エリザベスカラーがペットの福祉に影響?
エリザベスカラー、犬や猫と暮らしている人なら1度はお世話になったことがあるのではないでしょうか。エリザベスカラーとは、16世紀後半の英国女王エリザベス1世の時代に流行したレース襟やひだ襟にちなんで名付けられました。
手術後の縫合箇所、痛みや痒みのある場所を舐めたり噛んだりして炎症や二次感染を引き起こすのを防いだり、傷口や縫合跡の保護のために装着されたりします。
このように、たとえ犬や猫が嫌がってもエリザベスカラーを着けることは大切なのですが、カラーの動物福祉への影響を評価する研究は、今までほとんど行われていませんでした。このたびオーストラリアのシドニー大学獣医学部の研究者によって、エリザベスカラーがペットに及ぼす影響について飼い主へのリサーチが行われ、その結果が発表されました。
エリザベスカラーに関する初の大規模な聞き取り調査
リサーチは、過去12か月間にエリザベスカラーを着用したことがあるペットの飼い主を対象として、グローバルなオンライン調査を使って行われました。集まった回答は全部で434件。回答者の大多数はオーストラリア在住で、他にはイギリス、アメリカ、ニュージーランド、南アフリカ、アイルランド、スウェーデンからの回答がありました。
質問内容の全体的なテーマは「エリザベスカラーが動物の生活の質に与える影響について」で、具体的な細かい項目ごとに回答が集められました。回答の大部分は、コンパニオンアニマルがエリザベスカラーを着用しているときに、彼らの生活の質が低下したことを報告するものでした。
エリザベスカラーが引き起こす問題と解決策
エリザベスカラーが引き起こす具体的な問題は次のようなものです。
- 水を飲むことが困難 60.2%
- 遊び行動を妨げる 67.5%
- かぶれ、ぶつかる、段差で転ぶ、心理的苦痛など、カラーに関連した負傷 25%
- トイレ、毛づくろい、歩行、睡眠など、日常的な行動への支障 10%
カラーを着けている犬や猫自身だけでなく、飼い主や周囲へのダメージも報告されました。
- カラーを着けた動物と接触することで足に怪我をした
- カラーがぶつかることで家具や家屋に傷がついた
これらのことから、コンパニオンアニマルに常時カラーを着けたままにすることに、多くの飼い主が消極的であることも分かりました。この研究では、エリザベスカラーに代わる別の方法を探し、動物の生活の質の低下=福祉の低下を最小限に抑えることを提唱しています。硬質プラスチックのエリザベスカラーの代わりに挙げられているのは、次のようなものです。
- クッションやエアーの入ったドーナッツ型のカラー
- バスケット型のマズルカバー
- 靴下または犬用の靴
- ボディラップまたは、保護用の衣類
- 痒み止め、鎮痛剤、鎮静剤の処方
研究者は、エリザベスカラーが引き起こす不快感や負傷の可能性などについて、獣医師が飼い主にあらかじめ助言しておくことも大切だと述べています。獣医師から口頭でのアドバイスも大切ですが、エリザベスカラーを着けた動物をサポートするヒントをパンフレットなどにすることも推奨されています。
まとめ
エリザベスカラーを着けることがペットの犬や猫の生活のレベルを低下させ、そのことが飼い主にも苦痛を引き起こすというリサーチ結果をご紹介しました。
エリザベスカラーを着けることで、犬や猫の生活に支障が出ることは多くの人が既に知っていますが、このように大規模な調査で飼い主の声を集計することで、医学的に理に適った解決方法を探る助けとなります。
時に怪我をしたり手術が必要になったりするのは仕方のないことですが、エリザベスカラーの他に多くの選択肢ができて、愛犬や愛猫たちが少しでも快適に過ごせるようになると良いですね。
《参考URL》
https://www.mdpi.com/2076-2615/10/2/333