様々な分野で活躍する医療探知犬を育成する団体
血液サンプルからガンを嗅ぎ当てたり、糖尿病患者の低血糖などを事前に感知して知らせたりと、医療の分野でも犬は私たち人間を大きく助けてくれています。イギリスにはそんな「医療探知犬」を育成するためのチャリティ団体があります。団体の名はメディカル・ディテクション・ドッグズといいます。
医療探知犬には匂いで病気の有無を探知するバイオ探知犬と、特定の患者と一緒に暮らして発作などを事前に感知する医療警報介助犬の2種類があります。同団体は両方のタイプの犬を育成し、医療の研究や人々の生活のサポートをしています。
バイオ探知犬と医療警報介助犬の訓練と生活
同団体はバイオ探知犬としてラブラドールとスパニエルを採用しています。犬の適性は嗅覚は言うまでもなく、他に探知作業とおもちゃの擬似ハンティングが好きなことが挙げられます。犬がその作業を好きで楽しめるかどうかが大切な適性の一つになっているわけですね。6〜8ヶ月の訓練期間を経て正式な探知犬となり、研究や医療の診断に参加します。
犬たちの労働時間は週に4日、1日20分を上限としています。現場にいる時にも休憩時間と遊びの時間はたっぷりと取られており、探知そのものもクリッカーとトリーツを使って犬にとっては楽しいゲームのような感覚になるようデザインされています。
同団体が訓練育成している医療警報介助犬は、1型糖尿病、アジソン病、重度のナッツアレルギー、体位性頻脈症候群で、それぞれの病気の緊急の状態を事前に感知して知らせるよう訓練されています。犬は患者の呼気から異変を察知するよう訓練されており、現在80匹以上がイギリス全土に派遣されているそうです。介助犬を希望する場合、所定の要件を満たした申し込みが必要です。
現在のところ待機期間は平均18ヶ月だそうです。介助犬は無料で派遣されますが、犬の食事や医療費、その他すべての犬にかかる費用は派遣された家庭の負担となります。派遣後も犬のパフォーマンスは継続的に観察され、警報を正しく発しているかどうかがチェックされます。
医療探知犬、最新の功績は?
医療警報介助犬がカバーする疾患は、今後増やしていく予定なのだそうです。バイオ探知犬が活躍する最新の研究は、インペリアル・カレッジ・ロンドンと嚢胞性線維症財団によるものです。日本では指定難病とされている嚢胞性線維症を持つ患者さんは肺感染症を起こしやすく、その最も一般的な原因は緑膿菌です。探知犬はこの緑膿菌を超低濃度で探知検出することに成功しました。探知犬による検出が実用化されると、患者はサンプルを送るだけで感染症をモニターすることができ、既存の技術よりも高い精度と低価格なスクリーニングができる可能性があるとのことです。今後、犬が探知することができる病気の範囲はさらに広がって行きそうな気配ですね。
まとめ
サンプルから病気を発見したり、患者さんの発作などを感知する医療探知犬を育成するチャリティ団体の話題をご紹介しました。犬の能力が医療の分野で生かされることは、技術的なことの他に私たちに希望も一緒に与えてくれるような気がします。一方で、犬に負担はないのだろうかと心配な部分もあったのですが、週に4日間1日20分の作業で、ゲーム感覚で取り組んでいると聞いて安心しました。犬には改めて感謝の気持ちです。
《参考URL》
https://www.medicaldetectiondogs.org.uk
https://www.medicaldetectiondogs.org.uk/world-first-study-reveals-dogs-are-able-to-detect-lung-infections-at-ultra-low-concentrations/