奇跡的な展開
発見
その犬は茂みの中で、下半身が麻痺して動けない状態で鳴いていました。
近くの道路からは見えず、めったに人が通らない歩道の横でした。手遅れになる前に発見されたこと自体が最初の奇跡でした。
通報
発見した方が地元の警察に連絡したところ警官が犬を見に来ましたが、何もしてくれなかったそうです。
家に戻った発見者からそのことを聞いた娘さんが、ネットで検索して当団体に電話をかけてこられました。
当団体は市民からの保護はしていません。ですが通報時に「犬を保護しても治療する経済的な余裕がなくどうしようもない」と言われ、茂みで放置されている犬が心配になり、とりあえず現場に確認に行きました。到着時にはもう夜になっていました。
犬は首輪をしていました。近づくと必死で逃げようとしています。
このままにしておくわけにもいかず、なんとか保護。その夜は動物病院も閉まっていたため、一時預かり先に連れて行きました。
もちろん保護したその足で警察に行き、迷い犬の届けを出しました。「こちらで保護して治療をしながら、飼い主さんが名乗り出られるのを待つ」と伝えて了承を取り、翌日地元のセンターにも届け出を出しました。
病院
一刻を争う重症と判断し、所有権はまだありませんでしたが、治療をすることになりました。
センターも警察もそのことを了承していました。その代わり、飼い主さんが名乗り出ても、治療費などは一切請求しないという同意書を警察に提出しました。
翌日、動物病院に連れて行き検査してもらうと、背骨が折れて下半身麻痺の状態でした。
MRIの診断を薦められ、後日専門病院に連れて行くことになりました。
専門病院
痛みからか食事があまりとれなかったため、連日地元の動物病院で点滴などを行い、専門病院の予約日までをしのぎました。
予約日を迎え専門病院でMRI検査をしたところ、骨折した背骨をボルトで止めれば再び歩けるようになる可能性があるとのこと。数日後に手術することになりました。
当団体の活動地域は山口県ですが、専門病院は福岡県。海の向こうの隣県です。再び長時間ドライブで移動するのは、負傷した犬にとっても負担になります。費用は嵩みますがそのまま入院し、手術、リハビリを行い、退院の時にお迎えに行くことになりました。
獣医師の見解は、骨折の原因は交通事故などではないだろうということでした。
何故なら、他に怪我が一切なかったからです。背骨の一部だけが折れていました。
誰かに虐待された上で遺棄された可能性も出てきました。
そもそも下半身麻痺の犬が、あの茂みに自らたどり着くことは不自然です。車で跳ね飛ばされて、転がり落ちるというような場所でもありません。
誰かに故意にそこに置かれたというような場所でした。首輪をしていましたが、新品の100円首輪でした。
私達のこれまでの経験から、誰かが遺棄する場合、なぜか首輪をしたりお洋服を着せられていたりは、決して珍しくはありません。
あくまでもこれは推測ですが、遺棄は犯罪になるため犬が発見された場合に迷い犬だったと言うために偽装をしているのかもしれません。
費用
地元の通院で既に数万円、MRIだけで数万円、手術となると数十万円がかかります。
ボランティアが保護した犬なので、動物病院側もできる限りの値引きをしてくださるとのことですが、それでも数十万はかかってしまうので、寄付を募ることにしました。
いろんな方が募金を呼び掛けてくれたり、イベントなどで寄付を集めてくれたりしました。
- 命名:立(りつ)再び立ってあるけるように願いをかけてこの仮名をつけました。
- 通称:りっちゃん
ありがたいことに、りっちゃんには、沢山の応援が届きました!
手術も無事成功しました。
リハビリ生活
退院してからが本番でした。これからリハビリ生活が始まるのです。
ありがたいことに、「リハビリに使ってください!」とオーダーメイドの車いすを寄付してくれる方まで現れました。
回復力
動物の回復力には目覚ましいものがあります。
りっちゃんも例外ではありませんでした。
りっちゃんが自分の足で何の支えもなく立つことに成功したのです!
まだ手術のために毛を剃った背中の毛が生えそろっておらず、手術痕が見えている時でした。
リハビリは続く
その後も車いすと、腰を支えるベルトでリハビリは現在も続いています。
何もなくても歩けるようになっていますが、まだトイレの時に踏ん張れない状態です。
トイレをする時にはしりもちをついてしまうので支える必要があります。
お散歩ボランティア
りっちゃんは、ほぼ毎日、お散歩ボランティアさんに後ろ足のリハビリも兼ねてベルトを付けてお散歩してもらっています。
フィラリア症
りっちゃんは、フィラリア症にもかかっていました。飼主さんが何も予防をしていなかったことで、強陽性に。そのままではフィラリア症で近い将来命を落としていたことでしょう。
今回、背骨の骨折で下半身麻痺により私たちに保護されたことで、その治療もできることになりました。現在、ボルバキア治療を2回行っていて、弱陽性まで回復しています。
最後に
既に、りっちゃんの所有権は法律的に当団体に移行しています。
しかしながら、りっちゃんの里親探しはまだしておりません。トイレの際にちゃんと踏ん張れるようになったら、それを始めようと考えています。
りっちゃんがここまで歩けるようになったのは、応援してくれる人たちが寄付をしてくれて、高額な手術ができたおかげです。
りっちゃんはとても怖くて痛い目に遭ったのですが、運よく早い時期に発見され私たちに保護され、応援してくださる人たちの寄付によって適切な治療ができたことで、再び歩けるようになりました。
りっちゃんは、沢山の人たちの善意によってここまで回復することができました。もしも、骨折して下半身麻痺になり、飼い主さんが探すこともなく見放されていなければ、彼女はフィラリア症で苦しみながら命を落としていたことでしょう。
もしかしたら彼女はかなりの強運の持ち主なのかもしれません。
※こちらの記事は動画や画像の撮影・制作・配信をしている団体より許可を得て掲載しております。
掲載団体名:ディ・アンク
ディ・アンク
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