「手の付けられない咬傷犬」で殺処分決定していた柴が甘ったれの家庭犬になるまでの物語

「手の付けられない咬傷犬」で殺処分決定していた柴が甘ったれの家庭犬になるまでの物語

殺処分を2週間後に控えた犬との出会いから、その後に続く嬉しい出来事まで様々なことがありました。そして、我が家の先住犬の弟分として・また私たちの愛らしい家族として過ごす「今」について、振り返りを交えながらお話ししたいと思います。

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殺処分を免れた幸運な犬だから「大吉」

その犬、凶暴につき取扱注意

吠える犬

その犬との物語は、まだ寒さの残る早春、私宛に届いた1通のメールから始まりました。

それは、日頃からお世話になっている先輩ドッグトレーナーからのメールで、「殺処分決定犬について。非常に若い犬のようなのでトレーニングによって行動が変わる可能性、保護の可能性を含めた視察を願いたい」という内容でした。先輩からのこの依頼を受けた4日後。センターを訪問した私が目にしたのは、猛烈に吠え立てる1匹の若い柴犬でした。

その犬は「手の付けられない咬み犬」として飼い主から持ち込まれ、また職員さんにも咬みつき、犬歯は削られていました。

私は、その犬が収容されている柵の横へ座り、直視を避けて犬が落ち着くのを待ちました。その間も吠え続け、柵に体当たりを繰り返すその犬がやっと疲れて吠えることをやめたのは1時間以上も経ってからだったように思います。

普通の犬

センターの庭に出された犬

その犬が落ち着くのを待つ間、トレーニングによって行動が変わるかもしれない可能性や保護の方法など、多くのことを考え続けましたがやはり簡単には答えは出ません。

そのため、その犬が一番信頼を寄せている職員さんとの関わり方、他人に対する別の状況での攻撃性の有無を判断するため、外に出してもらうことにしました。

すると別犬のような変わり様です。職員さんからはおやつを貰い、他人である私との距離を保てれば吠えることも襲ってくることもありません。

犬の攻撃行動は多くの場合、極度の不安や強いストレスから起こされると言われています。そのため、他人との距離を犬自身が離すことのできる屋外では人間の行動次第によって攻撃行動を低下させることが出来るのです。

この犬は「普通の犬」と同じように、恐怖や強いストレスを感じると攻撃をすることが分かりました。

私自身どこまでこの犬の恐怖心を和らげることが可能なのか、確証はありませんでしたが、若い犬が持つ柔軟性に一部の望みを賭け、我が家に迎えることにしました。

大吉の成長

専用スペースにいる犬

我が家へ来ることになったその犬は、可愛がってくれた職員さんとの出会いをはじめとする様々な幸運に恵まれ、殺処分を免れたことから「大吉」と名付けました。

我が家に来た当日、先住犬に強烈な先制攻撃を仕掛け、大吉専用のスペースに入れられると一晩中鼻鳴きを続けて翌朝にはお腹を下しました。

もともとキャパシティの低い大吉にとって、環境の変化の連続は相当に辛いことだったでしょう。もちろん、体に触れることも出来ませんので首輪、ハーネス、リードの着脱も行えず、2ヵ月ほど付けたままの生活でした。

リードで繋いだ犬

また外での散歩の経験もあまりなかったようで、車のクラクションやサイレン、電車の音などで脱糞をし自身の尾に噛み付く行動がよく見られました。

私がこの当時、大吉との関わりの中で、最も大切にしたことは「尊重する」ということです。

他人と関わることに恐怖や不信感がある状態の大吉にとって、目を合わせる・触る・散歩の後の足拭きなど「日々の最低限の関わり」すらも負担になるため、大吉が自分自身で近づいて来るまでひたすらに散歩・ご飯・排泄のみの関わりに徹しました。

そうやって少しづつ生活を共にし始めると、大吉に心境の変化が見られるようになりました。

最初の頃は、顔を見るだけで襲おうとしていた先住犬の側にいたがるようになり、人間の後を尾を振ってついてくるようにさえなったのです。

リードを付けたまま先住犬の側にいる犬

嬉しかったその日

大吉との関わりの中で忘れられない日があります。それは私と当時14歳だった娘、そして先住犬がベッドの上でじゃれあっていた時のこと。

寝室の入り口でその光景をじっと見ていた大吉が、突然ベッドの上に飛び乗り一通りはしゃぎまわった後、私に身を委ねてくれたのでした。

私の足の間でお腹を上に向けた大吉はとても満足げな表情をしていたように思います。この行動を起こすのにどれほど勇気が要ったことでしょう。

この日、初めて触れた大吉はゴワゴワの毛と埃っぽい匂い、そしてとても暖かったことを今でも鮮明に覚えています。

お腹を撫でられる犬

そして「今」

その日を境にして、大吉は驚異的な甘ったれ具合を発揮し始めました。遠慮がちに近寄って来ては隙を見つけて撫でて!撫でて!と訴えます。

足の間に挟まれた犬

家族の側で眠ることもあれば、好きな場所で眠ることもあります。

キッチンで食事の支度を始めれば、キッチンの入り口を陣取り、おこぼれが落ちてくる瞬間を大人しく待つのが趣味のようです。

キッチンの入り口で待機する犬

もちろん、幼少期に必要だった様々な経験が不足していると思われる大吉は、これから先も多くのことを学ぶ機会が必要です。

社会で生きる以上、怖いこと、嫌なことも避けては通れません。まだまだ苦手なことも多く、家族以外の人間は嫌・先住犬以外の犬も嫌・長い棒状の物も嫌・鈴の音が聞こえるとパニックを起こす…など、「普通の犬」にはあまりない反応を起こすこともあります。

カメラ目線の犬

でも、それでいいのです。

車に乗れるようになった・おやつの順番を守れるようになった・散歩が楽しくなった。あれもこれも「生きている」から出来るようになりました。だから、嫌なことが楽しい!に変わる時まで、私はこれからも大吉との物語を続けて行こうと思います。

まとめ

笑っているような犬の顔

まず初めに、今回のようなケースは特殊であり、大吉のような「攻撃性が高い」犬がトレーニングなしに一般譲渡に回ることはありませんので、保護犬をお迎えしようとしている皆様にはご安心いただければと思います。

しかしどのような気質を持つ保護犬であれ、特に成犬の場合にはそれまでに生活してきた環境や生育歴があり、その中で培われた経験によって今の「その子」がいるように思います。

そのため、人間同士の関係と同じように、「お互いの価値観をすり合わせながら尊重し、尊重される関係を築く」ことが重要なのかもしれません。その過程こそが、のちに「保護した犬」ではなく「世界で一番かわいい我が家の子」へと関係を変化させていくのではないかと思うのです。

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