保護団体から犬を引き取るための条件とは?
様々な理由から飼い主の手を離れ、民間団体や行政施設で保護されている犬は新しい飼い主を求めています。保護されている犬は行政の場合、一定期間が来れば殺処分となりますし、民間の団体でも費用や施設の問題から多くの犬を抱えることはとても難しいとされています。
そのため、少しでも多くの方に保護犬を引き取ってもらいたいのですが、実は引き取るためにはいくつかの条件をクリアする必要があるのです。
まず、具体的にどのような条件が設けられているかを紹介します。すべての施設がこのような条件を設けているわけではありませんが、保護犬を飼う上で必要な条件や確認事項ばかりだと思うので、ぜひ参考に目を通してみてください。ちなみに、ボランティア団体の一例は、筆者が今の愛犬を引き取ったときに受けた実際のアンケート内容です。
行政/東京都動物愛護センターでの譲渡条件
- 原則、都内にお住まいで20歳以上60歳以下の方
- 現在、犬や猫を飼育していない方
- 家族に動物に対するアレルギーを持っている方がいない方
- 最期まで責任を持って飼い続けることができる方
- 飼うことを家族全員が賛成している方
- 経済的、時間的に余裕がある方
- 集合住宅賃貸住宅の場合は、規約等で動物の飼育が許されている方
- 動物に不妊去勢手術による繁殖制限措置を確実に実施できる方
- 当センター主催の譲渡事前講習会を受講している方
民間/ボランティア団体からの確認事項・質問
- 犬を飼おうと思った理由
- 住宅事情(戸建てかどうか、賃貸の場合ペット飼育許可の有無など)
- 生活環境(散歩ルートや公園の有無など)
- 家庭内での飼育場所について
- 転勤、引っ越しの有無
- 留守番時間
- 家族構成、主に世話をする人は誰か
- 60歳以上の場合、後見人は誰か
- 動物の飼育経験
- 犬に関する知識があるか(寿命や飼育費用、健康管理に必要な予防接種など)
- 散歩時間や回数
- 旅行時や緊急事態時の対応
犬を引き取るために条件が厳しい理由
上記で紹介した、保護犬を引き取る際の条件やアンケートを見て、どう感じたでしょうか?初めて見た人は、率直に「厳しいな…」と感じるのではないかと思います。
しかし、保護団体がこうした厳しい条件を出すのは、引き取られた先で保護犬が幸せになるために必要なことだとされています。ここで出される条件は、引取りを希望している人の意思確認をするためのもの。厳しいように感じる条件にはそれぞれ理由があり、基本的に犬が再び手放される事態に陥るリスクがないかを確認しているのです。
保護犬の多くは、飼い主から捨てられたり虐待されたりと、過去につらい思いをした経験があります。そのため、もう二度と傷つけられることのないように、条件を出すという形で念入りな意思確認が行われているということになります。
実際、保護団体から虐待やいたずら目的で犬や猫を引き取ったり、保護犬は無料だからと気軽に飼い始めてすぐに捨ててしまったりという悲しい事態も起きています。
そうしたことを防ぐための対策として引取りに条件を設けるようになりました。厳しい条件があっても飼育の意思が変わらないか、一生飼い続ける覚悟があるかを確認した上で引取りを許可することが、保護犬を守ることにつながっているのです。
訪問面談やトライアル期間が必要な場合もある
保護団体などから犬を引き取る際、飼育に関する条件をクリアすること以外にもいろいろな手順を踏む必要がある場合もあります。
犬との相性を確認するために、何度も面会をして触れ合ったり散歩をしたりするマッチング期間や、自宅で一定期間生活をするトライアル期間が設けられることは多いでしょう。また、引取り希望者の自宅に訪問し、犬にとって適切な飼育環境が整っているかを確認することもあります。
これらの確認作業も、条件と同様に厳しいと感じたり、面倒に感じたりする人は多いと思います。しかし、そうしたことを面倒だと感じる人にはデリケートな保護犬を任せられないと考え、あえて厳しい条件や手間を設けているのです。
一度傷ついた犬だからこそ、次の家庭では絶対に幸せになってほしいからこその仕組みや制度なので、ぜひ理解してもらいたいところです。
まとめ
今、保護犬を引き取って飼うという選択肢が、一般家庭にも知られるようになってきています。実際、筆者は10年以上前から保護犬を飼っており、散歩で出会った飼い主さんからも「保護犬を引き取った」という話を聞くことが多くなってきたため、うれしく感じています。
保護犬を引き取るためには、厳しい条件が設けられていて手間がかかることもありますが、それは犬が幸せになるために必要なことなのです。
一度傷ついた犬がもう二度と傷つくことのないように、守りたいという気持ちから出される条件なので、どうか引取り希望の方には理解してもらいたいと思っています。どうか、これ以上不幸な犬が増えないことを願っています。