犬の体臭の原因と緩和する4つの方法

犬の体臭の原因と緩和する4つの方法

猫と比べると犬の方が体臭がきついと感じたことのある方が多いのではないでしょうか。同じくらい私たちの身近にいる犬と猫ですが、体臭に違いがあるのには理由があります。犬の体臭の理由を正しく知り、愛犬を健康な状態で異常な体臭を発しないための緩和策を整理しました。

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記事の監修

東京農工大学農学部獣医学科卒業。その後、動物病院にて勤務。動物に囲まれて暮らしたい、という想いから獣医師になり、その想い通りに現在まで、5頭の犬、7匹の猫、10匹のフェレットの他、ハムスター、カメ、デグー、水生動物たちと暮らしてきました。動物を正しく飼って、動物も人もハッピーになるための力になりたいと思っています。そのために、病気になる前や問題が起こる前に出来ることとして、犬の遺伝学、行動学、シェルターメディスンに特に興味を持って勉強しています。

猫はそうでもないのになぜ犬はにおいがきついのか

子供と犬と猫

私たちの身近にいる動物の代表的な存在が犬と猫です。最近は、どちらも室内で飼育することが一般的になりました。室外と比べて室内での飼育で新たに問題となるのが、体臭です。

犬と猫の両方に接したことのある方であれば、猫はほとんど体臭を感じないのに、犬は体臭がする、犬によっては体臭がきついと感じている方が多いのではないでしょうか。愛犬の体臭なので、普段はあまり気にならないかもしれませんが、知人を自宅に招く際などは気になることも多いと思います。

しかし人間と同様に、犬にも体臭があるのは正常なことですし、犬にとって体臭は相手を認識するためにも重要なアイテムです。犬から体臭を完全に取り除く事はできませんし、体臭をなくそうとして洗いすぎたり香りでごまかそうとすることは、犬にとってデメリットがあることです。

今回は、犬の体臭の原因と、それを適切に緩和させる対策についてまとめました。

体臭の原因は分泌物や病気

ドッグラン

人は、夏の暑い時期や激しい運動の後などに滝のような汗をかいて体温を調節します。しかし、犬や猫は汗をかいて体温を調節する仕組みがないので、犬や猫は汗をかかないと思っている方も多いかもしれません。しかし、犬も猫も汗はかくのです。

実は、人でも犬や猫などの動物でも、汗腺にはエクリン腺とアポクリン腺という2種類の汗腺があります。エクリン腺から出る汗はほとんどが水で少量の塩分が含まれるのみですが、アポクリン腺から出る汗はタンパク質、脂質、アンモニア、フェロモンなどの様々な物質などが含まれていてやや粘性があります。

人の場合は全身にエクリン腺があり、前述の滝のような汗というのはこの腺から出ます。アポクリン腺は、脇の下などの限られた場所にしかありません。

パンティングする犬

逆に犬や猫では、エクリン腺が肉球や鼻の頭などのごく限られたところにしかなく、犬は全身にアポクリン腺があります。

このアポクリン腺や全身に分布する皮脂腺から出た汗分泌物が体臭の原因となるのです。それらの分泌物が臭うというよりは、分泌物に含まれる油分が酸化した物質や分泌物が細菌によって分解された時に作られる物質によって臭うようなります。人の場合、ワキガや加齢臭が同じ機序で発生します。

また、全身にはありませんが肛門腺からの分泌物によって犬が臭くなることもあります。肛門腺からの分泌物は少量でも非常に強い臭いにおいを発しますが、分泌物が異常に貯まっていたり排便後に肛門周囲についていたりすることによって臭うことがあります。

分泌物ではなく、病気が原因で体臭がきつくなることがあります。体臭を強くさせたり臭いの元となってしまう皮膚病もあります。また、目ヤニや口臭、耳垢がにおいの元となって「犬が臭い」と感じることがあるのです。

目に傷や病気があるとたくさん目ヤニがでることがあります。その目ヤニを放置すると、そこで細菌が繁殖して臭いを発生させることがあります。歯石がたまっていたり歯周病があると口臭がきつくなります。内臓の病気によって、独特の口臭がすることもあります(糖尿病で甘酸っぱい臭い、尿毒症でアンモニア臭など)。外耳炎などの耳の病気があると耳から強いにおいがするようになります。

分泌物があること、病気で臭うようになることがあるのは猫でも同じですが、猫は四六時中舐めてグルーミングをしていること、皮膚病や外耳炎が犬より少ないことなどが猫が犬のように臭うことがあまりない理由だと考えられます。

犬の体臭対策

1. ブラッシング

犬のブラッシング

最も基本的な体臭対策が、毎日のブラッシングです。ブラッシングを行うことで、皮膚の表面の抜け毛が取り除かれ、体の表面にたまるアポクリン腺や皮脂腺からの分泌物の量が減ります。また、無駄な毛がなくなって風通しが良くなることで、分泌物が嫌な臭いの原因となる物質に変わってしまうのを抑える効果があるかもしれません。

ブラッシング後には、お湯で湿らせたタオルや市販のペットの体拭きなどで体を拭き、被毛についた汚れと共ににおいの元となる汗、皮脂、雑菌をきれいに拭き取ると、より効果的でしょう。また、顔や体にシワがあるブルドッグやパグのような犬種は、体の表面だけではなくシワの間の汚れを取ってあげましょう。シワの間は分泌物や汚れ、食べかすなどが溜まりやすく、さらに蒸れて雑菌が繁殖しやすい環境です。

また、よだれもにおいの元です。唇が垂れている大型犬や短頭種はよだれが多いので、口周りを念入りに拭くようにしましょう。

2. シャンプー、皮膚の保湿

犬のシャンプー

ブラッシングと同様の理由で、汗や体の古くなった皮脂、雑菌をシャンプーで落とします。ただし、シャンプーは洗浄力が強すぎないもので、シャンプーの後には皮膚をしっかり保湿してあげましょう。シャンプーやコンディショナー自体に保湿効果があるものもあります。皮膚が乾燥し過ぎてしまうと、皮脂がより多く出て逆に体臭がきつくなることになったり、皮膚のバリア機能が低下して皮膚病のもととなったりすることがあります。また、シャンプー自体の匂いがキツくないものを選んだ方が良い場合もあるでしょう。

また、適切なシャンプーを選んだとしても、過度に頻繁なシャンプーは必要な皮脂まで落としてしまい、やはり皮膚の乾燥を招きます。シャンプーは一般的には月に1〜2回程度が良いでしょう。肌質や皮膚病の有無などによっても変わりますので、シャンプーの選び方や回数が適切なのか分からない場合は、トリマーさんや皮膚に詳しい動物病院に聞いてみると良いでしょう。

また、シャンプー後に体を十分に乾燥させ、蒸れて雑菌が繁殖するのを防ぎましょう。

保湿をきちんと行うことがとても重要な治療になる皮膚病もあります。皮膚病があってシャンプーや保湿を指示されている場合は、その指示をよく守り清潔な皮膚の維持と保湿に努めましょう。

3. 餌を変えてみる

食事をする犬

食事は犬の健康の基盤を作る大切なものです。品質の良い餌もたくさん売られていますが、どれがどの犬に合うのかは異なるでしょう。もし、皮膚も健康で被毛もきれいだし、臭いの元となる病気もないのに、なんとなく犬が臭い場合には、餌を変えてみるのも良いかもしれません。よりその犬に合った餌が見つかるかもしれません。食べ物によって体臭が変わることは人間でもよくあるようです。また、おやつや人の食べ物のあげすぎなどで栄養バランスが崩れているかもしれないと思う場合には、まずは主食(餌)が中心となるよう、食べ物の見直しも効果があるかもしれません。

4. 肛門腺の分泌物を貯めない

分泌物の貯まり方は犬によって違いますが、定期的に肛門嚢をしぼって、肛門腺からの分泌物を貯めないようにしましょう。シャンプーの時や爪切りの時、毎月〇日などとタイミングを決めておくと良いでしょう。毎月1回など定期的に動物病院やトリミングサロンに通っている場合には、毎回肛門嚢を絞ってもらうのも良いですね。

5. 病気を予防・治療する

歯周病は歯磨きによって防げる病気です。歯磨きを嫌がる犬も多いですし、毎日犬の歯磨きを欠かさずやるのも大変ですので、歯磨きだけで一生きれいな歯を保つのはなかなか難しいでしょうが、1週間に3回程度の歯磨きをするだけでも重度の歯周病になることは防げるでしょう。歯周病になっても、軽度のうちに気づき動物病院での治療を受けさせることができます。

外耳炎にならないようにシャンプーや水遊びの後は耳の中に水分が残らないようにしたり、軽度なうちに外耳炎の治療が始められるように、耳を痒がるようであれば早めに動物病院を受診するなどしましょう。外耳炎の治療で定期的な耳掃除を指示された場合には、指示を守りましょう。

膿皮症、マラセチア皮膚炎、脂漏症などの皮膚病は、臭いの元となります。また、アトピー性皮膚炎がある犬は、それらの皮膚病や外耳炎になりやすいです。シャンプーや保湿、食べ物に気を付けながら、皮膚をできるだけ良い状態に保つことが、体臭をきつくさせないことにもつながります。

まとめ

散歩をする犬

ある程度の体臭がするのは正常ですが、「体臭がきつい」ことが病気のサインであることもあります。普段から、犬の様子やにおいを確認し、普段とは異なる様子やにおいを感じた場合は、迷わず動物病院に相談してください。また、犬種や体質によっては病気ではないけれども皮膚が脂っぽく、定期的にシャンプーをしないとすぐに臭ってしまう犬もいます。そのような場合には、どのシャンプーでどのくらいの頻度でシャンプーをすれば臭いが問題とならないのかを見つけてあげられると良いですね。

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