む犬は難しい」とのことでした。そりゃそうです。自分達ですら咬む犬は難しいと判断しているのですから。

でも、引継ぎ先を探せないとこの子は殺処分になります。お座りも待てもできる犬を、諦めるのか?殺処分させるのか?

私達が「無理です」と匙を投げれば、殺処分が決定してしまうことでしょう。私達はどうしても諦めることができなかったです。

ある夜、ふとある猫のことを思い出しました。

それは市外の空き家に取り残された猫の相談でした。市外の相談は基本的に受けていませんが、ダメもとでフェイスブックで発信したら、夜中にある女性から電話がかかってきました。

「紫友会の川村ですけど、空き家の猫引き受けます!」と。

管轄外での市外の方の相談だったので、直接相談者と話してもらうことになりました。その後、川村さんは猫のために広島県から駆けつけてくれたそうです。

その猫のことが何故かふと脳裏をよぎったのです。猫を助けてもらってから数ヵ月が経っていましたが、突然気になってしまい、引き取ってくれた川村さんにメッセージをしてみました。

「あの時の猫、どうなりましたか?」と。すると猫はもう里親様に譲渡済みという返事がきました。

その流れで、ダメもとで相談してみました。「こちらのセンターで咬む犬がいて、引継ぎ先がないと殺処分になるのですが、そちらで対応可能でしょうか?」

すると「ちょっと考えさせてください」と一言だけ返事がきました。でも、それっきり音沙汰がなかったので、もうだめだと思いました。

返事

時間が経ち、もう諦めかけた時に、川村さんから突然返事が来ました。

「引き出してください!迎えに行きます!」と。

実は、私が川村さんに猫のことをふと思い出してメッセージをした日は、彼女の大事な犬が亡くなった日だったそうです。そんなことも知らずに私は彼女に唐突にメッセージをして、猫のことを訊いたり、犬のことを頼んだりしていたのです。

いや、もし、犬が亡くなったという事を知っていたら多分、そんな事はできなかったでしょう。

偶然とはいえ、まるで何かに引き寄せられたように、随分前の猫のことが突然頭によぎり、そしてその話の流れでナナミのことを頼んでいたのです。

これがナナミの運命を大きく変えました!

動物病院

センターから引き出して、川村さんに引き渡す前にできる検査はしておこうと、動物病院に連れて行きました。

そこでナナミはこれまで見たことのないような狂暴さを発揮しました。それでもなんとか検査してもらった結果、ナナミはフィラリア症で、憎帽弁閉鎖不全症でもあることが判りました。あまり良くない状態でした。

お迎え

その後、預かりさんのところで広島からのお迎えを待つことになりました。預かりさんがブラッシングやお散歩をしてくれました。その時は、不思議と咬む事はありませんでした。

数日後、川村さんが車で広島からお迎えに来てくれました。同時に広島の他のボランティアさんに引き継ぐ別の犬も一緒に搬送してくれました。

川村さんによって、ナナミ改め『拓海』君と改名されました。

手術

広島で再び診察を受けた拓海君は、お尻から嚢胞が飛び出していることが判り、緊急手術となりました。

拓海君が咬む理由の1つがどうやらそこにあったようでした。

「こりゃ目も耳もあんまり反応ないから怖いし、痛くて触られたくなくて咬むんだ」と獣医師さんは言われたそうです。

犬が咬むのには、それなりの理由が必ずあります。その1つが体の不調でした。拓海君には咬むほどの痛みがあったのです。

大変身

咬み犬だった拓海君に、川村さんのとてつもない愛情が注がれた結果、彼は大変身を遂げました!彼女には心から感謝していますし、彼女は拓海君にとって救世主だったと感じています。彼にとって最高の場所に引き継ぐことができたと思います。

最後に

センターで咬み犬と査定された場合は、たいていの場合は殺処分されてしまいます。

しかし、今回はセンターが私達保健所ボランティアに相談してくれたことで、一筋の希望が見えました。

その希望が、1人の女性によって生きるという現実の道に繋がりました。

接する人によって、犬は大変身を遂げます。拓海君にとっては、トレーナーの訓練も厳しいしつけも不要でした。

必要だったのは『本物の愛情』だったのです。ただそれだけで、咬み犬は優しい犬に変わりました。

この奇跡的な出逢いがなければ、この犬はどうなっていたかわかりませんし、ここまで大変身を遂げることもなかったと思います。

実はこの記事を書いている今、拓海君は血尿と血便が出たと川村さんの投稿がありました。この記事がいつ公開されるかわかりませんが、拓海君が笑顔でその時まで過ごせていることを心から願っております。

せっかく辿り着いた拓海君の幸せの住処、やっと巡り逢った素敵な女性との絆…もう少し長く、ゆっくりと時間が流れてほしいと祈るばかりです。

※尚、この記事と写真・動画の掲載につきましては、紫友会の川村様に承諾を得て行っております。

紫友会

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