体はマヒでも尻尾を振り、人に愛情を示してくれた犬
保護と治療
これは「ピッパ」です。看護師に腰を支えられ、細い長い足をばたつかせています。その足は、あり得ない角度に曲がったり、床をとらえられずにすべっています。
脳障害のため動けないピッパを、ハンターは不用品として野原に捨てたのです。保護団体LetsAdoptがピッパを保護し、病院に連れてきました。
ピッパは自力で立ち上がれません。小刻みに震えながら中腰になるのが精一杯です。
肋骨や背骨がゴリゴリと浮き出して、筋肉や脂肪がほとんどついていない状態です。捨てられてすでに日が経過していたのかもしれません。
獣医師は様々な検査をしました。歯の状態から、まだずいぶん若そうに見えます。
脳のMRI検査も行いました。
脳の損傷部が画像で確認できました。
そしてさらなる全身の検査の後、手術が行われました。命が危ぶまれるピッパを救うため、多くの人が手を尽くします。
生きる喜び
麻酔から覚めつつあるピッパのそばに女性が付き添います。まだもうろうとする意識の向こうで、優しくさすってくれる温かい手、呼びかける優しい声がそこにあって、ピッパは安心したことでしょう。
この女性がピッパを家庭に迎え入れてくれるのです。
そして動画の2分6秒からは目が離せません。すっかり目覚めたピッパが上半身を起こし、この女性を見つめて激しく尻尾を振るのです。
女性にうながされ、もがいてもがいて、床をはって進むピッパ。病院に初めて来た時の不安そうな表情は明らかに消えました。
ピッパがいよいよ女性宅にやってくる日に合わせて、ピッパを運ぶキャリーも新調されていました。
女性宅の先住犬たちもすんなり受け入れてくれ、ピッパは大喜びしています。大喜びです!先住犬たちも、おそらく保護された犬たちでしょうね。
いよいよキャリーに乗って散歩に出ると、なんと、ピッパは力を振りしぼって、後足で少し立ち上がり、キャリーの天井から頭を出したのです!この瞬間の喜びが、ピッパの体に力を与えたのでしょう。そして草地に伏せて、気持ちよさそうに風に吹かれました。
その後
ピッパは病院でリハビリの訓練も開始しました。水中での歩行訓練は、支えられながら目を見開いて頑張りました。
でも、ピッパの体はすでに、ボロボロだったのです。その後、肺炎を発症し、緊急に酸素吸入など手を尽くしましたが、ピッパにはもう、回復する力が残っていませんでした。女性に寄り添って、彼女の手から食べ物をなめて食べ、そしてまた尻尾を一生懸命に振りました。女性がそばにいる。それはピッパにとって喜びだったでしょう。
1週間後、ピッパは女性のかたわらで息を引き取りました。
動けない体で捨てられたことで命を奪われたことに変わりはありません。でも、野原に捨てられ動けないまま、心細いまま逝ったのでなく、ピッパを励ます人々に囲まれ、そしてあの女性に包まれて、喜びで尻尾が揺れる瞬間を持てたことで、ピッパの短い命は最後に光り輝きました。
どうか目をそらさずに見てください。
動画を見ることは保護支援にもつながります!
※こちらの記事は動画配信をしているYouTubeチャンネルより許可を得て掲載しております。
掲載YouTubeチャンネル:Viktor Larkhill (LetsAdopt)