普通の預かりボランティアよりも手軽な「一泊預かりボランティア」
保護犬を家族に迎えたいけれど今の状況では難しいとか、できる範囲で保護犬のために何かをしたいと潜在的に考えている人は少なくありません。
アメリカでは「日帰りで1日一緒にお出かけ預かり」や「一泊だけのお泊り預かり」という超短期の預かりボランティアプログラムを実施する保護施設が、少しずつですが増えています。メイン州のある保護施設が、超短期の預かりプログラムをどのように運営しているのかをご紹介していきます。
預かりボランティアをやってみようと考えていなくても、犬と暮らしている方には生活の中に変化を取り入れることがなぜ大切なのかが、具体的な例として感じられると思います。
プログラムの名は「わんこお泊まり会」
メイン州のウォーターヴィルという街の動物保護協会では、保護している犬たちを一時的にシェルターから送り出し、一般家庭で過ごすことで新しい家族を見つける手助けをする新しいプログラムを開始しました。
プログラムの名前はスランバー・パップ。スランバーというのは「スヤスヤ眠る」パップは「わんこ」ですが、子供同士のお泊まり会はスランバー・パーティーと呼ばれるので、日本語にすると「わんこお泊まり会」ですね。
家庭で保護犬を一泊だけ預かるというプログラムは、まず地域の参加希望者を募集します。希望者は申請書に記入して提出し、審査を受けて受け入れられた場合にはプログラムの説明のためのオリエンテーションに参加します。どんな犬を預かりたいかという希望と、参加者のエネルギーレベルに適した犬をスタッフが選んでマッチングします。
一時預かりのためのフード、リード、クレート、その他必要な品は保護施設から提供されます。このプログラムに必要な経費は、マディ基金という動物保護のための基金から提供されています。マディ基金はシリコンバレーのIT企業の元経営者が会社を売却した巨額の富を使って設立した基金です。
新しい経験が犬を生まれ変わらせる
プログラムへの参加は、保護犬引取り希望の人がお見合いを兼ねて利用するのも良し、預かりボランティアとして参加するのもOKです。家族に迎える犬を探すために参加した人も、預かった犬を必ず引き取らなくてはいけないわけではありません。
犬を施設に返すときには、レポートカードを記入して提出します。多くの犬にとってシェルターの中はストレスの多い環境です。普段は犬舎のケージの中で吠えたり不機嫌だったりする犬が、施設の外に出たとたんに吠えることもなく嬉しそうな様子になる例はとても多いそうです。
そのような様子をレポートカードに記入することで、犬のプロフィールが書き換えられて、それがきっかけで家庭に迎えられる例もあります。犬を預かっている間、たくさんの写真を撮ることが奨励されています。写真は団体のSNSで紹介されたり、スタッフが犬の様子を把握するための資料にもなったりします。
お泊まり会に参加した犬は新しい経験をすることで自信をつけたり、新しい環境や新しい人に出会うことで社会化が促進されたりします。シェルターの犬舎にいたのでは見えなかった、その犬本来の良いところが現れるのが、このプログラムの素晴らしい点だとスタッフは述べているそうです。
まとめ
アメリカのメイン州の保護施設で実施している「わんこお泊まり会」のプログラムの内容についてご紹介しました。犬にとって楽しいポジティブな刺激となるだけでなく、普段は忙しすぎて自分の犬を迎えることはできないけれど、週末だけ犬と過ごしたい人、2匹目の犬を迎えたいけれど家庭の中での先住犬との相性を確認したい人にもぴったりなプログラムです。
丸ごと取り入れることはできなくても、日本の保護犬の環境にもこのような要素を加えることができればいいなあと思います。
普段の生活の質が犬のストレスや行動にも影響するというのは、一般の家庭犬にとっても同じです。楽しい刺激を作ってあげることが犬の自信や幸せに繋がります。