イギリスの動物福祉法の改正
日本では2019年6月に改正動物愛護法が成立し、動物虐待が以前に比べて厳罰化されました。イギリスでもちょうど同じ頃に動物への虐待に対する罰則が以前よりも強化されるという動物福祉法の改正が発表されました。
またイギリスのこの法改正には『フィン法』と名付けられた、警察犬など使役動物保護のための新法も組み込まれています。
改正されたイギリスの動物福祉法についてご紹介しますので、日本の動物愛護法と比べてどうだろう?という点など考えていただくきっかけになれば幸いです。
以前よりも厳しくなった動物虐待への罰則
イギリスの動物福祉法で大きく変わった点は、動物への虐待に対する厳罰化です。現行では動物虐待に対する罰則は懲役6ヶ月が最高であるのに変わり、最高5年の懲役が課せられるようになります。これは日本の改正動物愛護法と同じ数字になります。
イギリスでもっとも重い罰則を受けることになる動物虐待は、闘犬など動物同士を闘わせる行為、動物への傷害、家畜の不適切な扱いなどが含まれます。これら対象となる内容は日本の法律に比べて具体的で範囲も広いようです。イギリスの環境長官は、動物を虐待する人々が法の下で確実に裁かれるようにして行きたいと述べています。
「フィン法」と呼ばれる使役動物のための法律
今回の動物福祉法の改正で、メディアなどがたびたび取り上げているのは「フィン法」というニックネームがついた警察犬や警察馬などの使役犬のための法律です。
法律の名前の由来
名前の由来となったのは警察犬として働いていたジャーマンシェパードのフィンです。2016年、フィンは警察犬としてハンドラーであるデイブ・ウォーデル氏と共に、武装した容疑者を追うという任務に就いていました。容疑者である男性は刃渡り25センチのナイフでウォーデル氏を攻撃しましたが、フィンはウォーデル氏と加害者の間に飛び込みました。
加害者はフィンの頭と胸を刃物で刺し重傷を負わせました。ウォーデル氏も腕を刺されて怪我をしました。フィンは絶望的と思われたのですが、大規模な手術が功を奏し、長い治療の後に元気に回復することができました。
ウォーデル氏はこの事件をきっかけに使役動物を保護する法律が必要だと考え、法律改正の声をリードして来ました。改正前の法律では警察犬は警察の所有物として扱われるので、フィンを刺した加害者の罪はウォーデル氏への傷害と器物破損として扱われました。しかし改正後は新しい動物福祉法が適用されて、警察犬や警察馬への加害は動物虐待の重罪となります。
ウォーデル氏とフィンのテレビ出演で一躍話題に
ウォーデル氏はこの動物福祉法の改正について、動物に関心のある人だけでなく広くたくさんの人に知ってもらいたいと考えて、テレビの人気番組「ブリテンズゴットタレント」にフィンと共に出演しました。
フィンの「読心術」を披露した一人と一匹はデイブ&フィンとして拍手喝采を浴び、動物福祉法について多くの関心を集めることに成功しました。
こちらが番組出演時のビデオです。
今では警察犬を引退したフィンの穏やかな様子が印象的です。
まとめ
イギリスで、動物虐待に対する罰則を厳しく改正した新しい動物福祉法が可決施行されるというニュースをご紹介しました。日本でもイギリスでも、動物を虐待することが重い罪に問われ厳罰を処せられるというのは喜ばしいことです。そしてこの厳罰が動物虐待への抑止力になって欲しいと心から願います。
イギリスでもこのニュースは多くの人に歓迎されているようですが、一方で動物福祉法に実験動物が含まれていないことを問題視している人も多くいます。どこの国でも動物を取り巻く環境を一朝一夕で素晴らしく改善することはできませんが、事実を知り諦めずに訴えかけることで、少しずつでも物事を良い方向に進めていけることは忘れずにいたいと思います。
《参考》 https://www.bbc.co.uk/newsround/48771380