①距離を取る、逃げる
苦手な人に対して、犬が取る行動としてわかりやすいのが逃げたり隠れたりするというものです。「何をされるかわからない」「ちょっと怖い」と感じているときに、相手が近づいてきたときにすぐに逃げられる距離、手が届かない距離まで離れて様子を伺うということはめずらしいことではありません。
特に初めて会った人など不安感が強い場合には、自分の身を守るために取る自然な行動と言えるでしょう。その人自体が苦手というよりも、初対面のため警戒しているだけであれば、遠くから相手の様子や行動を観察し、「大丈夫そうだ」と判断できたら、少しずつ近づいていくと思います。
ただし、過去にその相手から嫌な思いをさせられた経験がある場合などには、なかなか近づいていくことはしないと思います。遠く離れるだけでなく、物陰に隠れることもあるでしょう。
②威嚇する(唸る・吠えるなど)
相手に対する不安感から距離を取ったり隠れたりすることがありますが、それ以上に強い警戒心を持っているときには唸ったり吠えたり威嚇行動に出ることもあります。特に相手との距離が近いときや逃げ場がないとき、恐怖心を持っているときには、自分から相手を遠ざけるためにそのような仕草や行動を見せます。
唸っているときや吠えているときは「こっちに来ないで!」と思っている場合が多いので、不用意に近づいたり、無理に距離を縮めないように気をつけてください。威嚇するだけでは自分の気持ちが伝わらないと思って、より強い威嚇や攻撃行動に出る可能性があるので注意しましょう。
③カーミングシグナル(あくび・体を掻くなど)
犬が苦手な人を前にして、不安やストレスを感じているときには『カーミングシグナル』と呼ばれるボディランゲージを見せることがあります。カーミングシグナルは自分の気持ちを落ち着かせたいときや、相手に「落ち着いて」と伝えたいときに行うと考えられています。
そのため、飼い主さんから叱られているときや他の犬から吠えかかられたとき、自分よりも強そうな相手に会ったときなどにカーミングを行います。
カーミングシグナルは現時点で27種類前後あると考えられていますが、犬がよく見せるものには以下の3つが挙げられます。
体を掻く
犬が体にかゆみや違和感を感じているときに足を使って掻くのは当然ですが、不安や緊張を感じているときにも体を掻いて気持ちを落ち着かせようとします。初めて行く場所や初めて会う人の前などで、頻繁に体を掻いている様子が見られたら緊張しているのかもしれませんね。
あくびをする
苦手だと感じている人の目の前や、飼い主さんから叱られて怖いと思っているときなどにあくびをすることがあります。「今眠くなるかな?」と思うようなタイミングで、くり返しあくびをしているときはその場に苦手な人がいて気持ちを落ち着かせようと思っている可能性があります。
叱っているときにあくびをされると余計に腹が立つかもしれませんが、犬がきちんと話を聞いている証拠でもあるのであくびしていることに対しては叱らないであげてくださいね。
自分の鼻をなめる
犬が自分の鼻をペロッとなめたり、舌を出して口元をペロペロとなめているときは緊張していると考えられます。苦手な人がそばにいたり、触られて緊張しているときなどに、自分を落ち着かせようと思ってこのような仕草をすることがあります。
犬と仲良くなるためのポイント
犬と仲良くなりたいときには、まず犬が「どのようなタイプの人が苦手か」を知ることが大切です。犬の性格や気質によって苦手な人は異なりますが、一般的に共通して犬が苦手だとされる行動や態度があります。
それは「声や身振り手振りが大きい」「予測できない唐突な動きをする」「動きに落ち着きがない」「サングラスやマスクで表情がわからない」「高い位置から触ろうとする」など。
声や動作が大きく、唐突な動きをするのは子どもに多い行動ですが、これらは犬が「何をされるかわからない」と警戒心を強くする要因になります。できるだけ穏やかに、犬から動き出すのを待つようにしてペースを合わせて接してあげるといいでしょう。
また、立ったまま犬の頭をなでようとすると覆い被さるような態勢になるため、犬が怖がることがあります。犬とあいさつをするときは、しゃがんで体の側面を向けて圧迫感を与えないようにしてから手を差し出してにおいをかがせてあげるといいと思います。
まとめ
犬は苦手な人に対して、触られない距離まで離れて隠れたり、近づかないように吠えて威嚇したりします。そうしたわかりやすい仕草や行動だけでなく、カーミングシグナルを出して自分の気持ちを落ち着かせようとすることもあります。
犬がここで紹介したような行動を見せているときには、無理に距離を縮めたり触ったりせずに、時間をかけて仲良くなれるようにしましょう。無理強いするほど、余計に苦手意識や警戒心が強くなってしまうので、穏やかな態度で犬のペースに合わせて接してあげてくださいね。