犬には飼い主がいた
通報・発見
黒犬の保護依頼を受けて、ロスアンジェルスの保護団体HOPE FOR PAWSが犬が目撃されている場所へ車を走らせました。
もしかしたら子犬がいる母犬かもしれないとの情報です。いましたよ。犬は連絡してくれた人に寄ってきます。
この人が少し食べ物をあげるのを見て、保護団体リーダーは「あんまり食べ物をあげないで!」と注意。これから食べ物でおびき寄せたりするのに、おなか一杯では犬が無反応になってしまいますからね。
10日間ほど、ここの工場で働いている人たちが食べ物を与えていたそうです。
子犬さがし
録音された子犬の声を聞かせてみました。
子犬がいるなら、心配して彼らが待っている場所に戻って行くかもしれません。過去にこの方法で成功例があります。
黒犬は音に興味を示しています。奇妙な音をよく聴こうとして首をグリン、グリンと左右に傾ける動作は、犬がよくやりますね。
この後カメラにぐっと近づいて不思議そうに、熱心に聞き入っていましたが、自分の子犬たちの所に行く行動は見られませんでした。
もしかしたら、もう人が持ち去ってしまったか、他の犬や野生動物に食べられちゃったとか…。
これは難しい状況ですよ。この犬だけ保護するのは簡単そうですが、もし子犬がいるなら、放置するわけにはいきません。
団体リーダーは、しばらく様子を見ることにしました。
2時間後、あたりが暗くなり犬が動き出しました。高架道路の下の茂みに入って行ったようです。
暗い中で1人での保護活動はちょっと心細そう。足元は大きくとがった石がごろごろしています。
気をつけて!犬を追って茂みを注意深く進んでいくと、近くで犬が2匹、吠え始めました。
懐中電灯に照らされて、黒犬の目が光りました。手から食べ物を受け取り、なでられていた先ほどとは打って変わって、そこに立ちはだかって吠えています。
「やあ。子犬はどこ?」と声をかけながら近づきます。
誰だ!
あれ?リーダーは気づきました。どうやら高架下はホームレスの人々の寝床になっているようです。「ハロー」と声をかけてみました。
「何だ、誰だお前!」誰かが叫びました。うわぁ、これは恐い。
「動物の保護活動団体で、犬の保護に来ました」ということを伝えます。
ここで疑われたままでは、身の危険にもつながります。銃社会、アメリカですからね。本当に気をつけて!
「そっちに行ってもいいですか?」と聞いても、応えがありません。とりあえず進みます。
暗くて、その人がどこにいるのかもわかりません。犬は吠え続けていますが、とびかかるようなことはないようです。
「テントの中だよ」と、向こうからくぐもった声が返ってきました。もう1頭の犬も盛んに吠えます。
「黒犬の保護に来た、子犬もいるらしいですが」と説明すると、「飼い主がいないからわかんないよ。」とのこと。一応、所有者がいるのですね。
高架道路の支柱になっている壁ぎわの囲いの中に、コロンと転がっている子犬たちを発見しました。
母犬は手から食べ物をうけとりましたが、カメラが子犬の方を向くとまた吠えます。
賢い彼女、人は恐くはないけれど、とにかく子犬に手を出されるのが不安なのですね。
この生活環境は犬にとって最適とは言えません。
去勢、避妊をしていない犬たちは、このままでは際限なく繁殖して手に負えなくなります。でも、飼い主がいる以上、勝手に連れ去ることはできません。
テントにいる男性にもう一度声をかけます。「よければ、夕食を買うお金を差し上げましょうか?」
「お好きなように」との答えに、リーダーは少しお金を手渡しました。
「さっきはどなって悪かったね」と、男性はあやまります。「いえ、私の方が侵入してきたんですから、気にしないで。」とても穏やかな会話です。
テントの男性だって、きっと恐かったのでしょうね。だからこそ、丁寧に説明し、尊重することが大切だとわかります。
犬の保護活動で、思わぬ学びがありました。
「じゃあ、また明日の昼に来ますね」と、いったんこの場を離れました。
交流
翌日、保護団体のメンバーたちと一緒に再度、高架下にやってきました。
今日はホームレスの人たちの昼食と犬のベッド、未開封のドッグフード、それに寝袋をいくつか持参です。
母犬と子犬たちの飼い主は、団体が彼らを引き取ることに同意してくれました。この子は大あくび。子犬たちはきちんと世話されていたおかげで、人を恐がらずリラックスしています。
飼い主と保護団体メンバーも笑い声を交えながらなごやかな雰囲気です。
コミュニケーションをおろそかにしたら、飼い主の抵抗にあって犬たちの引き取りも難航するでしょう。
団体リーダーの人柄、大事ですね。
それから、ここに「住んでいる」のは2人だけじゃないみたい。10人以上いるのかな?犬も飼って、小さなコミュニティになっているのですね。
ホームレスの人たちが助け合って暮らしていました。持参した昼食は全員分あります。どうぞ、お昼を楽しんで!
保護
子犬たちをキャリーケースに入れる間も、母犬「ベア」は吠えずに見守ってくれました。
最後にベアに布リードをかけたのは、おそらく飼い主だったバズさん。
この人、本当はベアだけは手もとに置いておきたかったのですが、団体の説得に応じてくれました。離れがたいでしょうけど、納得してくれてありがとう!
ベアはやっぱり、このコミュニティを離れるのはイヤ。と座り込んで動きません。かわいがられていたのね。
最後は、飼い主バズさんが、ベアを抱いて車まで連れてきてくれました。
ベアはある日、バズさんの前にふらりと現れて、それ以来ずっと一緒だったそう。離れがたい絆があるようです。
でも、ベアと子犬たちの健康で安全な生活のために、「さよなら」を決断してくれました。涙
最後に高架下で別れる際、保護団体リーダーは、「またね!(See you later!)」と言っています。このコミュニティの人たちと、少しでもつながりを継続させるつもりなのでしょう。
ロスアンジェルスやその近郊で保護活動を続けるにあたり、地域の人たちと良好な関係を築くことはとても大切なこと。それをとても自然にやっているリーダーです。
ベア親子を乗せて帰る車の温度計は、50℃を示していました!
ケア
病院に到着し、みんな体を洗います。
お母さんも。
この後、子犬たちの授乳タイムもありますよ。
それから
保護の翌日には、親子そろって一時預かり施設に移動しました。
子犬たちは庭でコロコロ遊びまわり、ベア母さんは静かに見守っています。
これからみんな、素敵な里親さんとの出会いを待つのです。
※こちらの記事は動画配信をしているYouTubeチャンネルより許可を得て掲載しております。
掲載YouTubeチャンネル:Hope For Paws - Official Rescue Channel
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