育犬ノイローゼ
ノイローゼとは、特別に身体的には異常がないにも関わらず精神的なストレスによって身体的・精神的に様々な症状が現れることです。原因の多くは身の回りの環境に適応できず、強い不安感から精神のバランスを崩すことと言われています。
ちょっと気を遣いすぎ気味な人や心配性な人、潔癖気味な人、融通の利きにくい人、依存的な人など、なりやすい性格というものもありますが、逆に完全主義な人や自己中心的な人などもノイローゼに陥りやすいと言われており、もはや誰もが陥る可能性がある症状と言えます。
このノイローゼという症状は神経症に分類されており、よく見られる症状にはパニック障害や抑うつ神経症、解離性障害、強迫神経症などがあり、一度陥るとそのストレスも加わってなかなか回復しにくいものです。しかしノイローゼは必ず原因があり、その原因となる出来事やストレスが解消すると自然と治まるもとが多いようです。
育犬ノイローゼはなじみのない言葉ですが、育児ノイローゼはよく聞きますね。新しいママさんは赤ちゃんを育てることになって眠れない、時間が取れない、食事が不規則になる、人と会話できないなどの様々なストレス状態となります。
その結果、イライラしたりマイナス思考に陥ったり強い不安感に襲われたりすることで思考力が低下し、無気力になったり突然涙が止まらなくなったり、不眠や嘔吐、食欲不振、体重の激減など、身体的な症状として現れます。
育犬ノイローゼもほぼこれと同じ状態です。新しく子犬を受け入れ、楽しい犬との生活を夢見ていても現実は子育てならぬ犬育てから始まります。
子犬は人間の生活ルールなどお構いなしに好き放題しますから、家庭犬として一緒に生活するためには「しつけ」をする必要があるからです。しかし、この「しつけ」がうまくいかないことでストレスをためてノイローゼになってしまうことがあるのです。
育犬ノイローゼになる原因
こんなはずじゃなかった、から始まりやすい育犬ノイローゼですが、一体どんなことから「こんなはずじゃなかった」となるのでしょうか。初めて犬を飼う人、初めてではないけど子犬を飼う人、いずれの場合も原因は次にあげるように大体同じようです。
- 子犬の夜泣き
- 治まらない無駄吠え
- 排泄の失敗
- 強く噛む(人家具)
これらの犬の行為によって、睡眠不足に陥ったり近隣の人への迷惑を考えたり、実際にクレームを寄せられたりけがをしたりといったことが積み重なっていきます。そして「こんなはずじゃなかった」という憂鬱な気分が続くことで徐々にノイローゼになっていくのです。
育犬ノイローゼに陥ってしまったときは
犬を育てていくうえでノイローゼになりやすい人は、大抵がちゃんと犬を見ている人です。犬が好きで、犬を気持ちよく生活させてあげたくて、ちょっとした変化やちょっとした不調も見逃さなくて、ちゃんと世話してあげたくて、ご近所さんにもいい犬と言ってもらいたくて、だからしつけはちゃんとしたくて。
でも、ままならない犬との生活は思い描いた理想と違うことが多く、それで挫折感を味わってしまったりクレームについて強い不安を抱いてしまったりするんですね。
この育犬ノイローゼは、犬を飼う前にちゃんとリサーチしたり飼い方を勉強したり、心づもりをしておくことでかなり防ぐことができます。しかし、一度陥ってしまうとマイナス思考が悪循環して、つい「ダメな自分は飼いきれない、犬を手放そう」という結論にいってしまいがちです。
でもちょっと待ってください。犬を育てるうえでノイローゼになるほど考えている人は、犬に対して一生懸命向き合おうとしている人なのです。その一生懸命な気持ちが強すぎて、「いい子にさせよう」という気持ちが張り切り過ぎて、そのため「こんなはずじゃなかった」というときの逃げ場を自分で塞いでしまっているのです。
犬は人間の言葉をちゃんと理解することはできません。人も犬の習性や個性をちゃんと理解することはできません。お互いに完璧な飼い犬、飼い主になろうといって自分からハードルを上げてしまうと、気持ちに余裕がなくなってしまいます。
トイレの粗相や家具の破壊は毎日続くとがっかりしますが、これもいつか落ち着きます。ちょっとくらいできなくたっていい、いたずらなんて何年かすれば落ち着く、根気よくやればそのうちできる、くらいに考えてみてください。
無駄吠えや甘噛みからの本気噛みなど、飼い主や近隣の人に危害が及ぶ可能性があるなら自分ひとりで抱え込まずに専門のトレーナーなどの力を借りましょう。一人で全て向き合うことなんて、人間の子供を育てるときだってできないのですから、獣医さんやトレーナーさんといった専門の人に聞くのは育犬放棄でもなんでもないのです。
まとめ
子犬を育てていて、ちょっと気持ちに余裕が持て無さそうと思ったときは遠慮なく専門家や犬のしつけをよく知っている人に頼りましょう。あなたがダメな飼い主なのではないのです。一生懸命すぎるのではなく、ちょっと手を抜いても大丈夫というくらいの気持ちで穏やかに過ごしていると、犬たちの情緒も次第に落ち着いていくと思います。